DTCP-IP対応でAV機器の仲間入り、バッファロー「LT-H90」を試す:実は自腹です(3/3 ページ)
最近、話題の少なかったネットワーク・メディアプレーヤーだが、バッファローの“Link Theater”「LT-H90」シリーズはかなりユニークだ。H.264およびDTCP-IPのサポートでAV機器との親和性を一気に高め、新しい使い方を提案している。
また、DLNAサーバだけでなく、Windowsのファイル共有でもコンテンツにアクセスできる。基本的には簡易共有で「guest」アクセスできることを前提にしているが、ユーザー名とパスワードを入力してログインすることも可能だ。リモコンでユーザー名とパスワードを毎回入力するのはちょっと面倒だが。ただし、この機能を使えばDLNAサーバ機能を持たないNASはもちろん、Mac OS XのWindowsファイル共有機能を使ってMacをサーバにすることもできるし、UnixのSambaがサーバでも問題はないだろう。
もっとも、ファイル共有でのアクセスはオーバーヘッドが大きいのか、ビットレートの高いハイビジョンのMPEG2-TSファイルなどの場合、DLNAサーバへのアクセスなら問題はないのに、ファイル共有でアクセスすると再生がスムーズにいかない場合があった(再現性100%)。とくに事情がない限り、DLNAサーバを利用したほうがセキュリティ面も含めて確実ではある。
なお、ハイビジョンレコーダーの録画番組を再生する場合(DTCP-IPの暗号化が必要な場合)、現時点では可変速再生は一切利用できないし、レジューム再生も行えない。再生開始/停止、一時停止のみが機能する。これは現時点での制限でファームウェアアップデートで改善される予定だ。実際問題かなり不便なので、この点だけは早期のアップデートを望みたい。
ハイビジョン再生も不満なし
では、実際のコンテンツ再生を見ていこう。ハイビジョンコンテンツはHDVカメラ(MPEG2-TS)で撮影した映像、ハイビジョンレコーダーとDLNAサーバに保存した地上デジタル/BSデジタルの録画番組、WMVのサンプル映像、PCでH.264でエンコードした映像などを再生したが、これといって不満を感じることはない。録画番組に関してはレコーダーでの再生とも比較したが、若干発色の違いを感じる程度で、これはテレビ側で補正ができるレベルだ。
手元に旧モデルに相当する「PC-P4LAN」もあったのでSD映像での比較を行ったが、ノイズの出方が穏やかになった印象で、見やすさは本機が上。だからといって解像度的な不満もない。なにより巻き戻し/早送りなどの特殊再生の動作が大幅に改善されており、レスポンスが向上している。また、PC-P4LANではMPEG4ファイルで先頭から10秒程度の位置で巻き戻しボタンを押すといきなり先頭まで戻ってしまうのだが、本機ではきちんと巻き戻し再生が機能する。
圧縮率が高めのMPEG4ファイルの同じシーンを本機(左)とPC-P4LAN(右)で再生してキャプチャしたもの。本機のほうがノイズの出方が穏やかで見やすい。静止画として拡大するとPC-P4LANの方がエッジが立っているようにも感じるが、実際に動画としてみると解像感も同程度だ。ちなみに縦横比が若干違うのは、4:3出力設定時に動画ファイルに埋め込まれたアスペクト比を本機のほうが正しく反映するからのようだ
ファイル名の制限も緩和されたようだ。例えば、ツインテールのわがままなお嬢様が登場する某アニメシリーズでは、サブタイトルが異常なほど長い回があり、そのまま“番組名+話数+サブタイトル”といった形でファイル名にしておくと、PC-P4では再生できないケースもあったのだが、本機ではまったく問題なし。PC-P4ではフリーズにも結構泣かされたが、本機ではその頻度は激減している。再生可能なコーデックが増えたことも安定動作に貢献していると思うが、旧モデルを利用している人は、この点だけでも買い替える意味はあるかもしれない。
一方で、DivX(厳密にいえば本機の対応はXvidだが)に関してはハイビジョン対応が見送られた。DivXに関してはコンテンツとしてハイビジョンクオリティでの配信もほとんどなく(唯一といえたStage6も終了した)影響は小さいと思うが、ユーザーレベルで見ればH.264/WMVとともにハイビジョンコンテンツとしてのエンコードには今でも広く使われている。デコードチップの制限であれば本機においてはどうにもならないとは思うが、ファームウェアベースで対応できるのなら、是非お願いしたいところだ。
利用シーンも拡大、価格も魅力の新世代DMA
本機の大きな魅力は、現時点では不完全ではあるものの、やはりデジタル放送の録画番組の再生に対応した点だろう。従来のDMAはプライベートルームのPCに保存されたコンテンツをリビングの大型テレビで楽しむという図式が基本だったわけだが、本機の場合逆にリビングのレコーダーで録画した番組をプライベートルームで楽しむという図式も成立する。
今時は液晶ディスプレイもHDMI入力をサポートする場合が多く、現時点ではPCでのDTCP-IP対応クライアントの単体入手が難しい状況であることも考えると、結構魅力的な使い方だと思う。プライベートルームにも液晶テレビがある場合でも、DTCP-IP対応のDLANクライアント機能を持つ製品はまだ少ない。少なくとも従来のDMAでは実現できなかった新しい使い方が可能になったことに間違いない。
また価格も中々魅力。有線LANタイプのLT-H90LANなら2万円前後で購入可能であり、例えば既に所有している液晶テレビをDTCP-IP対応の製品に買い替えるよりずっとリーズナブルだ。たまたま液晶テレビの購入を検討しているのなら話は別だが、そうでなければデジタル放送の録画番組をネットワーク経由で再生する貴重な選択肢になる。
もっとも既に触れたように、現時点ではデジタル放送の録画番組は「再生できるだけ」の状態であり、期待して購入するとがっかりする可能性も高い。もちろんこの点はアップデートでの改善が告知されているので心配はしていないが、早急にお願いしたい。改善が果たされた後が本機は100%本来の姿であり、その存在意義は大きいと筆者は思うのだ。
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