コピーワンスはどこへいく:LifeStyle Weekly Access Top10
知財推進計画2007が発表されたが、コピーワンスについては「早期に結論を得る」というまま。
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先週の1位は小寺氏のコラム。自然資源に乏しい日本は、国際社会で生き抜くためそれに変わる“何か”を持たなければならないとは以前から言われていた話だが、一昔前は「技術」、いまは「知的財産」や「コンテンツ」になっているようだ。
人材や金銭を投入すればある程度の成果が見込めた「技術」と違い、「コンテンツ」の発展は一筋縄にはいかない。文化政策の側面があるだけにより柔軟性の高い判断が求められるのだが、どうも5月末に発表された「知的財産推進計画2007」を読んでいると、利益の確保を優先しているような気がしてならない。小寺氏は「文化を道連れにした経済政策」と評してるが、まさにその通りであろうと思う。
小寺氏のコラムの中では「著作権法の非親告罪化」という動きについて言及している。著作権と新型VARDIAの発表で思い出したのが、コピーワンスの見直し問題だ。昨年の同時期に発表された「知的財産推進計画2006」には総務省/文部科学省/経済産業省の連名でコピーワンスの見直しを推進する文言が記載されているが、今年の推進計画を読んでも状態に大きな変化はないことが窺える。
知的財産推進計画2007(PDFファイル)の105ページにはこうある。「こうしたプロテクションシステムの設定について、行政としても引き続き、視聴者、メーカー、関係事業者等幅広い関係者の参加を得て、その検討プロセスを公開し、その透明化を図ることによりシステム間の競争を促進するとともに、あわせて、その透明、競争的かつ継続的な見直しプロセスの在り方についても検討し、これまでの成果を踏まえ2007年度中の早期に結論を得る」(原文ママ)
確かにその通り。透明な検討プロセスを経た上でユーザーも納得できるかたちでまとめてもらいたいものだが、既に6月も半ばを過ぎている。確かに年度で数えればまだ「早期」に入るかも知れないが、夏商戦向けのレコーダーはほぼ出荷が開始されている。しかも、従来の通りのレギュレーション、コピーワンスに沿ったままだ。開発期間を考えれば、冬商戦向け製品が登場しても状況は変わっていない可能性が高い。
2006年8月の情報通信審議会総会では、コピーワンスにかわる制御方式として「EPN」(encryption plus non-assertion)の検討を進めるよう関係各位に促すなどの動きもあったが、現在のところ、EPNを推進するのか、はたまたコピーワンスを継続するのか、第3の方式を導入するのか、確とした決定はなされていない。技術としての優劣ではなく、ふさわしい落としどころがまだ見つかっていないからだ。
コンテンツ製作者、メーカー、放送局、隣接権者、そして一般ユーザー。多くの人が“コンテンツ”に携わっているが、このなかでも最も一番声を出しにくいのが一般消費者であることは間違いないだろう。その一般消費者が納得できるかたちに事態は収束するのだろうか。ハッキリしていることは、誰かが自身の利益を会議室で声高に訴えている間も時間だけは過ぎていくと言うことだ。
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