後悔しない画面サイズ選び(1):本田雅一のTV Style
薄型テレビを“買い増し”や“買い替え”する人も増えているが、「もっと大きな画面サイズにしたくなったから」というケースが多いそうだ。この連載では薄型テレビに関するさまざまな話題をお伝えしていくが、まずは「後悔しない画面サイズ選び」をテーマにしたい。
大画面だけでなく、20インチ台の比較的小さなモデルにまで、魅力的な地上デジタルチューナー内蔵テレビがラインアップされるようになってきた昨今、薄型テレビの普及はいよいよ本格化してきたといえる。薄型テレビの売り上げは昨年、劇的に伸びた(前年比200%のペースだった)が、家電各社によると今年はさらにそのペースに50%以上の上積みが予想されているという。
一方で薄型テレビを早々に導入していたユーザーも、買い増しや買い替えといった形で追加購入をするケースが増えてきた。これには、ここ数年における劇的な画質の改善という要素も関係しているだろうが、販売店などの話では「もっと大きな画面サイズにしたくなったから」という理由が非常に多いそうだ。
というわけで、この連載では薄型テレビにまつわるさまざまな話題についてお伝えしていくが、まずは「後悔しない画面サイズ選び」をテーマにしたい。
“もっと大画面が欲しい”と思う人が多い理由
さて冒頭で述べた「もっと大きな画面サイズを……」と思う人が多いのは、なぜだろうか? 今よりももっと薄型テレビが高価だった頃、10年ぐらいは使うつもりで購入した人が多いはず。にも関わらず、もっと大きくと思うのには、いくつかの理由がある。
ひとつには、テレビの大型化が進むとともに、テレビ番組の絵作りが少しづつ変化してきているからだ。大画面に合わせて、やや“引き”(つまりワイド画角)での撮影が増え、大画面向きになってきた。現在は地上デジタル波と地上アナログ波で、同じ内容を同時放送しているため、それほど極端に絵作りは変化していないが、今後はさらに“引き”の絵が多くなっていくだろう。
現時点でも、ハイビジョン放送を前提に撮影されている番組は、出演者の“どアップ”がパンパンと切り替わるような演出はしなくなっている。TBSのドラマなどは顕著で、より映画的な構図を意図したと思える撮り方も増えてきた。
写真を撮る人ならば感覚的にわかるだろうが、構図を決める際には高さ方向に合わせて撮影することが多いため、16:9の画面を前提に収まりよく撮影するようになってくると、従来よりもワイド画角の撮影が多くなる。
もうひとつの理由は、ハイビジョン化により画面を大きくしても細かな部分まで精細に描写できるようになったこと。従来の地上アナログ放送を拡大表示すると、そのアラが非常に目立つが、ハイビジョンの場合は情報量が多く、拡大するほどに細かなディテールが見通せるようになる。
次に挙げたいのが、見る番組が変化するという意見。地上波のバラエティやお手軽ドラマばかりではなく、BSデジタルで放送されているドキュメンタリーや映画の魅力を、大画面化とハイビジョン化によって再認識し、最初に選んだ画面サイズでは満足できなくなってしまうというパターンで買い換えや買い増しを行う場合も意外に多い。
とくに映画ファンは要注意。筆者は「映画を見る時に42インチだと、少なくとも2メートル以内に寄らないと、あまり大画面感は感じませんよ」とアドバイスすることが多い。とりわけシネスコサイズの映画は上下に大きな黒帯が出てしまうため、画面の高さは知れたもの。劇場の大画面で見ることだけを考えて撮影された映像を上下黒帯状態で見ると、なんともチマチマとして映画らしくない。
先日もフルHDの37インチの液晶テレビを買いに行った友人から電話が入り、部屋のレイアウトを聞いた上で、あえてWXGAの50インチプラズマテレビを奨めたということがあったが、「次はもう少し大きい方がいい」などと話している。こればかりは、体験しなければわからないことだし、見るコンテンツの質や部屋の状況によって異なる。
必ずしも大きければいいというわけではないが、始めて薄型テレビを購入する人の場合、たいていは自分が考えているよりも1〜2周りほど大きい画面サイズの製品を狙った方が満足感は高いようだ。
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