ソニーが考える“価格競争後”のBlu-ray Disc事業:2008 International CES(2/2 ページ)
昨年、ソニーは北米市場でかなり積極的なBlu-ray Discの拡販を行った。低価格プレーヤーで対抗するHD DVDに食らいつき、数字の上で負けないため、あらゆる努力をした。ソニーエレクトロニクスでBDプレーヤーのマーケティングを担当する長尾和芳氏に昨年の状況と今年の戦略を聞いた。
自グループのソニーピクチャーズだけでなく、20世紀フォックスやディズニーとも協力し、毎週、新しい新作ソフトが続々と登場するスケジュールを組む。さらにDVD発売のCMでは、必ずBDの同時発売とBDプレーヤーでしか見ることができないというメッセージを繰り返し発信。そうした準備の上でクリスマス商戦に挑み、結果としてトータルのプレーヤー販売数でほぼ追いついた。「BRAVIAとセットで購入すると安価にBDプレーヤーが入手できるキャンペーンを展開したことも功を奏しました」(長尾氏)。
今後は対HD DVDというよりも、BDそのものを普及させることが課題だと長尾氏は気を引き締める。「“勝った”とか“負けた”ではなく、まだBDの普及を始めたばかりですから、BDの良さを引き続き、きちんと訴求していきます」。
その長尾氏が今年、もっとも注目しているのが「BD Live」だ。インタビューの時、長尾氏が予測していたかどうかは分からないが、東芝は1月14日付けで北米でのHD DVDプレーヤーの価格を引き下げ、1080i出力のローエンド機を149.00ドル、1080P出力のミドルレンジ機を199.99ドル、HDオーディオストリーム出力に対応する上位機を299.99ドルに設定した。
CESのBDAブースで人気を集めた「Alien vs. Predator」を使ったBD-Liveのデモ。映像にFPS(First Person Shooting)ゲームを重ね、映画を見るだけではなくゲームとして映画に参加できる。
そうした動きに対して、ソニーはBDの高画質訴求とBD Liveの活用を進めることで、ユーザーに付加価値の高さを訴える正攻法で攻める。「Without Blu-ray HDTV is just TV(ブルーレイのないハイビジョンテレビは、ただのテレビだ)」という標語で攻める(補足すると、米国のユーザーはテレビ番組を見る時間よりも、DVDを見ている時間の方が長いという調査結果があるほどパッケージの映像を見ている)。
現在、ソニーはハイエンドの「BD-S2000ES」(1299ドル)を筆頭に、「BDP-S500」(699ドル)、「BDP-S300」(399ドル)のラインアップだが、年内にはすべての機種をBD Liveとネットワークアップデート対応機種に置き換えていくと長尾氏は話す。
今年はどのぐらいの数を出荷するのか? との質問には「400〜500万台」(民生機全体、PS3は含まず)と勇ましい。その数字の根拠はDVDプレーヤー3年目の数字に由来している。DVDプレーヤーは発売3年目に480万台を記録し、普及への弾みを付けた。BDプレーヤーも同じ3年目で、DVDと同じ数字を達成するというのである。
“DVDプレーヤーと同程度の普及ペース”というのは、実は生やさしいことではない。ご存知の通り、初期のDVDプレーヤー普及速度はさほど早くなかった。それだけを考えると妥当に感じるかもしれないが、すでにSDのテレビが普及している中にDVDプレーヤーを販売するのと、HDTVの普及半ばの時期にHDのプレーヤーを販売するのでは意味が異なる。「見方を変えれば、50%程度のHDTV普及率の中でDVD並みということは、2倍の普及速度とも言える」(長尾氏)。
ただ、気になるのはフォーマット戦争の影響で、安くなりすぎた価格だ。普及速度優先、対HD DVD対抗優先で価格が下がった結果、現在の399ドル(一時299ドル)BDプレーヤーがある。一度下がった価格はなかなか戻すことができない。今後もフォーマット戦争の影響が残るとするなら、かつてのような高級機からローエンドまでの幅広いラインアップは望めない。果たしてラインアップの健全化は、今からでも可能だろうか?
「できると思っています。BDプレーヤーと一口に言っても、顧客にはさまざまな嗜好をもった方がいらっしゃいます。選択肢をたくさん提供することは必要です。コンテンツの選択肢や、多くのメーカーから選択できることも重要ですが、ソニーの中でも高画質・高音質を狙ったものから、価格優先のものまでさまざまな製品が望まれています」と長尾氏。そして、「ハイエンド機に関しては、実際の利益は別にしても、マーケティング戦略的にはきちんとマニアにも支持していただける製品が作れないようではダメだと思います」と続けた。
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