「多チャンネルハイビジョンCS」――新サービスを支えるH.264とDVB-S.2:デジモノ家電を読み解くキーワード
多チャンネルで人気のCS放送「スカパー!」に、この10月からハイビジョン対応の新サービス「スカパー! HD」が加わる。HDかつ多チャンネル、という実現が難しそうなサービスのしくみについて説明しよう。
いよいよ始まる「スカパー! HD」
いわゆるCS放送は、通信衛星(Communication Satellite)を利用したテレビ放送サービス。現在日本では、東経124/128度の衛星を使う「スカイパーフェクTV!(スカパー! 1)」と、東経110度の衛星を使う「e2 by スカパー!」という2つの商用サービスが提供されている。前者はDVB-S、後者はISDBと伝送規格は異なるが、どちらもサービス開始当初からのデジタル放送であり、同じスカイパーフェクト・コミュニケーションズにより運営されている。
そして10月1日にスタートするCS放送サービスが、「スカパー! HD」だ。スカパー! 1と同じ東経124/128度の衛星を利用し、新たにハイビジョンチャンネルを追加する形でサービスが提供される。開始当初は映画やスポーツ、PPVなど15チャンネル体制だが、2009年10月には70チャンネル以上を追加、2012年までには100チャンネル以上のサービス体制を目指す計画だ。
秘密は「H.264」と「DVB-S.2」
その「スカパー! HD」を陰で支えるのが、新たに採用されたビデオコーデック「MPEG-4 AVC/H.264」だ。MPEG-2を使用する従来のスカパー! のサービスでは、トランスポンダ(放送中継器)1つあたりの帯域に確保できるHD放送用のチャンネル数は最大2だったが、圧縮率が高いH.264を使用することにより、画質を犠牲にすることなく5チャンネルを確保できるという。
伝送規格に新しい「DVB-S.2」を採用したこともポイントだろう。2004年に欧州電気通信標準化機構(ETSI)により制定されたこの規格は、高い誤り訂正能力が特徴で、帯域あたりの伝送能力は従来のDVB-S方式より3割前後改善されるという。H.264と組み合わせることにより、トランスポンダの転送能力はそのままに、HD放送で多チャンネルを実現という離れ技が実現されたわけだ。
視聴には新チューナーが必要
ただし、「スカパー! HD」の視聴には、新放送方式に対応したチューナーが必要。10月中旬にソニーから発売予定の「DST-HD1」は、スカパー! HDおよび従来のCS放送サービスをサポートするほか、HDMIによるブラビアリンクもサポートするなど、利便性の高さも特徴だ。
執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)
ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。
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スカパーJSATは、秋をめどに開始する予定の「スカパー!」ハイビジョン放送に関して、今後2年間で50チャンネル程度まで拡大する方針を明らかにした。
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