第13回 いつでもどこでもWikipedia──「Wikiamo」:松村太郎のiPhone生活:レファレンス
今回のご紹介は「Wikiamo」。App Storeから無料でダウンロードできる。名前から推測できるとおり、Wikipediaビューワーであり、僕のiPhone生活の中でも稼働率の高いアプリの1つだ。そのお気に入りの理由を、作者インタビューとともにご紹介しよう。
「Google先生に聞いてみよう」
先日学生と話をしていたら、こんな言葉が聞かれた。つまり分からない言葉があったら、とりあえずGoogleで検索してみよう、というわけだ。しかし実際に行き着く場所はWikipediaであることが多く、大まかな雰囲気をつかむにはちょうどいい手段である。
ただ、僕は別の理由でWikipediaが大好きだ。その理由は記事の中に出てくる言葉にリンクがくっついているからである。Webを使っているのだから当たり前だし、とても単純なことのだが、僕はついつい、とある言葉を出発点にして「Wikipediaサーフィン」を楽しんでしまう。
もしかしたら順当に知識の泉を潜っていくかもしれないし、突然別のところへ飛ぶかもしれない。しかしどちらにしても、自分の興味で言葉を調べていく行為そのものが楽しいし、Wikipediaビューワーがあるとすれば、ぜひ検索履歴をちゃんと振り返る機能をつけるべきだと常々考えていた。
iPhone 3GのSafariでもWikipediaを見ることが出来るが、検索履歴を振り返ることはできないし、数ページ進んでいくとシャットダウンに見舞われることが多い(これは半ばあきらめているんだけれども)。そこで活用しているのが「Wikiamo」というアプリだ。
WikiamoはシンプルなWikipediaビューワーで、検索ワードを入力すると、インクリメンタルサーチが効き、素早くキーワードにたどり着ける。またブックマーク機能として、気に入った記事をクリップできるほか、閲覧したページは自動的に履歴として残る。
さらに、履歴に残っているページは、1カ月間キャッシュされる仕様になっていて、ネットワークにつながっていなくてもすぐに開くことが可能だ。この機能は、地下鉄の中でWikipediaサーフィンをするには非常に便利で、駅間に前の記事に戻ったり、過去の記事に遡ってもちゃんと記事が表示されるのだ。
こうして地下鉄に乗ってはその路線を検索し、中吊り広告の分からない人名を見つけたら誰であるか調べる……、と快適なWikipediaサーフィンをどこでも楽しめるようになったのである。
そこで、このアプリを開発したSatoshi Nakagawa氏にメールでインタビューを行った。
――開発のきっかけは?
Nakagawa氏 Wikiamo を開発した一番の理由は、僕自身がWikipediaのヘビーユーザだということだったりします。休みの日には半日以上Wikipediaを読んでいることもあります。最近、友人にも同じような人がいることを知り、ニーズがあるんじゃないかなと考えて開発を始めました
――これまでのiPhone上でのWikipedia閲覧の問題点とは?
Nakagawa氏 MobileSafariでWikipediaを表示すると、文字が小さくて読めないので、実用するのは難しいと思いました。開発を始めたときには、他のアプリはまだ公開されていなかったので、MobileSafariしか選択肢がありませんでした
――ボツになった機能は?
Nakagawa氏 ページをリロードする機能くらいでしょうか。Wikiamoでは、一度表示したページはキャッシュとして保存されるので、本当はそのキャッシュを消去してリロードするボタンを入れたいのですが、ボタンを置く場所がないという理由で入れていません
――iPhoneならではの機能を活用する予定は?
Nakagawa氏 今のところないです。Wikiamo は情報の構造を提示するアプリなので、特に必要ないと考えています。強いて言えば、モバイルデバイスで、あそこまでフォント表示がきれいなものはiPhone以外にないので、それが「iPhoneならでは」ということになるでしょうか
Nakagawa氏もWikipediaのヘビーユーザーであり、だからこそ、とても便利なWikiamoが誕生したのだろう。ついつい位置情報や加速度センサーなどに目がいきがちな“iPhoneならでは”の機能だが、Nakagawa氏が指摘していた「あそこまでフォントがきれいなデバイスはiPhone以外にない」という点は、言われてみれば確かにそのとおりである。この要素を生かしたアプリは、まだまだほかにも出てきそうだ。
というわけで、今日もWikiamoを使って、キレイな文字でWikiepadiaを開きながら、また知識の泉に潜り込もうと思う。
プロフィール:松村太郎
東京、渋谷に生まれ、現在も東京で生活をしているジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ(クラブ、MC)。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。1997年頃より、コンピュータがある生活、ネットワーク、メディアなどを含む情報技術に興味を持つ。これらを研究するため、慶應義塾大学環境情報学部卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。大学・大学院時代から通じて、小檜山賢二研究室にて、ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性について追求している。
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