ハイレゾ対応ポータブルという選択肢、iBasso「HDP-R10」と iriver「AK100」を聴く:一度使うと戻れない(1/2 ページ)
ポータブルオーディオの世界も、いよいよハイレゾ時代。今年登場したiBasso「HDP-R10」とiriver「AK100」の2機種を長時間試用できたので、それぞれの特長と音質傾向を紹介していこう。
ポータブルオーディオの世界も、いよいよハイレゾ時代に突入した。というのは、この秋にかけ、いくつものハイレゾ対応プレーヤーが誕生するからだ。そのうちの2製品を入手、長時間にわたって使い続けることができたので、それぞれの特長とともに使い勝手や音質傾向も含めたレビューをお届けしよう。
左からiriver「AK100」、iPod touch、iBasso「HDP-R10」。AK100は10月27日発売予定で直販価格は5万4800円。一方のHDP-R10は、パーツの製造と供給に遅延が発生して出荷を停止中(最短で11月に出荷再開とアナウンスされている)。ただ、10月中旬時点で一部ショップ在庫も確認されている
“何でもござれ”、iBasso Audio&ヒビノの「HDP-R10」
iBasso Audioとヒビノインターサウンドのコラボレーションによって誕生した「HDP-R10」は、OSにAndroid2.3.1を搭載する、いわゆるAndroid端末だが、音質にこだわったハードウェアや独自のプレーヤーソフトを搭載することで、ハイレゾ音源対応プレーヤーにふさわしい高音質を実現した。
なかでも最大の特長といえるのが、専用アプリ「HDプレーヤー」によって実現した、対応ファイル形式の幅広さだ。一般的なMP3やAAC、WMAなどはもちろん、FLACやWAV、AIFFなどは192kHz/24bitに対応。さらにApple Lossless Audio(ALAC)や、リニアPCM変換ながらDSD(DSF)再生にも対応する。おおよそ、今ある音楽ファイル形式は再生が可能な、“何でもござれ”のプレーヤーに仕上がっているのだ。ファイル形式を気にすることなく何でも再生できるのは、それだけでも大きなメリットだ。それだけでも、HDP-R10の価値は大きいといえる。
もちろん、ハイレゾ音源対応“高級”プレーヤーならではの、音質に対するこだわりも随所に見られる。例えば音質のキモとなるDACには、ハードウェアこだわり派に絶大な人気を誇るカナダESS Technology製の「SABRE32 Reference audio DAC ES9018」を搭載。プロセッサーからDACへの信号伝達には精密さに定評を持つI2S接続を採用している。加えて、オペアンプにはTexas Instrumentsの超高級モデル「OPA627」、4800mAhの大容量を確保したバッテリーには音質的に評判のよいリチウムポリマーバッテリーを搭載するなど、細部に至るまで徹底的な音質向上が推し進められている。
ハイスペックを誇る高級モデルということもあってか、ポータブルプレーヤーとしてはかなり大柄な部類に入る。イマドキのスマートフォンを、3センチ近い厚みにしたイメージじで、なんとかポケットに収まるぎりぎりのサイズだ。とはいえ、プレーヤーと単体ポータブルヘッドフォンアンプの“2段重ね”を実践している人にとっては、それほど違和感はないだろう。
操作感については、可もなく不可もなくといったレベル。3.7型タッチパネルは感圧式のようで、スピーディーな操作を行うには多少の慣れが必要だが、違和感があったり、扱いにくいということはない。それよりも、デジタルフィルターのタイプがチョイスできたり、イコライザーやアップサンプリングが用意されているなど、充実した音質機能がうれしい。“高級”という冠をつけるにふさわしい、充実した機能性を持つモデルだ。
そのサウンドは、とてつもなく細やかで、かつ柔らかな音色がフワッと広がっていくイメージ。解像度感がとてつもなく高く、加えて帯域過渡特性も素晴らしく優秀なため、音の響きがとてつもなく美しいのだ。それでいて、音のキレや表現のダイナミックさも格段のレベルを確保しているのだから恐れ入る。ここまで音楽の心地よさを堪能させてくれるのポータブルプレーヤーは、初めてだ。
しかも、高解像度&高S/Nのため、MP3などの圧縮ファイル形式でリッピングした楽曲は、音の過疎感や高域側への伸びの不足感などが、如実に感じられてしまうから恐れ入る。それらの曲は、もう一度リッピングをやり直すことになりそうだ。
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