黄金分割でワンランク上を狙う:脱フルオートの道 第11回
ある程度は意図通りの写真を撮れるようになると、次に悩むのが構図。「黄金分割」を意識することでワンランク上の写真を撮ろう。
これまで説明してきたように、写真撮影にはさまざまなテクニックがある。こうしたテクニックは、写真を何枚も撮影し、写真に慣れれば慣れるほどより上達するもの。そうして撮影に慣れてくるとより楽しくなってくる。意図した写真が撮れれば、もう初心者脱出といえるだろう。
しかし、この段階まで来ると悩む機会が増えるのが「構図」だ。写真撮影における構図というのは、写真の中にどのように被写体や背景を配置するか、という画面構成のことを指す。記録という意味では必要なものが写っていれば十分なのだが、ちょっといい写真を撮りたいと思ったときは、構図を気にして撮影するといい。
黄金分割で構図を決める
構図の基本は、主題となる主被写体をいかに強調し、それ以外をバランスよく配置するか、ということになる。漫然と撮影するのではなく、何を撮りたいのかを考えながら撮影することが重要だ。
俗に言う「日の丸構図」は、主被写体を真ん中に置く構図で、記念写真によくあるのだが、写真としては平凡なものになりがち。日の丸構図が悪いわけではないが、まずは意図的に日の丸構図とならないよう撮影してみるといい。
一般的に安定した構図の決め方としていわれるのが「黄金分割」と呼ばれる手法だ。人が最も美しいと感じるという約1:1.618(5:8)を「黄金比」というが、この比率にもとづいて分割することを黄金分割と呼ぶ。
構図の黄金分割でよく言われるのが、画面の縦横をそれぞれ3等分し、それぞれの線が交わる4つの点のどこかに被写体を配置する「3分割法」で、これはバランスのいい安定した構図とされる。最初は、この3分割法を意識して撮影するといい。
多くのコンパクトデジカメにはこの3分割法に従って液晶画面に格子線を表示する「グリッド」機能を備えているので、それを参考に、縦横の線が交差するポイントに被写体を配置していくと見栄えのいい写真ができあがる、というわけだ。
グリッド表示で3分割法を意識すると、画面の水平を撮りやすくなることもメリット。建物や水平線のような直線を撮影する際、水平にならずに傾いて撮影してしまうのはよくあることだが、こうした写真は不安定感を感じさせてよくない場合が多い。グリッドの直線にあわせると水平がきちんと出せるので、このあたりも注意しておこう。
水平線を撮影する場合といえば、海と空の割合をどうするか、というのも悩みどころだが、これも3分割法で解決できる。夕焼けに染まった海を撮りたいのか、白い雲と青い空を撮りたいのか、主題を決めたら、3分割法に従って画面の3分の2を海にしたり空にしたりすればいい。
こうした構図の基本テクニックはほかにもいくつかあり、建物を見上げて撮る場合のように、画面内に三角形を置くイメージで被写体を配置する「三角構図」、画面の対角線上に被写体を配置する「対角線構図」、被写体をS字に配置する「S字構図」などがある。
注意して欲しいのは、構図にこれという正解はないこと。紹介した構図もひとつの参考として頭にストックしておき、状況や被写体によって常にベストのアングルを探ることを忘れないようにしよう。ただ、こうしたポイントを頭に入れておく撮影をしていくことで、写真がより良くなっていくことだろう。
関連記事
- 脱フルオートの道 第10回:フラッシュの小技
暗い場所で使うモノといえば懐中電灯、ではなくフラッシュ。ただし、フラッシュをたけばいいと言うものではない。 - 脱フルオートの道 第9回:ヤフオクで入札されまくるブツ撮りテク
ネットオークションで“買う気”を引くには、出品物を説明する写真のデキも大切だ。コンパクトデジカメでも、入札されまくるブツ撮りをするには?( - 脱フルオートの道 第8回:もう一度確認したいズームの使い方
遠くの被写体を近くに引き寄せる「ズーム」は確かに便利だが、なんでもズームすればいいというワケではない。 - 脱フルオートの道 第7回:WB、それはホワイトバランス
撮った写真の「色がヘン」ということはよくある。そこで確認したいのがホワイトバランスだ。オートなら失敗は少ないが、意図したとおりの写真を撮りたいならば積極的に設定することも必要だ。 - 脱フルオートの道 第6回:ブレさせん! ブレなどさせん! 写真の天敵「ブレ」を追放する
写真の大敵「ブレ」。ブレなどさせぬわ!と脇を締めて撮影するのは基本だが、ブレの起こる仕組みを理解してスマートにブレを回避すべし。 - 脱フルオートの道 第5回:ボケる? ボケない? 分かりやすい「ボケ」を楽しむ
ボケといってもお笑いの話ではなく、わざと被写体以外にピントをあわせないことで被写体を強調する写真のボケの話。ツッコミはナシの方向でひとつ。 - 脱フルオートの道 第4回:操れ!露出! 目指せ光のマジシャン
絞りとシャッタースピードが理解できれば、光のコントロールである「露出」もすんなり分かるはず。光を操って、思い通りの写真を撮ろう。 - 脱フルオートの道 第3回:絞れ!光! 光の量で写真に表情をつける
CCDなどへ光を当てる「時間」はシャッタースピードで調整するが、光を当てる「量」を調節するのが「絞り」。今回は「ボケ」を意図的に操作するためにもつながる絞りについて理解しよう。 - 脱フルオートの道 第2回:蓄えろ!知識! シャッタースピードは瞬きがごとし
カメラ任せのフルオートから脱却するには、ある程度でも写真撮影の知識を蓄える必要がある。まずは「シャッタースピード」について理解しよう。 - 脱フルオートの道 第1回 :回せ!モードダイヤル! 花のマークはマクロの証
コンパクトデジカメは実に機能豊かになってきた。ただ、いつもフルオート任せではもったいない。まずはモードダイヤルを回すことから始めよう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.