どこまでも自然さを失わないノイズキャンセル――ソニー「MDR-NC60」:レビュー(2/2 ページ)
ソニーの「MDR-NC60」は、騒音を1/6に低減するというノイズキャンセリングヘッドフォン。どこまでも自然さを失わないノイズキャンセル効果が魅力だ。
ではいつも通りにNC機能をオフにしたまま、ヘッドフォン自体がどれだけの遮音性能を持っているか試してみた。静かな室内と地下鉄のプラットフォーム/車内で利用してみたが、ヘッドフォン自体の遮音性能はなかなかに優れている。特に室内で聞き取れるPCのファンやエアコンの動作音といった低い周波数帯のノイズには効果が高いようだ。
次にNCのスイッチを入れてみる。本製品は一般的なハウジング外部にマイクを設けるフィードフォワード方式ではなく、ハウジング内部に設けられたマイクで内部の音を集音、逆位相の波形を生成してノイズを打ち消すフィードバック方式を採用している。そのためか、静かな室内ではヒスノイズがかなり気になる。それに、装着したまま歩き回ると靴音が反響してしまうのも気になった。
音楽を流さずに地下鉄のプラットフォーム/車内で使用すると、ボーズのQuiet Comfort2やオーディオテクニカのATH-ANC7のような強力なノイズ低減効果を体感することはできなかったが、音楽を流し始めるとその印象は一変する。さまざまなノイズをしっかりと低減し、あたかもプレーヤー側の音量を上げたかのような自然なノイズ低減効果を体感できる。
同種の製品ではある特定の周波数帯を狙ってノイズをカットする製品が多いが、本製品は全域に渡ってノイズを低減してくれる。そのため、ホームに入線する際の擦過音やレールの継ぎ目を乗り越える音をカットするといった「分かりやすい」効果はあまり望めないが(それでも十分な効果はあるのだが)、違和感のない、聞き手に負担を与えないノイズキャンセル効果を提供してくれる。
フィードバック方式を採用するため、風切り音の影響を受けないのも好ましい。地下鉄で通勤する際にNCヘッドフォンを利用したいという向きも多いだろうが、フィードフォワード方式ではハウジング外部にマイクを設けるため、どうしても地下鉄出入り口や乗り換え通路にあるような長いエスカレーターでは風切り音を拾ってしまい、ノイズが大きくなる。本製品では利用する場所にかかわらず、安定したノイズ低減効果を提供してくれる。
ウォークマンなどでは“中低域が元気なサウンド”というイメージが強いソニーの製品だが、その音質は全域に渡ってフラットであり、歯切れのよさや明瞭さを第一に感じさせる。解像感も高く、ソースを選ばないヘッドフォンと言える。ただ、40ミリドライバーを搭載した製品としては少し低域の厚みに欠けるきらいがあるのは残念だ。それに、NCのON/OFFで大幅に音質が異なるのは気になる。
NCをONにするとプレーヤー側の音量を上げたかのように音の迫力が増し、定位も大幅に安定する。ONの状態のサウンドになれてしまうと、OFF時には物足りなさすら感じるかも知れない。しかしながら、電池の保ちもなかなかであり、トータルで言えばNCをOFFにすることで得られるメリットはあまりない。「外出先で音楽を聞く」という用途に対しては明らかにNCをONにしたほうが向いているため、NCは常時ONにしておく製品と理解するべきだろう。
外見の高級感と、2万円近いという実売価格から考えると音質面ではもうひとがんばり欲しいというのが正直なところではあるが、あくまでも自然かつ、どんな場面でも一定以上の効果を示すNC機能は秀逸といえる。これまでNCヘッドフォンを利用してみて、「確かにノイズはカットされるけれど、不自然さを感じる」という印象を抱いていたひとにはぜひ一度試して欲しい製品だ。
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