音楽シーンを変える、B&W「800 Diamond」の衝撃:麻倉怜士のデジタル閻魔帳(2/2 ページ)
英Bowers&Wilkinsの「800 Diamond」シリーズが発表された。先代800シリーズに比べても「圧倒的」に良くなったという800 Diamondシリーズについて、AV評論家・麻倉怜士氏が熱く語る。
804 Diamond
804 Diamondは、エレガントなフロアスタンディング型スピーカー。165ミリロハセル・コーンウーファーと150ミリのウォーブン・ケプラー・コーンFSTミッドレンジを搭載した3Wayタイプ。価格は54万6000円(ローズナット/チェリー)、57万7500円(ピアノ・ブラック)
麻倉氏: 次に804 Diamondです。試聴では「804S」の現行モデルを先に聞きましたが、その前に聞いた805 Diamondのほうが、今となっては良かったですね。前のシリーズの上位モデルより、新シリーズの下位モデルのほうが上。確かに804Sは、3Wayでウーファーも持っているので低域まで伸びますが、そこがもたつき音の質感やスピード感はかなわないというくらいの差があります。
804 Diamondはといえば、805 Diamondに比べると質の良い低域の量感が加わり、ニュアンスの再現性や剛性感も高く、さまざまに音楽を彩るボキャブラリーが増えたという印象ですね。ジュピターでは、冒頭のトゥッテイの音で楽器の構成が瞬時に分かるようになりました。これも前作に比べて圧倒的に良くなっていると言えるでしょう。
802 Diamond
802 Diamondは、ダイヤモンドツィーターに200ミリ径ウーファー2という構成。800の球形ヘッド設計を継承したスタジオサイズのスピーカー。価格は100万8000円(ローズナット/チェリー)、105万円(ピアノ・ブラック)
麻倉氏: 802 Dの従来機は、スケール感やバランス感、音楽の聴きやすさを大事にしたモデルでしたが、今回はビビッドな性格を取り込みました。Jennifer Warnesの「ウェル」では、冒頭のギター演奏で、こんなに多彩な基音、倍音がこのCDに入っていたのかと驚かされました。
キャラクターとしては、ボーカルは音を明確に、くっきりと前に出し、低域は自然で丁寧。円滑でしっかりとしています。低域の雄大さは802 Diamondの美質でしょう。
高域では、ドラムのスネアも真に迫ってくる印象です。音像はくっきりしていて、まるで眼前にボーカルが見えてくるようなイメージ。全体としての統一感も上等です。
ジュピターでは、階調性が素晴らしかったですね。とくに第4楽章のフーガは悠然としていて、低域も充実しています。同じ曲を聴いて、スピーカーによって音楽の意味合いも違ってきます。このスピーカーでは、各フーガの構造が分析的に見えてくる。音楽的な感動も伴い、とても幸せな気分になれますね。
800 Diamond
800 Diamondはシリーズ最高級のスピーカー。旧800は世界中のレコーディングスタジオでも使用されている。ダイヤモンド・ツィーター、150ミリのミッドレンジ、250ミリのウーファーを2基搭載した3Way4スピーカーだ。価格は178万5000円(ローズナット/チェリー)、189万円(ピアノ・ブラック)
麻倉氏: 最後は800 Diamondです。従来機は質感が非常に良く、オーケストラのスケール感もたっぷりと出ていて、素晴らしいスピーカーでしたが、800 DiamondはB&Wならではの質感に加えて、情報性と解像感が増しました。とくに中高域の情報量が増えたのは、まさにダイヤモンドツィーターの力。もともと持っていた低域のパワーに対して中高域をバランスさせるための解答がダイヤモンドツィーターというわけです。
800はもともとダイヤモンドツィーターを搭載していましたが、今回は解像力がもっとも違います。細部にまで力があり、繊細で研ぎ澄まされた音です。ボーカルの立体感や、音の1つ1つに豊かな表情を感じます。ここまでの情報量が出るのかと驚かされました。
ジュピターでは、素晴らしいスコアリングが目前に見えてくるような再現性です。低域から高域までビビッドな生命力を感じます。
改めてシリーズ全体を見渡しますと、中でも800 Diamondが最も良かったのは当然ですが、単純に良いだけではなくて、音楽家の気持ち……例えばモーツァルトの気持ちが分かるようなグレードアップがなされています。しかし、やはり801がないのは残念です。ダイヤモンドツィーターと38センチウーファーの組み合わせが難しいのは分かりますが、ネオジウムなら可能なはず。今後はそれも期待したいですね。
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