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れこめんどDVD:「ベクシル−2077 日本鎖国−(特別装幀版)」DVDレビュー(2/2 ページ)

「APPLESEED」「ピンポン」で映画ファンを驚かせた曽利文彦監督の最新作「ベクシル」。“3Dライブアニメ”とうたわれる脅威の映像表現はもちろん、そのテーマ性にも注目したい。

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DVDは3種類。ファンなら特典満載の“特別装幀版”を

 DVDはアニメファンの多様なニーズに応えてか3種類発売されている。本編ディスクのみの“通常版”、本編ディスクとHD DVDをセットにした“HD DVD&スタンダードDVDツインパック”、そして“HD DVD&スタンダードDVDツインパック”に2枚の特典ディスクと解説書を同梱した“特別装幀版”。この映画のファンであれば間違いなく特別装幀版を手にして欲しいところだが、HD DVDの画質もすこぶる良好なので、もし予算がなくてHD DVDが再生できる環境にあればツインパックもオススメだ。

 特別装幀版に収録された特典ディスクの内容は1枚目が「『ドキュメント・ベクシル』〜世界が震撼した3Dライブアニメ誕生の軌跡〜」、2枚目が「スペシャルインタビュー『曽利文彦が語るベクシルの真実』」「秘蔵CGデモ映像『クリエイター、ベクシルと語る』」「トレーラー/TV−CM集」となっている。トータルで2時間強の内容なので、2層ディスクにすれば1枚で済むはずだが、ボリューム感を出したかったのだろうか?

 「『ドキュメント・ベクシル』〜世界が震撼した3Dライブアニメ誕生の軌跡〜」ではスイスのロカルノ映画祭での様子から、製作工程、公開の様子まで幅広く取材された映像が収められて興味深い。中でもロカルノ映画祭で8000人の観客が集まった様子は国内では決して見ることのできないスケールのものだ。観客の反応や、新聞の評判も上々で、本作が海外で高い評価を得たことがうれしく感じられる。しかし“公開初日”の映像と言っておきながら会場に向かうタクシーで監督が手にしているのは“完成披露試写会”の台本だったりしてアバウトな編集になっている点はちょっと残念だった。

HD DVDで映像の真価を発揮

 ディスクの視聴は、HD DVDプレーヤー「HD-XA2」からYAMAHAのAVアンプ「DSP-AX4600」をHDMIで経由し、映像は42インチのプラズマと液晶プロジェクターによる100インチのスクリーン再生で行った。

 メインで視聴したのはDVD、時折HD DVDでも同様の場面をチェックして比較してみた。昨今は次世代ディスクやハイビジョン放送を見慣れてSDの映像を見る機会は確実に減っているが、そんな中でも本ディスクに大きな不満を感じることはなかった。諧調は豊かだし、映像の奥行きもそれなりに再現できている。設備の悪い映画館で見るよりははるかに状態のいい映像になっている。

 しかし一度HD DVDの映像を見てしまったらその差にあ然。本作の真の力はやはりHD画質でないと再現できないようだ。音響は、DVDはドルビーデジタル5.1chと2chを収録。HD DVDにはドルビーTrueHDの5.1chとリニアPCMの2chを収録している。

 DVDの音響はCH-1の屋敷でのバトルシーンや、CH-4の港でのチェイスシーンなどでサラウンド感は感じられものの、やや引きこもった印象になってしまう。しかしHD DVDのドルビーTrueHD5.1chで聞き直すと状況は一変。ダイナミックレンジが急に広がり、スピード感が一段と増してくる。演出面で印象的なのはアクションシーンでのスローモーションのタイミング。サム・ペキンパーと言ったら誉めすぎかもしれないが、それでも緩急自在な映像のテンポは映画を実に面白く見せてくれる。

 CH-3のメインタイトルでは主人公の女性ベクシルの部屋にあるAVシステムが面白い。巨大なスピーカーはあるのにテレビがない。恐らくスピーカーの脇に電磁スクリーンのようなスタンドが2つ立っているので、それが映像を映し出すという設定なのではないか。高層ビルが立ち並ぶ実景ショットも奥まで丁寧に描きこまれ、自分の視力が上がったような錯覚を覚える。

 最も本作の凄さが感じられるのはCH-10以降、クライマックスに登場する謎の生命体ジャグである。生態金属の巨大な塊は「砂の惑星」に登場するサンドウォームを連想させるが、細かい機械が一体となったジャグの迫力は大画面になるほど実感できるはずだ。

賛否両論の本作だが……

 物語の半分以上は鎖国化された日本が舞台となるが、ネタばらしになってしまうので、ストーリーの細部については記すことができない。ネットや映画雑誌などを見ると本作の評価はまっぷたつに分かれてしまっている。映像技術の凄さを褒め称える一方で、内容の薄さを指摘する声も目立つ。映像の迫力に目を奪われ、テーマ性を見逃しているのでは?という気もしないのではないが、是非ご自身の目で作品を判断していただきたい。個人的には世界129カ国の公開が終了してからの、曽利監督の今後に期待せずにはいられない。

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