BDとHD DVD、両互換ドライブは消費者に恩恵をもたらすか?:2007 International CES(2/2 ページ)
LG電子が「2007 International CES」でHD DVDとBDの互換プレーヤーを発表した。会場でデモされたように、両規格のディスクを再生することが可能だ。しかしこの技術、この製品は消費者をフォーマット戦争による不利益から守ってくれるのだろうか?
本当に消費者の利益になるか否か、疑問の多い両互換ドライブ
今回のニュースを、かつてDVDの記録型規格が分裂していった時、最終的にはマルチ対応になっていった時、あるいはSACDとDVD-Audioが争っていた時期にユニバーサル化が進んだ時のことなどを思い出す読者も少なくないだろう。しかし、今回は当時とは事情が異なる。
DVDの場合、分裂したといっても、物理フォーマットそのものには大きな違いはなかった。しかし今回の場合、両規格は同じ波長のレーザーダイオードを使うこと、ビデオと音声のフォーマットが同じといった程度しか共通点がない。加えて両フォーマットはナビゲーションフォーマットも異なる。
一方、両規格を巡る環境を見ると、HD DVD向けに発売されている主要タイトルの中にはBD向けにも発売されているものが多い。ユニバーサルピクチャーズと一部の音楽タイトル以外は、両互換化による恩恵というのは実は現時点ではほとんどない。
この状況は、今後、HD DVDを支持するコンテンツベンダーが増えたととしても、BD向けにタイトル供給を表明しているコンテンツベンダーが減らない限り変わらない。果たして両互換という手法が、消費者に対して本当に利益を提供するかと言えば、大いに疑問と言わざるを得ない。
しかし、「どんなフォーマットでもプレイできる」というキャッチコピーに惹かれるバイヤーが多いことも確かだ。実はLGの狙いはここにある。
BDドライブの開発では日本のベンダーが先行しており、特にOEM向けでは松下電器が大きなシェアを握っている。今後、PCドライブにBDが普及していく際、DVDでのOEM実績の高さもあり、松下が強い足場を築いていくことは間違いない。
だが、“両互換”という方向に消費者の目を向けられれば、(たとえ家電のプレーヤーで天下は取れなくとも)数の多いPC向けOEMで足場を固めることができる。PCユーザーがスペック上の完全性を求める傾向が強いことを考えれば、LGは独自の地位を築けるだろう。くわえてドライブのOEMで最大のライバルとなる松下は、BDを推進する立場上、両互換化を行いにくい。
加えて両互換が当たり前になることで、結果的に両規格が併存する余地を残し、フォーマット戦争を長引かせる可能性があることも指摘したい。
HD DVDとBDの両互換が、今後当たり前になっていくという流れが既定路線になっていくのか、それとも消え去っていくのかはわからない。しかし、少なくとも主流になることはないだろう。
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