2000年代の危うい家族の肖像――「空中庭園」：新作DVD情報
家族間での秘密は一切なし、という一見幸せそうな家族。実はやりたい放題の秘密をそれぞれが抱え、ある侵入者をきっかけに、もろくも崩れ去っていく。角田光代の同名小説を映画化した秀作ドラマ。キョンキョンの崩壊ぶりがお見事！
空中庭園 通常版
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「ナイン・ソウルズ」「青い春」の豊田利晃監督が、「対岸の彼女」の直木賞作家、角田光代の第3回婦人公論文芸賞受賞作「空中庭園」を映画化。まさに劇場公開時のキャッチコピーのような、“家族の光と影を描いた再生と希望の物語”。
郊外の団地に暮らす京橋家には、“家族間では秘密を作らない”というルールがあった。だが、一見幸せそうにみえるこの家族には、それぞれ誰にも言えない秘密を持っていた。自分の出生決定地が近所のラブホテルだと両親から聞かされ、朝から落ち込む明るい性格の長女マナ。そんなマナは学校をサボりがちで、時には見知らぬ男とラブホテルに向かう。中学生の弟コウも学校には行かず、そのことを両親は気づいていない。
ある日、コウは、たまたま訪ねた不動産屋で働く女性ミナと会話が弾み、彼女に家庭教師を頼むことに。母の絵里子は喜んでミナを夕食に招待するが、父の貴史はミナを見て動揺する。彼女は貴史の愛人だったのだ。お互いの秘密が暴露されはじめ、音を立てて崩れていく京橋家。絵里子はそれでも家族を守ることに必死で……。
主人公の主婦である小泉今日子が、せっかく作り上げた完璧なはずの家族。彼女の願いも虚しく、家庭教師が登場するあたりから家族の歪みが表面化していく。この崩壊劇、じわりじわりと心理面に迫り、見ているうちに怖いものを覗いているような気分にさせられる。一種のホラー映画のようだ。決して気持ちのいい作品とは言えないが、危うい空気をはらみ、ピンとはりつめた緊張感が全編に漂った家族ドラマの秀作である。
ピタリとはまった配役も絶品。完璧な笑顔で心の闇をくるんでいた小泉さん、ラストで爆発させる様子は背筋がゾッとするほど狂気じみていて、圧倒的な存在感を発揮。日刊スポーツ映画賞・主演女優賞、ブルーリボン賞・主演女優賞などを受賞している。そして板尾創路のダメ亭主ぶりも、鈴木杏のイカレ女子高生ぶりも、何を考えているんだか分からない息子の広田雅裕（広田レオナの息子だそうで）もそれぞれに印象的だ。大楠道代とソニンの（笑える）ガチンコ勝負も必見。エンディングテーマ曲を担当しているのはUA。
DVDは通常版と特別版（初回限定生産）の2種類でリリース。通常版の特典は劇場予告編のみ。特別版は特典ディスクとサウンドトラックCD、ブックレット付きで6090円。映像特典の内容はアウトテイク集、メイキング『「空中庭園」の裏庭』、劇中で使用されたTV番組「おれも政夫」シリーズなどを収録し、撮影の舞台裏を楽しめる。
関連サイト：http://www.kuutyuu.com/（公式サイト）
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