今が“旬” 低価格フルHDプロジェクター4機種を比較する:バイヤーズガイド(2/2 ページ)
今年のフロントプロジェクターは、平均レベルが高い。昨年のミドルクラスと拮抗する実力を持ち合わせながら、10万円前後のコストダウンを果たした製品ばかりだ。
各ジャンルの映像を視聴して分かったこと
部屋を明るくしない、それよりも映画などの質の高い映像を存分に楽しみたいという人には、ソニー「VPL-HW10」が有力候補となる。ほかの3モデルがエプソン製の透過型液晶パネルを使用しているのに対し、ソニーは独自の反射型液晶、SXRDパネルを採用している。こちらはメッシュ感のほとんどないなめらかな映像や、2ミリ秒以下という高速応答速度による動画ボケの少なさなどさまざまな利点があるものの、デバイス自体が高価であるため、従来は低価格機に採用することはまずできなかった。それがエントリークラスのVPL-HW10に搭載されたのだ。とくに中間調の微妙な表現が得意なので、映画などのBDソフトを堪能したいという人には、うってつけのモデルとなるだろう。
一方で、黒の階調性を気にする人には、三菱電機「LVP-HC5500」も魅力的な存在だろう。旧タイプのエプソン製D6パネルを使用しながらも、独自のチューニングによって多彩な陰影表現を見せてくれる。単なる黒が黒でなく、その中にあるものをうまく描き分けているので、映像がとても立体的になるのだ。映画などの夜のシーンはもちろん、遠景でかすむ風景などもリアルに表現、自然な風景の多い映画やドラマなどでは、実力を十二分に発揮してくれる。またシリコンオプティクス製のビデオプロセッサー「Reon-VX」が搭載されており、DVDソフトの再生も良好だ。しばらくはBDよりもDVDソフトを見る機会が多いという人にも、お勧めできる。
価格も4モデルのなかで最安値となっており、単純に値段の安さで購入しても、充分満足のできる製品だろう。ただ、上位モデル「VP-HC7000」の実勢価格が早くも30万円前後にまで下がっており、こちらも選択肢の中に入ってくる。
最後に使い勝手の面に触れると、三洋電機「LP-Z700」がさすがというべきだろう。初心者であっても充分使いこなせるメニューを持ち、デフォルトの設定が絶妙。用意されているモードでも充分フルHD映像を堪能できるようになっている。そのあたりは省スペース/ユーザビリティーの高さで好評を博してきた、「Zシリーズ」の最新モデルにふさわしい内容といえる。
これに対して三菱電機のLVP-HC5500は、初心者には少々ハードルの高いメニュー内容。そのぶん、微細なコントロールができる点は嬉しいが、もう少しエントリーユーザーが取っつきやすい工夫をしてくれても良かったと思う。こちらは今後の改善に期待したい。
なお、上記のエプソン「EH-TW3000」とソニー「VPL-HW10」の使い勝手に関しては、どちらも悪くない印象だった。設定項目が多く、メニュー体系も独自であるため最初は少々戸惑うかもしれないが、すぐ慣れることができるだろう。
最後に、よく見るソフトのジャンル別にお勧めの機種を紹介しつつ、それぞれの特徴を簡単な表で記載しておこう。今回の視聴では映画「300」「ラストサムライ」「50回目のファーストキス」や、ライブ「アンジェラアキ My Keys 2006 in 武道館」、アニメ「秒速5センチメートル」「マクロスフロンティア」などのBDソフトに加えて、「Dr.コトー診療所2004」「のだめカンタービレ」などのBSデジタル放送、「F1グランプリ最終戦」などの地上デジタル放送でも視聴を行っている。それらを見た感想はこうなった。
エプソン「EH-TW3000」
基本的にオールラウンダーだが「アンジェラアキ My Keys 2006 in 武道館」「秒速5センチメートル」などライティングの強弱が激しいものは圧倒的な魅力を持つ。とくに「秒速5センチメートル」は光に力を感じるくらいだった。
明るさ | 暗(−−−−○)明 |
---|---|
黒浮き | 有(−○−−−)無 |
色合い | 単調(−−○−−)豊か |
階調(ブラックアウト) | 少(−−○−−)豊か |
階調(ホワイトアウト) | 少(−○−−−)豊か |
ソニー「VPL-HW10」
人肌や淡い風景など、中間色の表現には絶大なアドバンテージを誇る。「ラストサムライ」では背景の微妙な色合いが、「50回目のファーストキス」では肌色健康的な肌色の発色が好印象。「F1グランプリ最終戦」「マクロスフロンティア」のどちらの動画ボケなく楽しめた。
明るさ | 暗(−○−−−)明 |
---|---|
黒浮き | 有(−−○−−)無 |
色合い | 単調(−−○−−)豊か |
階調(ブラックアウト) | 少(−−○−−)豊か |
階調(ホワイトアウト) | 少(−−○−−)豊か |
三洋電機「LP-Z700」
コントラストのはっきりしたメリハリのある画面なのでさまざまな映像がすっきり見やすくなっている。どんな映像でもあまり得意不得意なく無難にまとめ上げてくれるのが特徴。
明るさ | 暗(−−−○−)明 |
---|---|
黒浮き | 有(−−○−−)無 |
色合い | 単調(−○−−−)豊か |
階調(ブラックアウト) | 少(−○−−−)豊か |
階調(ホワイトアウト) | 少(○−−−−)豊か |
三菱電機「LVP-HC5500」
「300」「ラストサムライ」など影を効果的に使っている映画では奥行き感がてきめんに良くなる。「Dr.コトー診療所2004」のオープニングでかすむ遠景がリアルに感じられたのはこちらのみ。絶対的な明るさはなく黒浮きも結構あるが、表現力に大きな影響を与えていないチューニングのうまさが光る。
明るさ | 暗(−○−−−)明 |
---|---|
黒浮き | 有(○−−−−)無 |
色合い | 単調(−−−○−)豊か |
階調(ブラックアウト) | 少(−−−○−)豊か |
階調(ホワイトアウト) | 少(−○−−−)豊か |
いずれにしろ、4モデルともに価格以上の魅力がある製品であることは確かだ。実際に量販店などで映像をチェックして、自分にとっての1台を選び出し、有意義なホームシアターライフをスタートしてほしい。
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