ネットワークに注力する異色の高級オーディオ、リンの製品戦略(2/2 ページ)
数ある高級オーディオブランドの中でも、スコットランドのLINN Products(リン)は異彩を放つメーカーだ。同社が現在、もっとも力を入れているのがネットワークオーディオの「DSシリーズ」。開発陣頭指揮を執ったギラッド・ティーフェンブルン氏にその戦略を聞いた。
Windows Mobile対応の「LINN GUI」を年内に
Windows Mobile対応のLINN GUIを年内に提供する予定です。またUPnP AV Control対応のスマートフォンを欧州でノキアが販売していますから、将来は日本でも同様の機器が提供されていくのではないでしょうか。
――現状、もっとも一般的な使い方としてはCDのリッピングデータの再生でしょう。しかし、高音質な音楽データの配信にも可能性はあると思います。クラシックやジャズといった分野の良質なコンテンツを流通させる媒体としては、むしろ在庫リスクのあるCDやSACDよりもネットワーク配信の方が可能性が高いともいえます。リンは著作権保護のかかったオーディオデータ配信にも対応していくのでしょうか?
われわれは高品質の音楽を提供するため、「LINN Recoreds」というレーベルを持って高音質のソフトを提供してきました。ここで現在はロスレス圧縮のFLACを用いた配信を行っています。24ビット/96kHzといったスタジオマスタークオリティのロスレス配信です。ほかにも、独立系、メジャーレーベル、アーティスト単独などさまざまな形で、FLACの高音質音源を入手可能です。
さらに、WAV、WMA、MP3といった形式にも、新製品で中上位機種の「Akurate DS」が対応しています。MP3やWMAはKlimax DSではサポートされていませんが、MP3はもうすぐ、WMAについても将来的にファームウェアアップデートでサポートします。
ただ、著作権保護には対応する予定は今のところありませんし、LINN Recordsで配信しているデータにもDRMはかけていません。データの暗号化による著作権保護は、ユーザーの誰もが望まないことですし、市場を狭くするだけで誰の利益にもなりませんから、われわれの製品にDRMを実装することはありません。
――そうはいっても、高音質ソースだけでなく、一般的なポピュラー音楽まで幅を広げれば、今後、DRMのかかった音楽ソースも(望む、望まないにかかわらず)増えてきてしまうでしょう。せめて、DTCP-IPでサーバとDSシリーズを接続するといった解決策が用意されておく必要はないのでしょうか?
まず、現在のところDSシリーズは、すでに持っているCDコレクションをCDプレーヤーよりも高音質で聴ける製品です。音楽ライブラリを共有することで、各部屋で家庭内の音楽ソースを共有できる利便性も備えています。その先の可能性として、音楽配信があるわけですが、われわれはオープンな哲学を持っており、決してどこか特定のシステムに依存する開発はしません。
――294万円の「Klimax DS」に続き、89万2500円の「Akurate DS」が発売されました。それぞれの価格は、同一シリーズのCDプレーヤー(KlimaxシリーズにCDプレーヤーはないが、その前身であるCD12がほぼ同価格だった)と同価格帯で提供されています。となれば、今後はさらにほかのシリーズにも展開されることを期待したくなりますね。今後、DSの技術はどのように広げていくのでしょう?
あらゆるタイプの製品にDSの機能を組み込んでいきたいと考えています。単体プレーヤーとしてだけではなく、例えばアナログディスクプレーヤーの「LP12」にDS機能を追加するモジュールを開発しても面白いかもしれません。すべての製品がDS対応になり、ネットワークで結合されるというのが理想です。
――リンのブランドを広げたといっても過言でもない名作一体型オーディオシステムの「Classik Music」が生産完了となり、入手不可能になってしまいました。次のバージョンを期待する声もありますが、DS技術に対応するでしょうか?
Classik Musicは、オーディオ専用CDメカの入手が難しくなり、生産が完了しました。ご存じのようにオーディオ用CDメカは現在、質の高いものが安価には入手できず、パソコン用メカを流用しなければなりません。あるいはもっと値上げをするか? ですが、それは避けたい。こうした世の中の流れに逆らって、パソコン用ドライブを用いた上で魅力ある製品になるかどうかを検討しているところです。
ただ、Classikシリーズはとてもシンプルな製品で、CDを入れれば音が出て、ラジオに切り替えればやはり音が出る。ハイエンド製品はディーラー教育を徹底し、カスタマーに対しても細かなノウハウを含めてさまざまな提案を直接行うことができますが、Classikのユーザー層に対してはもうすこし時間をかけてから提案する方が良いかもしれません。しかし10年後には、ローエンドも含めてDSになっているでしょうね。
――では、今年はAkurate DSを出したことで“一段落”となるのでしょうか?
いえ、そんなことはありません。確かにハイエンドオーディオの世界は製品投入ペースはさほど早くありません。しかし、今年中にDSシリーズの追加ラインアップが発表されるでしょう。またマルチルーム配信向けのソリューションや、壁に埋め込むタイプのコントローラなども年内には投入します。今年はDSシリーズ1本で、これにより高音質で利便性の高いオーディオシステムを提案していきます。
関連記事
- オーディオの楽しみを再び
これまで「音が聞こえればいい」と思っていた人が、趣味として、音楽を積極的に楽しみたいと考え始めている。ただ、オーディオの世界は広く深く、お手軽とは言い難い側面もある。デジタルメディア評論家・麻倉氏にナビゲートしてもらおう。 - ラックスマン「Neo Classico」で親しむ音質チューニング
ラックスマンの「Neo Classico」(ネオ・クラシコ)シリーズは、真空管アンプを基礎にしたコンパクトサイズのオーディオ。音は思いのほか現代的だが、設置に少し工夫するだけで表情が変わってくる奥行きの深い製品だ。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.