ノミネートする部門で明暗が分かれる?――ブルーレイ大賞の舞台裏(後編):麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/4 ページ)
2月15日に発表された「第4回 DEGジャパン・アワード/ブルーレイ大賞」。後編では部門別の傾向と受賞作について、審査委員長を務めたAV評論家・麻倉怜士氏に詳しく解説してもらおう。
麻倉氏:さて「ベスト高音質賞・映像部門」を獲得したソニー・ピクチャーズの「バーレスク」は、2011年の映画作品の中ではピカイチといえる高音質です。斜陽のホールを1人の女性歌手が立て直すというサクセスストーリーで、ライブの音声が非常に素晴らしい。審査員の中に、某メーカーのAVアンプ設計者がいるのですが、「アンビエントの表現、つまりガヤ(周囲の音)がとてもリアリティーを持っている」とコメントしていました。ヴォーカルのみならず、ホールの空間を感じさせる音が映像と一体になってバーレスクの世界を作り上げているのです。映画は、映像と音声の両方の力を使って見る人に感動を与えるものだと再確認しました。リアチャンネルの情報もとても多いです。
――次にベスト高音質賞の音楽部門です。NHKエンタープライスが4年連続の受賞となりました
麻倉氏:「佐渡裕 指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 武満徹:フロム・ミー・フローズ・ホワット・ユー・コール・タイム ショスタコーヴィチ:交響曲第5番」です。96kHz/24ビットの音は抜群でしたが、過去のNHKエンタープライズ作品の水準からいうと、少しビハインドしているかもしれません。これまでのベルリン・フィル作品は、その場にいるようなライブ感が特長でしたが、今回はショー的な作りで、佐藤裕さんにフィーチャーしたカメラワークでした。まるでテレビの生中継をそのままパッケージ化したような印象。NHKのテレビ放送を見ているような気がしたので、これまでの作品のほうがさらにすごかったと思います。やはりカメラワークの違いですね。それでも4年連続でNHKエンタープライズが受賞しています。来年はほかのメーカーもがんばってほしいと思いますね。
ベスト高音質賞の受賞は逃しましたが、審査員特別賞に入った「ヴェルディ:歌劇《椿姫》英国ロイヤル・オペラ 2009」(日本コロムビア)は、画期的な作品です。これまでにもオペラ作品は多数リリースされていますが、日本語字幕が入った初めての日本向け作品。オペラは内容も芸術ですから、舞台進行の機微が分からないと楽しめません。しかもステージ上の深く美しい歌声だけではなく、オーケストラの音の繊細な残響感も的確に捉えた音響でした。
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