強力なNC効果と上品なサウンドを両立――オーディオテクニカ「ATH-ANC7」:レビュー(2/2 ページ)
「ATH-ANC7」はオーディオテクニカのノイズキャンセリング(NC)ヘッドフォン。同種製品中では後発組となるが、「ノイズを85%以上低減する」という強力なキャンセル機能と上品なサウンドが特徴だ。
それでは実際に利用してみよう。まずはNC機能をオフにしたままでヘッドフォンとしてどれだけの遮音性能を持っているかを試してみた。室内では装着してみると、PCのファンや隣室のテレビなどの生活雑音がかなり遮断される。電車内でも同様に装着すると、モーターのうなる音はそれほどでもないが、ホーム入線時などに聞こえる風切り音はかなり低減された。
耳全体を覆うオーバーイヤータイプだから当たり前といえば当たり前なのだが、安価な同種製品より遙かに遮音性は高い。静かな室内で、筆者宅にあるソニーの「MDR-D22」(これは外出時の安全性も重視し、一部の外音(周波数)も取り入れるタイプなので直接の比較対象とするのは酷だが……)と聞き比べてみても遮音性能には大きな違いが感じられた。
次にノイズキャンセリングのスイッチを入れてみる。本製品に搭載されているNC機能は一般的な逆位相型だが、効果は同種製品と比べてもかなり高いレベルにあることがすぐに分かる。電車内で聞こえるモーター音や風切り音といったノイズはもちろん、静かな室内でかすかにうなるPCや冷蔵庫の動作音までもがっさりとカットしてくれる。
スイッチを入れた際に発生する「サー」というヒスノイズも、無音の室内で知覚できるかどうかというレベル。BGMのレベルでも音がそばに流れていればまったく気にならないこれまでも筆者は各社のNC製品を試用してきたが、本製品のキャンセル効果はそれらと比較しても最高レベルに位置すると断言できる。
本製品で最も驚かされたのは、NC製品が全般的に苦手とする「話し声」のキャンセル能力が非常に高いこと。業務時間内のオフィスで音楽を流しながら試用したところ、隣席の話し声や周囲の電話応答がほぼ聞こえないレベルまで低減された。あまりに強力なキャンセル能力は外出時の利用に際して危険があることは承知しているが、これほどまでに強力なキャンセル能力にはなかなかお目にかかれない。
再生音だが、40ミリドライバーを搭載しているおかげか全体的な表現力は高い。最近では低音を強調するヘッドフォンが多く、外出時に利用することを考えるとそれはそれで正しいとも思えるが、そうした強調が強すぎると感じられる製品が多いのも確か。本製品は全域に渡ってバランスよくプレゼンスを高める方向にセッティングが施されており、イージーリスニングのような音楽も気持ちよく聴ける。
ただ、言い換えれば今ひとつ音質的な特徴が見えにくいと感じたもの確か。ロックからジャズ、ポップス、クラシックまで一通り試聴してみたが、どのソースもそれなりに聞こえるかわり、ついぞピッタリくるソースが分からなかった。比較的低域から中域にかけての表現力と空気感の演出に注意を払ったようにも感じられるが、総じて言えば同社の密閉型ヘッドフォンに多く見られる「上品でフラットな音質」と言える。これはこれで歓迎すべきだ。
これまでのレビューでも言及しているが、NCヘッドフォンは電気的な回路による効果だけでノイズを低減しているわけではない。ヘッドフォン自体の遮音性能がかなりのウェイトを占めており、やや大げさかも知れないが、電気的な回路はヘッドフォン自体が遮断しきれなかった部分をカットするための用いられているに過ぎない。そうした意味では本製品の強力なカット性能は基本性能の勝利と言っていい。
ヘッドフォンとしての基本性能も高く、なによりも強力なノイズカット機能は魅力。実売価格は2万円強とNCヘッドフォンとしては高価な部類に入る製品だが、ボーズのQuiet Comfortに比べれば約半額とお買い得感が強い。日常的に携帯するにはやや大柄ではあるが、強力なノイズキャンセル機能を求めるひとに勧めたい。
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