お値打ちAVアンプ、ヤマハ「RX-V2067」で聴く「インセプション」の重低音:山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.55(2/2 ページ)
2010年はAVアンプも豊作年で、秋から暮れにかけて各社から発売されたAVアンプには、傑作・力作が数多い。中でも10万円台の中級機でもっとも出来が良かったのがヤマハの「RX-V2067」である。
例えば、ドルビーTrue HD収録の最高傑作作品と思えるBD「9<ナイン> 9番目の奇妙な人形」をシネマDSP3Dの『Drama』モードで観ると、各チャンネルの音が見事に繋がり、人類滅亡後の廃墟を走り回る人形たちの声に生命力が付与され、その存在感が格段に増すのである。とくに大画面スクリーンを用いた本格AVシステムを実践されている方はぜひこのシネマDSP3D再生を試していただきたいと思う。スケールの大きな音場表現と大画面とのマッチングのすばらしさに誰もが納得するに違いない。
ネットワークオーディオ機能にも注目
もう1つ、ぜひ注目していただきたいのが、本機ならではの先進的なネットワークオーディオ機能。本機はLAN(イーサネット)入力を備えており、ネットワーク上にあるPCやNASに収められたデジタルファイルを再生する機能を有している。オーディオマニアに人気の同社製ネットワークプレーヤー「NP-S2000」(19万9000円)と同じ音声処理基板が採用されており、非圧縮のWAV、ロスレス圧縮のFLACともに96kHz/24ビットのハイレゾファイルに対応している点も見逃せない。
最近ではCDフォーマットを超えるハイビット・ハイサンプリングの音楽ファイルが簡単にインターネットを介して入手できるようになったが、本機でHQMストアから供給される「カメラータトウキョウ」(クラシック音楽を中心とする日本のインディペンデント・レーベル)の音源をいくつか聴いてみたが、響きのキメの細かい安定感のある音が聴け、新世代AVアンプのもう1つの魅力を発見した思いがした。
AVアンプは、一方で音と映像を集中制御する司令塔としての役割を担う。さまざまなビデオ機器がつながれることを考えると、AVアンプに搭載された映像回路の性能にも注目しなければならないが、本機に搭載された映像信号処理LSI「HQV」のi/p変換やスケーリングの高性能ぶりは定評のあるところ。DVDプレーヤーのアナログ・コンポーネント出力(480/60i)を本機で1080/60pにアップコンバートしてHDMI出力した映像をプロジェクターで110インチ・スクリーンに映し出してみたが、DVD プレーヤーから480/60iコンポーネント出力した画質よりも明らかによかった。ノイズがかなり抑えられるし、字幕で目立つギザギザが消えるのだ。DVDを観るときなどにぜひ活用してほしいと思う。
さて、最近の映画BD ROMに収録されたロスレス・コーデックのサラウンドサウンドの音の凄さにうなってしまうことが多いが、本機で観たDTS HDマスターオーディオ5.1ch収録のBD ROM「インセプション」が実にすばらしかった。人間の潜在意識をテーマに、複雑な入れ子状態となった夢の世界を鮮やかに描ききったクリストファー・ノーラン監督(「ダークナイト」など)の最新作だが、その夢の世界をいまだかつて見たことのない衝撃的な映像と重低音の効果を生かした音響設計で構築していく。とくに夢世界に形成された街の風景が歪んでいくシーンの本機の音の衝撃力のすさまじさには、誰もが息をのむことだろう。精緻に織り上げられたサウンドデザインの妙を見事に解像し、人間存在の危うさ、はかなさを浮き彫りにしていくRX-V2067。最新高性能AVアンプで映画を観る醍醐味(だいごみ)をしばし満喫したのだった。
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