“テレビでネット”は必要か:コラム(3/3 ページ)
「テレビでネット」の機運が再度、盛り上がりを見せつつある。デジタルテレビやブロードバンド回線の普及などの外的要因は整いつつあるが、大事な要素が欠けているのではないだろうか。
“ならでは”のメリットを提示できるのか
サービスとしては良好な使い勝手の提供は最低限必要とされるものであり、その上で、ユーザーが利用したいと感じるだけの内容を独自のメリットとして提示できなければならない。
基本的にユーザーはテレビを「放送の映像を楽しむ機器」として購入するのであって、「情報を入手するためのデバイス」としては考えていない。そこにまだ「テレビでネット」が存在感を示すための余地は残されている。「映像以外の情報を入手できる手段」は確かに歓迎されるだろうが、ユーザーにとってはそれがデータ放送だろうとブロードバンド経由でも構わないからだ。
ユーザーメリットのないサービスは普及しない。これは疑いのない事実だ。そうした意味では「テレビでネット」は、早急に使い勝手の提供を進めるとともに、オリジナリティのあるメリットを訴求しなくてならない。ただ、そのオリジナリティとはなにか、いまだにそれを明確に提示しえたサービスは筆者の知る限り存在しない。
アクトビラではあらゆるコンテンツベンダーが参加できるプラットフォームを用意して自身は裏方に徹することで「コンテンツの多様化」をはかり、同時にある種の監査機構を設けることで、ポルノや暴力シーンなどテレビ的にふさわしくないコンテンツの露出を避け、「安心と安全」を提供するとしている。
取り組みとしては至極まっとうなものだとは思えるが、サービスとして成功するだけのオリジナリティがこうした取り込みで提供できそうかと問われると、現時点では答えは否だと言わざるを得ない。家族が集まるリビングの中央に位置するテレビを情報のアウトプットデバイスとする以上、コンテンツの多様化やコンテンツの安全性は最低限クリアされるべきだと思えるからだ。
ブロードバンド回線にテレビを接続してもらえるかという根本的な問題も存在する。PLCや無線LANという解決方法もあるが、当面はコスト増は避けられないだろうし、接続に必要な手間の問題は残ってしまう。いずれにせよ、ユーザーに「テレビでネット」を使いたいと思わせるだけのメリットを提示し、モチベーションを高めなければならないのは変わらない。
インターネット黎明期、決して高速とはいえない回線やネットワーク機器/OSの設定といった手間が存在しながらも、多くのユーザーがネットへの接続を行っていた。そこにはネットにつなぐことで得られるメリットとモチベーションがあったからだが、「テレビでネット」はそれだけの何かを提示できるのだろうか。
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