密閉型とは思えない豊かな拡がりを満喫、AKG「K550」:野村ケンジのぶらんにゅ〜AV Review(2/2 ページ)
今回は、つい先日発表されたばかりのAKG「K550」をとり上げよう。新開発50ミリドライバーを採用した密閉型ヘッドフォン。「秋のヘッドフォン祭り」以来、気になっている人も多いのでは?
ホームユースならではの使い勝手の良さ
本製品は“K”型番が与えられながらも、スタジオモニターシリーズとは多少趣が異なり、あくまでもホームユースを主眼に据えた“リファレンス”ヘッドフォンとなっている。確かに、密閉型1モデル展開でオープンエアーがないこと、ブラックを基調とし金属パーツを要所要所で採用するデザインなどは、質実剛健なプロユースと明らかに趣が異なる。ただし、もともとのKシリーズ自身がスタジオ用としては規格外にしゃれたデザインとなっているため、キャラクター性に違和感はない。逆にAKGらしさという点では、かなり色濃い製品だといえるだろう。
装着感に関しては、Q701ほどの軽快感はないにしろ、重量バランスが巧みなのか、あまり重さは感じさせない。逆に、低反発ウレタンフォームを採用するイヤーパッドのおかげか、両脇からの押さえつけ感はQ701よりも弱く、こちらのほうが自然な印象だ。これだったら長時間の使用も苦にならないはずだ。ちなみに、イヤーバット部は90度回転するので、コンパクトタイプのようにブリーフケースなどにも収納することもできる。こういった心遣いはうれしいかぎりだ。
一方、3メートルの長さがチョイスされたケーブルは、片方出しながらも直出しタイプとなる。Q701で着脱式が採用されていたため、今後はこちらが主流になるのかとも思ったが、どうやらそうではないらしい。とくに不満は覚えるほどではないが、せっかくなのだから共通化して、アフターのケーブルなどに交換するなど、ユーザーの好みの長さに変更できると良いと思う。
AKGらしい空間表現の巧みさ
かなりソリッドで、キレのよいサウンド。ピアノのタッチは力強く、ドラムも跳ねるようなアタックがとてもリズミカル。低音は充分なボリューム感を持つものの、芯のしっかりした堅めのサウンドなので、中域がクリアなうえ、演奏のグルーブ感も高い。ヴォーカルはサ行の擦過音がわずかに目立つものの、はきはきしているうえ、フォルテッシモな歌い上げなどではかなり印象度が増してくれるのが好印象。ジャズやハードロックを“熱く”聴きたい人にはかなり向いていそうだ。
それでいて、AKGらしい空間表現の巧みさも持ち合わせており、密閉型とは思えない自然で広めの音場がさらなる魅力を与えている。例えると、耳の両脇30センチあたりにスピーカーを置いているイメージ。さすがにQ701同等の自然な拡がりや密度感を求めるのは形式的にも価格的にも酷だが、すぐそばで本物が演奏しているかと見紛うくらいリアルな音色や、グルーブ感の高いリズミカルな音楽表現は、さすがAKGというべきだろう。“リファレンス”という肩書きがふさわしい、そしてAKGファンの期待を裏切らない、確かな製品だ。
| 音質評価 | |
|---|---|
| 解像度感 | (粗い−−○−−きめ細かい) |
| 空間表現 | (ナロー−−−−○ワイド) |
| 帯域バランス | (低域強調−−○−−フラット) |
| 音色傾向 | (迫力重視−○−−−質感重視) |
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