BDの「ソニー」対HD DVDの「東芝」――それぞれの主張:2007 International CES(4/4 ページ)
今年のInternational CESでも、大いに盛り上がった次世代DVDの覇権争い。安価な再生機が登場するなど、新ステージに入った両陣営、代表するメーカー・ソニー/東芝のキーマンに、それぞれの主張を聞いた。
――北米HD DVDプロモーショングループの発表では、HD DVD機器1台あたり28枚のソフトが売れているという数字がありました。たしかに北米ではDVD時も装着率が高く、20枚以上になることも珍しくはなかったのですが、しかし現段階ではかなりの数字ですよね。これはどのような調査によるものなのでしょうか?
内山氏: ユーザーへの聞き取り調査なども行っていますが、数字そのものは映画スタジオが行ったデータです。具体的にはワーナーの数字で、実際に売れたHD DVDソフトの数を北米で出荷したプレーヤーの数で割っています。
――プレーヤーの数にはXbox用HD DVDドライブも含まれているのでしょうか? それによって母数が大きく変わるように思いますが。
内山氏: 割ったのは専用プレーヤーの数だと聞いています。ゲーム機は含まれていません。
――昨年の段階では、東芝だけではとてもHD DVD市場を支えられないという見方が支配的でした。三洋電機もNECもプレーヤーは発売しません。しかし今年のCESでもHD DVDは元気の良い声明を出しています。
内山氏: 自分たちで言うのもおかしな話ですが、1社だけでよくここまで頑張っているなと思います。それだけHD DVDという規格が、北米の消費者に受け入れられているということでしょう。また、そもそもBD側は勝負に来たくとも、来ることができないのではないでしょうか。彼らはインタラクティブ機能に関して移行期間を設けており、イーサネットの装備やピクチャーinピクチャー機能などの実装を必須にしていません。(ソフトアップデートが容易なPS3は別として)最終スペックではないインタラクティブ機能を搭載した製品の出荷を絞っているのだと思います。そうした意味でも、今年、我々は目標値を達成できると見ています。
――HD DVDの年内出荷目標は180万台という、かなり大きな数字です。その根拠となっているのは、どうしたデータなのでしょうか。
内山氏: データの基本はHDTVの世帯普及率です。現時点で北米ではHDTVの世帯普及率が20%にまで達しています。これに2007年になって売れる数なども計算に入れると、北米のHDTVユーザーは2007年には5500万世帯に達します。しかも、2009年のアナログ停波を控え、このペースはさらに加速される可能性が高いと言われています。仮に5%が次世代プレーヤーを導入すると考えると、ざっくりと300万台の需要がある計算です。プレーヤーの価格優位性も鑑みれば、そのうちの180万は少なくとも我々が取れるでしょう。
――その計算のうち、180万台以外の120万台はBDプレーヤーということですか?
内山氏: いえ、180万という数字は、あくまで東芝製プレーヤーの見積もりで、他社が120万台を分けることになります。中国製の低価格HD DVDプレーヤーも登場します。それらとBD支持の各メーカーが120万台の市場を分けることになると考えています。
――LG電子がHD DVDも再生可能なBDプレーヤーを発売しましたが、これを東芝はどのように見ているのでしょう。
内山氏: LGは元々BD陣営の企業です。そのLGがHD DVDを再生可能なプレーヤーを発売してくれるというのですから、HD DVDの推進を行う東芝としては歓迎したいですね。
――ワーナーのTotal High Defはどうでしょう?
内山氏: HD DVDの普及という意味では訳に立つのかもしれませんが、まだよくわかりません。この件に関してワーナーからは技術的なフィードバックは受けていないため、その詳細の分析はこれからです。
――HD DVDは映画スタジオからのサポートが弱いと指摘されています。ハリウッドメジャーだけで見ると、ユニバーサル以外の映画はすべてBDプレーヤーでかかることになる。この点について、今年のうちに状況が変化する可能性はあるとお考えでしょうか?
内山氏: 変わる可能性は十分にあると思います。映画スタジオは常にハードウェアやソフトウェアが動いている数量を見ています。ソフトウェアはハードウェアの上でビジネスをするわけですから、その普及状況を見ていただければ、現在、HD DVDに懐疑的な見方をしている映画スタジオからもサポートを受けられると考えています。
――しかしニールセンのデータでは、12月24日で終わる週において、ソフトの販売数がBDとHD DVDで逆転。BDの方が売れ始めたという情報が出ています。
内山氏: これについては、PS3にBDソフトの購入クーポンが付いていたという情報があります。同一条件でBDソフトが追い越したわけではありません。こうした売り上げに関する情報は様々なものがあり、たとえば米アマゾンの売り上げデータを見ると、まだHD DVDはBDに対して優位性があります。
またPS3があるからBDが有利という声を聞きますが、その半面、消費者の中にはゲーム機を購入するのに、なぜ高価なBDドライブにコストを支払わなければならないのかというクレームも出ています。BDドライブ搭載に対する不満の声が多く出ていることを考えれば、PS3で映画を見る人が本当にたくさんいるのかといえば、これは全くわかりません。たとえばXbox 360用HD DVDドライブを購入するユーザーは、100%が映画を見るために購入しているのでしょう。しかしPS3ユーザーの多くはゲームを遊ぶために購入しているのです。
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