日立「UT37-XP770」でBD「ウォーター・ホース」の叙情を楽しむ:山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.22(2/2 ページ)
わが家の環境に、つい最近37V型液晶テレビの日立製作所「UT37-XP770」が加わった。そう、薄さ35ミリをうたう日立UT(Ultra Thin)シリーズの最新モデルである。
画質の傾向と調整
さて、本機に採用されているのは、視野角の広いIPS α製のIPSパネル。暗部の色づきもよく抑えられており、安定したグレーバランスが実現されている。また、超薄タイプで問題になりやすい輝度ムラも、さすがにうまく抑えられている。他社で超薄をうたうモデルに対する日立UTシリーズのアドバンテージは、まずここにあると思う。
本機に用意されている映像モードは「スーパー」「リビング」「スタンダード」「シネマティック」の4つ。「スーパー」は明らかに量販店の店頭向け画質。100ルクス照度のわが家の通常照明ではまぶしすぎるし、輪郭強調はきつく、ノイズも浮いて見える。それにしても、量販店はいつまであんなに蛍光灯をがんがんつけた店頭でテレビを売るつもりなのだろう。それに合わせた画質モードを用意しなければならないなんて、本当に無益だと思う。
メーカーに聞くと、「リビング」は100〜300ルクス、「スタンダード」は50〜100ルクスの照度環境を想定しているそうで、前者は華やかで明るい画調、記憶色指向の色再現だ。対して「スタンダード」はより自然な画調で、ノイズも丁寧に抑えられる。
放送プログラムをみる映像モードとして、夕方から夜にかけては「スタンダード」がお勧め。あらゆるソースに追随できる、高品位な画質に仕上がっている。外光がスモーク状の窓を通して入り込むわが家の昼間の照度環境では、「リビング」モードが最適だった。普段使いのテレビとして、この2つの映像モードの仕上がりに安心したが、次はぜひ照度環境とコンテンツの画調に追随する、日立ならではの“おまかせ画質”モードを確立してほしいと思う。
しかし、本機を自室で使ってみて予想以上によかったのが、部屋を暗くしてみる「シネマティック」の画質だった。じつにしっとりとした質感表現が味わえ、精細な印象のプラズマモニターとは異なるその柔らかな風合いの映画画質は、独自の魅力があると思った。なかでも、BD ROMの映画「ウォーター・ホース」で描かれるスコットランドの美しい田園風景は、思わずため息が漏れるほどの素晴らしさだった。
「ウォーター・ホース」に合わせた画質調整
「ブルーレイディスク ウォーター・ホース」は4980円。発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント。(c)Mortion Picture 2007 Revolution Studios Distribution Company LLC Walden Media LLC and Holding Pictures Distribution Co. LLC. All Rights Reserved.
舞台は第二次世界大戦時の英国スコットランド。戦地に赴いた父親の帰りを待ちわびる少年が、海岸で不思議な卵を拾って育ててみると、それはネス湖の恐竜として知られることになる伝説の生物“ウォーター・ホース”だった……というこの作品、「ロード・オブ・ザ・リング」の制作スタッフが手がけたという特撮や撮影の技術レベルがたいへん素晴らしく、ハイビジョンで観るにふさわしい映像が次から次に画面に登場する。
「シネマティック」の初期設定でも、この映画の画質の素晴らしさはじゅうぶんに味わえたが、自分のイメージする画調に近づけるべく、より踏み込んだ画質調整に挑戦してみよう。
「シネマティック」デフォルトの色温度設定は、7200ケルビンに設定された「中低」。この色温度では、全体にやや青みが強く感じられ、舞台となるスコットランドの空気感が出ない。そこで色温度を6500ケルビンの「低」に変更した。また、白が立ち過ぎ、階調表現に違和感があったので、「コントラスト」を初期設定の「ダイナミック」から「リニア」へと変えた。
120Hz倍速駆動タイプの本機は、「シネマティック」デフォルトでは、24フレーム/秒の映画ソースが入力されたときに補間処理によって中間フレームを新たに生成する「なめらかシネマ」に設定されている。以前のモデルに比べると、明らかな補間ミスは減っているが、やはり動きの違和感は否めない。そこで、「映像クリエーション」を2/3プルダウン処理で60フレーム/秒の画像をつくって倍速処理をする「フィルムシアター」に変更して、映画らしい時間軸感覚を味わえるようにした。
この状態で「色あい」をマゼンタ(赤紫)方向にー2に設定して見た画質は、じつに素晴らしいものだった。「スタンダード」や「リビング」モードとは大きく異なる趣味性豊かなテイストが味わえるようになったのである。
本機の画質調整項目は、ハイライト側とローライト側それぞれ別個にRGBゲインを調整してホワイトバランスの最適化が図れるなど、かなり懐が深い。コンテンツのクセを補正する目的とともに自分の感覚に合わせて積極的に使いこなしてほしいと思う。
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