第22回 細部にまでこだわった、遊べる国語辞典──「デジタル大辞泉2009i」:松村太郎のiPhone生活:レファレンス
「デジタル大辞泉2009i」は、前回紹介した「大辞林」と同じ国語辞典だが、作り手が違うためユーザーインタフェースのアプローチが大きく異なる。大辞泉は細部へのこだわりとクロスワードパズルが面白い。さすがに両方買うと結構な値段になるが、どちらも持っていて損はないアプリと言える。
今回紹介するアプリは「デジタル大辞泉2009i」。AppStoreで2000円で販売されている。先日ご紹介した「大辞林」と同様の国語辞典アプリで、小学館の「大辞泉 増補新装版」がベースとなっている。7560円の辞書が2000円で購入できる点だけでもとてもお買い得だが、このアプリのポテンシャルはそれだけにとどまらない。
デジタル大辞泉の使い勝手はとてもシンプルだ。辞書メニューは検索としおりの2つだけ。大辞林のような見出し語のインデックスはない。もちろんインクリメンタルサーチが活用できるので、言葉をすべて入力する前にリストから選ぶこともできる。
検索して出てきた言葉が前後に付いたり、類語がある場合は、画面の右下にタブが表示される。それをタッチすると関連語一覧のパレットが現れる。もちろんその中から言葉を選んで意味を調べることも可能だ。また検索中に「+」ボタンを押せばその項目がしおりに追加され、「しおり」をタッチすればいつでもその言葉にアクセスできるようになる。
よくよく見ると、とても凝ったインタフェースデザインを行っていることに気づく。まず画面上部の、和紙にあるようなテクスチャーを持ったほどよい赤みのタイトル部分。一般的なアプリは、ここは青いグラデーションになっているが、国語辞典っぽい重厚な面持ちを見せている。さらに、項目のリストを区切る線。これも実線ではなく、ややかすれている線になっている。
このアプリを開発したのは、以前本連載で紹介した「Orb Clock」の開発元、HMDTだ。HMDTの代表取締役 木下誠氏は、デジタル大辞泉 2009i開発のポイントをこう語った。
「日本っぽい漢字と高級感のあるデザインを実現するため、SDKの機能を上書きして作っています。またフォントは既存のものに加えて、100文字程度をビットマップで作りました。例えば魚のアラ(魚偏に荒)や藤子不二雄A(○の中にA)などです」(木下氏)
さらに22万語の検索が1秒でできるというスピードへのこだわり、部分一致検索への対応、表記揺れへの対応など、辞書検索アプリとしての性能を押さえつつ、オリジナルのインタフェースの美しさに磨きをかけた。
辞書画面でiPhoneを横長に構えると、2ペインで左に検索見出し、右に言葉の内容を表示するモードに切り替わる。キーボードも大きくなり、さらに使い勝手が向上する。HMDTらしいアプリデザインによって、日常使いたい辞書とiPhoneの相性を高めているのだ。
デジタル大辞泉アプリにはもう1つ魅力がある。それは「ゲーム」だ。
「せっかく日本語の辞書があるのだから、日本語で遊ばなければならない、と思いました。難読漢字では、読みが難しい漢字とその意味が出題されて、その読み方を答えます。もし分からない場合は、そのまま辞書検索して読み方を学ぶことができます。またクロスワードパズルは、辞書の項目からその都度クロスワードを自動生成しますので、何度でも遊ぶことができます」(木下氏)
確かに国語辞典は、日本語の言葉をほぼ網羅するデータベースだ。これを活用したクイズをその場で作り出して遊べるようにする、というのは“目から鱗”だった。内蔵ゲームで利用するカタカナ専用のキーボードも自家製なんじゃないだろうか。
国語辞典を調べるだけでなく、遊びながら学ぶ機能まで持たせることに成功したデジタル大辞泉2009i。年間2回のデータ更新まで行われ、それ以降の最新版を利用したい場合は、次年度版を改めて購入する仕組み。電車の中での時間つぶしで、日本語力までアップさせてしまうなんて、いかがだろうか?
プロフィール:松村太郎
東京、渋谷に生まれ、現在も東京で生活をしているジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ(クラブ、MC)。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。1997年頃より、コンピュータがある生活、ネットワーク、メディアなどを含む情報技術に興味を持つ。これらを研究するため、慶應義塾大学環境情報学部卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。大学・大学院時代から通じて、小檜山賢二研究室にて、ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性について追求している。
関連記事
- ITmedia App Town
- 「松村太郎のiPhone生活」バックナンバー
- 第14回 時を告げるiPhoneに覚える興奮──「Orb Clock」
今回は「Orb Clock」をご紹介したい。App Storeから230円でダウンロード可能だ。このアプリは、名前のとおり時計のアプリ。時計というとどうしても実際に存在する針刺しのアナログ時計や数字で表示するデジタル時計をイメージするし、数あるiPhoneの時計アプリもそれに準ずるのだが、このOrb Clockは違う。 - 第21回 美しい文字で日本語空間を再発見する──「大辞林」
紙の辞書をめくるのと似た感覚で、iPhone/iPod touch上で日本語の空間を自在に飛び回ることができるアプリ、それが物書堂の「大辞林」だ。三省堂の「スーパー大辞林3.0」をベースにした辞典だが、iPhoneアプリならではの楽しさを持った、“わくわくする”辞典だ。 - 第20回 iPhoneのカメラがミラクルを起こす──「ToyCamera」
銀塩カメラの世界では、何とも不思議な写真が撮れる「トイカメラ」が人気だ。iPhoneアプリ「ToyCamera」では、そのトイカメラで撮れるような写真がiPhoneのカメラで撮影できる。 - 第19回 Flickrモブログユーザー御用達──「Flickup」
オンラインフォトコミュニティ「Flickr」を活用しているiPhoneユーザーにお勧めしたいのが、アップロード用アプリ「Flickup」だ。シンプルなユーザーインタフェースで、その場で撮影した写真や写真アルバム内の写真をFlickrの自分のアカウントにアップロードで - 第18回 結婚式で奏でた愛から生まれたアプリ──「FingerPiano」
FingerPianoは、数ある楽器系アプリの中でも人気の高いアプリの1つ。内蔵の70曲は、画面のガイド表示に合わせて鍵盤をタッチするだけで演奏でき、初心者でも簡単にピアノが弾ける。もしもピアノが弾けたなら、と思った方はぜひ入手してほしい。 - 第17回 身の回りを“クリスマス”にしてくれる顔認識カメラ──「クリスマスカメラ1」
写真を撮るだけでクリスマスパーティーに出席できる──。そんな楽しいアプリがパンカクの「クリスマスカメラ1」。人物の写真を撮ると顔を認識して、クリスマスっぽい雰囲気に仕立ててくれる。 - 第16回 とにかくハマったサイコロポーカー──「MotionX Poker」
iPhone上でサイコロを転がしてポーカーの役をそろえるという、単純ながら奥が深いゲームを楽しめるのが「MotionX Poker」だ。第2世代iPod touchのテレビCMにも出てくるこのゲーム、やり始めると止まらなくなるくらい楽しい。 - 第15回 サンフランシスコを沸かせたさすらいDJ──「iPJ-Lite」
iPJ-Liteは、iPhoneを1台のターンテーブルに変えてしまう音楽アプリ。価格は600円だ。MacやPCから無線LANでiTunesの曲を取り込んだりもできる。複数のiPhoneやiPod touchを使えばもっと楽しい。 - 第13回 いつでもどこでもWikipedia──「Wikiamo」
今回のご紹介は「Wikiamo」。App Storeから無料でダウンロードできる。名前から推測できるとおり、Wikipediaビューワーであり、僕のiPhone生活の中でも稼働率の高いアプリの1つだ。そのお気に入りの理由を、作者インタビューとともにご紹介しよう。 - 第12回 To Doからプロジェクト管理まで──「OmniFocus」
今回ご紹介するアプリは「OmniFocus」。To Doからプロジェクトの管理までを多彩にこなせる高性能アプリだ。その分、アプリとしては割高で、AppStore価格は2300円。しかし価格分の役割を発揮してくれるアプリである。このアプリを買った理由は、iPhoneのタスク管理機能への疑問からだった。 - 第11回 公衆無線LANスポットを乗りこなせ──「Easy Wi-Fi」
今回のご紹介は「Easy Wi-Fi」。このアプリは、ウェブブラウザで認証作業が必要な公衆無線LANサービスの認証作業を1ボタンで済ませてくれる、無線LANのヘビーユーザーにとってはのどから手が出るほど欲しいアプリである。
関連リンク
- App Storeで「デジタル大辞泉2009i」をダウンロードする(リンクをクリックするとiTunesが起動します)
- 小学館iPhoneアプリ
- HMDT
- TAROSITE.NET
- taromatsumura.net
- ソフトバンクオンラインショップで「iPhone 3G」を購入する
- ソフトバンクオンラインショップ
- +D Shoppingでケータイの価格を調べる
- 製品最安値比較サイト:ITmedia +D Shopping
- ソフトウェアのライセンスはまとめ買いがお得:LICENSE ONLINE
- ソフトウェアダウンロード販売サービス:+D Download
- 製品を選ぶ、調べる、比較する:ITmedia 製品NAVI
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.