自腹で買った50本超の中から独断と偏見で選ぶ「マイ・ベスト・ボールペン」:プロフェッサー JOEの「Gadget・ガジェット・がじぇっと!」(3/4 ページ)
子供のころから50を超える今まで、文房具への興味は尽きない筆者が自腹で買った50本以上のなかから、さまざまな「マイ・ベスト・ボールペン」をご紹介。
ヴィトンやカルチェ、ティファニー、ミキモトなどなど、ボールペンの世界にも異業界のブランドの波は押し寄せて来ている。その多くは、ブランドのトータルバリューを見せつけるために緻密な作戦のもと、慎重な商品投入を図るのが普通だが、そうした新規参入組の中には、単にブランド名を付けただけ……なんていう少し残念な商品も見受けられる。
筆者の持ち物の中では、ブルガリのボールペンがその代表だ。外観カラーの違いにより数モデルの商品が日本でも発売されているが、いずれも外観デザインは同じだ。ブルガリのほかの製品とのイメージ連鎖は低く、筆記面でも特別なバリューは感じられない。「ブランドだけで賞」の受賞資格はあるだろう。次期製品に期待したい。
世界は広くても実用的なレベルで新しい試みを出来るメーカーはさほど多くない。そんな難しいチャレンジをいとも簡単にクリアしたボールペンの老舗がBICだ。日本では、ペンテルやパイロット、三菱鉛筆など多くの強力な競合会社がいて、なかなか海外諸国のようにメジャーになれないが、同社のボールペンとマーカーをインテグレートした「ブリーフィング」ペンは秀作だ。価格性能比も高く、見栄を張らずに1本だけ筆記具を持ち歩くとしたら、筆者は間違いなく「ブリーフィング」を持ってゆくだろう。ブリーフィングは「実用一番で賞」だと思う。
日本メーカーにはアイデアマンが多いようだ。ボールペン本体からウイングが飛び出す「ペンテルのエルゴノミクス」もアイデアペンの代表作だ。パソコンがほぼ1人1台普及し、どれだけ多くの人が、手首が疲れるほど集中的に文字を書くか筆者には判断できないが、多くのペンメーカーは手首の疲労軽減や回復に熱心だ。エルゴノミクスペンもその思いつきやロジカルなメカニズムには納得させられるが、実際に使ってみるとその効果はすぐには分かりにくい。実証実験が万人に当てはまらないのかもしれないが、筆者には「アイデアだけで賞」に見えてしまう。
ウンチクとロジックは楽しいが、実際に使ってみると、筆記に慣れが必要だ。文字を書く時に親指と人差し指の間の水かきにかかるタクタイル感に慣れるのがコツ。トランスフォーマー時代の変形合体メカモデル好きには必携の1本だ
筆記具の世界も競争が激しくなって来ると、著名なデザイナーに全体コンセプトを監修して頂いたり、実際に製品そのものをデザインしてもらったりと言うことが増えているようだ。ただ残念なのは、筆記具の基本である「ごく普通に字が書けること」という観点がデザイン優先によってともすれば忘れられがちなことだ。
筆者のコレクションの中でもそれが顕著なボールペンが2〜3ある。ひとつはマウイ島に本拠を置く「アクメ」の日本人デザイナーによる「SCALE」。もうひとつは、ダイムラーベンツやThinkPadのデザイナーとして世界的に有名なリチャード・ザッパー氏によるLAMYの「ダイアローグ」だ。
この2つのボールペンの共通点はいずれも「断面が三角形」であることだ。たまにサインをするとか、簡単なメモをとるのが目的であればこの両者ともデザインとしては素晴らしいが、多くの文字を筆記するには不向きだ。特にSCALEは、筆者のペンのホールドの仕方に問題があるのかもしれないが、中指にかなりの負担がかかって痛くて書きづらい。断面が三角の高級ボールペンを選ぶ場合は入念な試し書きが必要だ。ダイアローグに対しては「デザインは一流で賞」、SCALEに対しては「きっと使いづらいで賞」を差し上げたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.