MPEG-4(5)――MPEG-4のつくりかた:デジモノ家電を読み解くキーワード
これまでMP4コンテナの仕様を中心にMPEG-4ムービーファイルを説明してきたが、MPEG-4編ラストとなる今回は、MPEG-4生成ツールについて考えてみたい。
現在注目が集まる「AVC/H.264」。Blu-ray DiscとHD DVDのいわゆる“次世代DVD”のほか、PSPや第5世代iPod、ウォークマンAシリーズなどの携帯プレイヤーでの採用が知られている。その理由は、画質のよさとファイルサイズの小ささがバランスした、ビデオコーデックとしての優秀さにあるといっていい。このAVC/H.264もまた、ISO 14496-10(MPEG-4 Part 10)として標準化された、MPEG-4の規格の1つだ。
そのAVC/H.264を利用したMP4ムービーファイルだが、どのソフトウェアでも扱えるというわけではない。第3回で説明したとおり、再生機器によってプロファイル/レベルが決め打ちされるうえ、AVC/H.264を扱うために仕様が拡張されたMP4コンテナ(ISO 14496-15)をサポートするソフトウェアが限られるからだ。
Windows用でいえば、Nero Digital製品群がその1つ。CyberLink PowerEncoder MPEG4 AVC EditionといったMoonlight/Elecard製エンコーダを採用した製品群も、MP4準拠のムービーファイルを生成できる。"PSP対応"など、具体的な製品名を掲げているかどうかも目安になるだろう。
Mac OS Xでは、標準装備のQuickTime 7にAVC/H.264のエンコード機能が含まれる。現時点ではHigh Profileに未対応だが、iPod用ムービーを書き出すためのテンプレートを備えるなど、扱いやすさが特徴だ(QuickTime Playerから利用する場合は、別売りのQuickTime 7 Proライセンスが必要)。
QuickTimeのエンコードの遅さを敬遠するユーザーには、オープンソースソフトウェアのx264などの選択肢もある。x264は、Windowsなど他のOSにも移植されているほか、ffmpegやMEncoderといったフロントエンドと組み合わせて利用されることも多い。
連載第1弾のトピックとして取りあげた「MPEG-4」。標準仕様が整備されているにもかかわらず、互換性に問題を抱えることが多い理由の一端がおわかりいただけたことと思う。次回以降は「EXIF」を題材に、その働きと活用方法を紹介する予定だ。
執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)
ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。
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