「静かなリスニング環境」を求めて――ボーズ「QuietComfort 3」:レビュー(3/3 ページ)
ボーズの「QuietComfort 3」は、既に販売されているノイズキャンセリングヘッドフォン「QuietComfort 2」と同等の能力を持ちながらも小型化を進めたモデル。“静かなリスニング環境”の価値とは?
実際のサウンドだが、小型ハウジングとは思えぬほど低音がしっかりと響く(ドライバーユニットは双方とも35ミリ径)。QC3のイヤーパッドはそれ自体がエンクロージャーとして機能するよう設計されているというが、まさにその通りだ。イヤーカップを備えるQC2の方が音の広がり感や分解能については勝るように思うが、低音の響きは同レベルといえる。
ただ、この低音の響きはソースによってはやや強すぎるようにも思う。アコースティックギターを中心としたインスト曲ではベースラインの存在を強く感じるほか、中域がややふくらむ傾向もあるようで、クラシックやジャズでは低音を担当する弦楽器からの音が響きすぎるように感じたこともあった。
一方で楽しく聞けるのはポップスやロック、ヒップホップ、テクノなど。伸びやかな女性ボーカルの声やハイハットの細かな刻み、16分のカッティングギターといった高音部分が気持ちよくヌケる。全体的にいえば、中低域がシッカリした“ボーズらしい音”で、クオリティは高いといえる。
「静かなリスニング環境」の価値は
ノイズキャンセリング能力はそのままに小型化を進めた――その言葉に偽りはない。むしろ電気的なノイズキャンセリング機能だけでいえば既存モデルを上回る能力を手にしていると言える。つい先日もノイズキャンセリング機能を搭載したポータブルオーディオプレーヤーのレビューを掲載したが、効果は段違いだ(専用機器とプレーヤーの付属機能を比較するのはナンセンスだと思うが)。
小型になったことで、街中でも違和感なく身につけられるのは大きな価値がある。まだ製品ジャンルとしてはマイナーなノイズキャンセリングヘッドフォンだが、QC3は外観もスマートにまとまっており、電車内などで利用しても“浮く”ことはない。
ただ、ノイズキャンセリング能力こそ同等でも、音質面ではQC2と異なるニュアンスを持つ製品であることは注意しておきたいし、付け心地も少々気になる。アームのクランプ圧が少々強いように感じられる。「アルバム2枚程度ならば気にならないが、映画1本分だと気になる」というレベルだが、QC2よりクランプ圧は高めだ。音質や付け心地については、直営店「ボーズ・ストア」でしっかりと確認したい。
サイズはQC2から小型化されたが、価格はアップしてしまった。QC2も4万1790円とコンシューマ向けノイズキャンセリングヘッドフォンとしては高額な製品だったが、QC3は4万7250円とさらに高価になってしまった(いずれも直販サイト「ボーズ・エクスポート・インク 」の価格)。ノイズキャンセル能力は高いとはいえ、5万円近い製品を気軽に購入できるユーザーは限られているだろう。
とはいえ、圧倒的ともいえるノイズキャンセリング機能が、持ち運びも容易な小型ヘッドフォンに内蔵されたことは素直に喜びたい。飛行機や列車での移動が多いビジネスマンなど、外出先でも「静かなリスニング環境」を手にしたい人にとっては、購入の価値がある製品と言える。
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