2009年の薄型テレビ、2010年の薄型テレビ(前編):本田雅一のTV Style
前編では今年のテレビのトレンドを振り返り、後編で来年に向けて期待される新しい技術やトレンドについて話を進めたい。2009年を振り返ると、もっとも躍進したメーカーは日立製作所だったと思う。
最後は今年を振り返ってのコラムを2回で、という編集部からのリクエストがあったので、まずは簡単に今年のテレビのトレンドを振り返り、後編では来年に向けて期待される新しい技術やトレンドについて話を進めることにしたい。
メーカー別に見ると、今年もっとも躍進したのは日立製作所だったと思う。”シェアに反映されていないじゃないか”と思う方もいるだろうが、まったくその通りで、全機種HDD内蔵で録画機能のある今年のWoooシリーズは、価格がやや高めだ。しかし、ここ数年で改善が進んでいた画質が「インテリジェントオート高画質」を引っさげて大幅に進歩し、トップクラスの品位になった。液晶テレビはコントラスト比こそ低いものの絵作りの巧みさを感じさせるようになっていた中、パナソニック製PDPの採用にともなってプラズマテレビの画質が飛躍的に良くなったのは、もともとPDPによって認知が拡がったWoooブランドにとっては皮肉なことだ。
シェアが高かろうと低かろうと、まずは製品が良くなることが重要だ。今ではわが世の春を謳歌(おうか)している東芝のREGZAシリーズも、かつては画質もデザインも悪く、鳴かず飛ばずでまったく売れなかった時期があったが、根本的に製品の質を改善し、見事に急上昇したことがある。
日立は画質改善とともに、東芝とは別のアプローチからの自動画質調整機能を実装し、業界内のひとつのベンチマークにもなったといえる。色温度センサーを用い、多様な環境でメーカーが意図した雰囲気の絵を見せるコンセプトの自動画質調整機能は、その後シャープも開発している。その調整結果は両者で異なるものだが、1つの方向性を確立したといえる。
年末に登場した東芝「Cell REGZA」もおおいに話題を振りまいた。Cellレグザにはさまざまな面があるが、何より話題性に富んだ機種だったことが大きい。テレビで芸能人がCell REGZAについて語り合ったり、ブログでも多数取り上げられるなど、その画質、機能、価格のすべてが話題になった。余談だが、くだんのテレビ番組で1人以外は話していることがオカシイため、関係者に尋ねてみたところ、その1人以外に実物を見せたことがなかったそうだ。つまり単なる話のネタでしかなかったのだが、言い換えるならゴールデンタイムの地上波放送で場を持たせるぐらいの話題性をCell REGZAが生み出していたともいえる。
今後、同様の超高機能・高性能テレビが登場するかどうかは、今の経済情勢を見ている限りまったく分からない。ただ、高価と言われつつも話題を振りまき、販売も予想以上に好調と聞くCell REGZAの例は、今後のテレビ市場の二極化を予感させる。Cell REGZAが話題になった一方で、一般的な録画機能などを持たないシンプルなテレビは、予想よりも大きく値を下げた。今や、42V型クラスでさえ、10万円台半ばにまで実質的な価格が下がってきている。廉価版ならばさらに安い。
ここまで価格が下がって来ると、少しばかりの機能を付加しても、価格差以上の差を消費者に感じさせることが難しくなるかもしれない。そろそろ価格は下げ止まると思うが、一方で来年以降は価格重視の製品と、価格差を意識させない美点(画質だけでなく、画質と機能、使いやすさなど複合的な長所)を持つテレビに二極化すると筆者はみている。
価格重視といっても、ひたすらに安物を目指すというわけではない。そろそろ価格は底を打ちつつある。低価格化の速度は落ちるだろうが、低価格製品ながら従来の上位モデルに近いデザインや質感を持った(”ローエンド”ではなく)“バリューモデル”が市場の中心になっていくだろう。
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