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コラム

家電によるリモートモニタリングの未来小寺信良(2/3 ページ)

顧客サポートを考える上で、「リモートモニタリング」というやり方がある。ファームウェアのアップデートやバグの修正、あるいは製品のステータス監視といったケースで有効だ。今回はその可能性と、どう取り組むのがベターなのか考えてみた。

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 それを見て、もはやAV機器というのは昔の電気製品のように、現場対応で修理できるようなものではなくなっているのだなぁと感じた。

 結果だけを見れば、わざわざサービスマンを派遣するよりも、最初に電話した段階で新品交換の手続きをしたほうがコストはかからなかったはずだ。もちろん新品交換するからには、メーカーの人間が現状を確認してその判断する必要はあるのだろうが、もう少しスマートなやり方ができるのではないか、という気がする。

「リモートモニタリング」の可能性

 この考え方を延長していくと、「リモートモニタリング」という顧客サポートの可能性も考えていいのかもしれない。テレビやレコーダーは、デジタル放送を利用したファームウェアのアップデートを実施しているが、放送とは常に一方的に降り注ぐものである。一方、ネットワークに接続可能な機器では、こちらの情報も発信することができる。

 具体的にイメージするならば、機器に何らかの異常が発生したときに、不具合をメーカーがリモートで確認してくれて、対処方法を指示してくれたり、場合によってはその場で直してくれるというのはどうだろう。

 さらにユーザー自身が不具合に気付く前に、メーカー側から連絡が来ることもあるかもしれない。発火の可能性があるような重大な故障につながる前にそれが防止できるのであれば、メーカーにもユーザーにもメリットがある。

 実は放送用の映像機器では古くから、リモートモニタリングの実績がある。ソニーが1994年に実用化したISR(Interactive Status Reporting)という技術は、VTRなどに搭載される自己診断機能である。VTR自身がランニングアワーやエラーレートといった各種ステータスを自己診断してネットワークで送信、管理者の元へリポートが集まるという仕組みだ。

 さすがに94年の段階でこの機能は早すぎた感があったが、のちにこの手のモニタリング機能は多くの放送機器で一般的になった。

 今ではマシンルームに設置されたメンテナンス用サーバが各機器のステータスを一括管理し、問題があれば特定の人間にメールで知らせるなどの機能を搭載するのが当たり前となっている。もっとも放送機器の場合、伝送を中断することは許されないので、メールが届いた時点ではすでにバックアップ用のユニットに自動で切り替わっている。

 昨今、AV機器は、ホームネットワークへの対応が求められていることもあって、リモートモニタリングでは一番可能性のある分野だろう。またバッテリーで動作する携帯電話などの通信機器やパソコンなども、このような機能を載せるメリットはある。

 先日もDELLのバッテリ大量リコールが行なわれたばかりだが、このような事態に対してもスマートに対応できるようになるだろう。

 また昨今は古い電化製品による死亡事故で、メーカー側も誠実な対応が求められている。以前も松下の石油温風機回収問題があり、最近はパロマの瞬間湯沸かし器で、人命がかかった重大事故を放置した責任が問われている。こういう白物家電も安全性の面で、現在の使用状況を誰かがきちんとモニタリングできるということを、考えていくべき時なのかもしれない。

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