「BRAVIA」のソニーと「AQUOS」のシャープ、液晶で共闘
「BRAVIA」と「AQUOS」、ライバルブランドを擁するソニーとシャープが大型液晶パネルの製造販売を行う新会社を設立する。新会社は両社へパネルを供給するが、ライバルの「共闘」の背景には、激化する液晶テレビ戦争がある。
シャープとソニーは2月26日、大型液晶パネルとモジュールの生産および販売を行う合弁会社を設立する意向を明らかにした(関連記事)。
新会社は2009年4月をめどに設立され、シャープが大阪府堺市に建設中の新工場の運営を行う。2009年度中の操業開始が予定されており、製造されたパネルとモジュールは両社へ提供される。社名や資本金、代表者などは未定だが、出資比率はシャープ66%、ソニー34%とされている。新工場の敷地内には部材メーカーも展開する予定となっており、国内有数の液晶生産拠点となる。
「部材メーカーも含めての展開であり、日本の液晶産業全体の底上げにもなるだろう。世界中へ液晶テレビを普及させるための重要な拠点となる」(シャープ 代表取締役社長 片山幹雄氏) 「ソニーが世界一の液晶テレビメーカーになるため欠かせない要素となる」(ソニー 社長 兼 エレクトロニクスCEO 中鉢良治氏)
薄型テレビの普及が進むにつれ、国内メーカーは自社のみでの展開を断念しての企業連携を進めつつある。ソニーは2004年に韓Samsung Electronicsと液晶パネルの製造を行う「S-LCD」を設立、シャープも2007年末に東芝と液晶および半導体分野での提携を発表している。
今回の合弁会社設立は、パネル供給の安定性を高めたいソニーと、新工場の稼働率を高めたいシャープの思惑が一致した格好だ。S-LCDは現在第7/第8世代マザーガラスによる液晶パネル製造を行っているが、新工場はより大型のパネルが製造可能な第10世代の製造ラインが導入されており、価格競争力を高められる。また、シャープの新工場に対する設備投資額は亀山第1/第2工場を上回ると見られており、稼働率を上げることはシャープにとっても課題となっていた。
液晶テレビを含む薄型テレビ競争の激化が背景にあることも無視できない。昨年12月には日立製作所/キヤノン/松下電器産業の3社が液晶ディスプレイ事業や技術のさらなる強化を目的に包括的な提携を行うことで基本合意したほか、次世代の薄型テレビといわれる有機ELやSEDの開発も各社が進めている。
ここまでは両社の利害は一致するが、相反する部分もある。両社の展開する「BRAVIA」「AQUOS」はいずれも店頭でしのぎを削る液晶テレビブランドであり、同一工場のパネルを利用することで差別化が図りにくくなるというデメリットも発生する。しかし、両社長は得られるメリットを優先する判断を下した。
「確かにBRAVIAとAQUOSは世界中で競争するブランドだが、今回の提携でパネルの安定生産と提供が行え、コスト面ではプラスになる。新技術の開発も進むはずで、世界のメーカーと互角に戦うだけの能力を手にできる」(片山氏)
「(S-LCDがパネルを供給する)ソニーとサムスンもテレビ市場で競争しているが、S-LCDは利益を上げているし、こうした関係は存在しうると考えている」(中鉢氏)
なお、新会社からのソニーへ供給される液晶パネルのサイズは40V型前後が中心で、それ以外のサイズについては引き続きS-LCDのパネルが利用される予定だ。「新会社から供給を受けるパネルは40V型がメインにするつもりで、S-LCDを基幹供給源とする考えにかわりはない。新会社は“新たな基幹供給源”となる」(中鉢氏)
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