「コピー10回だからこそ、補償金制度が不可欠」――権利者団体が主張
コピーワンス緩和の方針を受け、音楽や映像など関する権利者団体が「コピー回数緩和には私的録音録画補償金制度の維持が不可欠」と主張した。
音楽や映像、実演に関する権利者団体で組織される「デジタル私的録画問題に関する権利者会議」(以下 権利者会議)は7月17日、都内で会見を開き「コピーワンスの回数制限緩和には私的録音録画補償金制度の維持が不可欠」との声明を発表した。
7月12日に行われた情報通信審議会「デジタルコンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」では、デジタル放送のコピー回数がこれまでの1回(コピーワンス)から10回(放送からHDD/DVDなどへの録画で1回、その他機器へのコピーが9回の合計10回)までに緩和される方向でほぼ合意している。
権利者会議側は委員会でコピーは4回(放送波からのコピー1回+他機器へのコピー3回)を主張しており、会見の席でも「10回という数字は必ずしも納得がいく数字ではない」としながらも、ユーザーと権利者の間で見いだした着地点として尊重するとの姿勢を示す。ただし、緩和の前提に「コンテンツへの尊敬」と「対価の還元」(椎名氏)を挙げており、「ユーザーの利便性と権利者の権利保護を両立させるためには、私的録音録画補償金制度の維持が不可欠」と主張した。
同審議会でコピーワンスの回数変更ではなくEPN(Encryption Plus Non-assertion)を主張していたJEITAについて実演家著作隣接権センターの椎名和夫理事は、「消費者と権利者が歩み寄ろうとしているとき、補償金制度の廃止を話し始めるような態度は事態の推進を妨げる」と批判。EPNそのものについても、「EPNは枚数も世代も制限できないコピーフリーだ」と、とうてい受け入れる余地がないとの見解を示した。
また、制度の維持を再度主張する私的録音録画補償金制度については、「制度そのものの周知が足りないのは事実だと思う。ただ、この制度があることでメーカーやユーザーもメリットを享受している。そのことについて理解を深めて欲しい」と述べた。
デジタル私的録音問題に関する権利者会議は、日本映画製作者連盟や全日本テレビ番組製作者連盟、日本芸能実演家団体協議会、日本音楽事業者協会、日本脚本家連盟、日本音楽著作権協会、日本レコード協会、日本俳優連合など86団体が加盟している。
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