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「犬神家の一族」のお供にどうぞ――「市川崑物語」新作DVD情報

巨匠・市川崑の人となりや作品の魅力について、若き名匠・岩井俊二が迫る。「犬神家の一族」に興味がなくとも、これは必見の傑作ドキュメンタリー。

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市川崑物語

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 市川崑監督の新作「犬神家の一族」(2006)の公開を記念して製作された「市川崑物語」。「Love Letter」「スワロウテイル」「花とアリス」など数々の名作を生み出してきた岩井俊二監督が、自身に多大な影響を与えたと語る市川監督の軌跡を独自の視点でたどった傑作ドキュメンタリーだ。

 市川監督の知られざるエピソードの数々。本名・市川儀一、呉服問屋に生まれ、女系家族に育ち、絵を描くことが大好きで、チャップリンやキートンよりも日本のチャンバラ映画が好きだった少年時代。脊椎カリエスの疑いがあると診断され、それが後に思いもよらず監督の命を救うことに。やがて体験する初恋(おかっぱ頭の年上の少女)、姓名判断好きの伯父に儀一から崑に改名させられ、ディズニー作品と出会い、アニメーターとして出発する。

 ところが、映画の撮影現場に足を踏み入れ、その熱気に心を奪われてしまう。その後、上京し、助監督を経て、「娘道成寺」(なんと人形劇)で監督デビュー、のはずがGHQの検問でお蔵入り、結局、市川崑監督第一回作品となったのが「花ひらく」だった。こうして、映画監督としての第一歩を踏み出す。

 市川監督の半生が、文字、写真、再現フィルム、名シーンで浮かび上がるという異色さ。まるで動く絵本を見ているようだ。妻であり、共同脚本家であった和田夏十との暮らしも味わい深い。彼女の飾らない美しさ、二人三脚での映画作り、些細な喧嘩など、何気ないエピソードに、なぜか心が熱くなる。

 岩井監督ならではのノスタルジックな再現映像と面白い語り口(市川作品への感想などを含め笑えるコメント多数)、そして市川崑映画の名シーンの挿入の仕方も見事。

 後半で登場する「犬神家の一族」を始めとした石坂・金田一シリーズ。“市川作品はどこかお茶目で憎めない”そう評する岩井監督の尊敬と愛情がそこかしこに見られる。人物の魅力を的確に引き出す力もさすがである。

 締めくくりは06年版「犬神家の一族」の映像だ。あのテーマ曲とともに、市川監督の演出シーンが映し出される。スリッパはミッキー・マウスだった。

 DVDリリース日は「犬神家の一族」よりも1週間早い6月29日。特典ディスクには市川監督の自宅と劇場で行われた岩井監督×市川監督のインタビュー映像、市川崑・和田夏十・岩井俊二・一瀬隆重(プロデューサー)のプロフィール、劇場予告編を収録。封入特典は市川監督のフィルモグラフィーを網羅したブックレット、市川&岩井監督の直筆イラスト入りオリジナルポストカードを封入。

 悲しくもないのに、作品を包む温かさとユーモアになぜか泣けて、そして笑える。これを見ると、市川作品はもちろん、こんな抜群のセンスでドキュメンタリー映画を撮る岩井監督の過去作品にも興味が湧くはずだ。

関連サイト:

http://www.ichikawakon.jp/(公式サイト)

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