ハイレゾの夜明け、もうマニアだけのものじゃない(後編):麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/2 ページ)
前回に続き、10月の「オーディオ&ホームシアター展 2013」を中心にハイレゾで盛り上がる最新のオーディオ動向を聞いていこう。また、麻倉氏が個人的に気になった新製品もピックアップ。
――ほかにオーディオ関連の動向でトピックはありますか?
麻倉氏: ハイエンドのオーディオ製品が注目されていることも挙げておきたいと思います。「オーディオ&ホームシアター展2013」の最終日、“音のサロン”で「価格帯別コンポの魅力を探る」というコーナーがありました。国内専業オーディオメーカーの製品を組み合わせ、システム総額別にいくつかのコースを設けて同じ楽曲を聴き比べるという催しで、今年で3回目になります。
昨年までは「20万円コース」から「150万円コース」までを設定していたのですが、今年は一気に価格帯が上がり、「80万円コース」から「700万円コース」まで用意されました。「700万円コース」は、エソテリックのCDトランスポート(P-02)とD/Aコンバーター(D-02)、アキュフェーズのプリアンプとパワーアンプ(C-2820、A-65)、そしてスピーカーはB&W(802SD)でした。ここまでくると、もう購入を前提とした聴き比べというより、「あこがれのシステムを体験してみたい」というノリですね。
聴き比べでは、CDを6枚聴きますが、そのうち3枚は各コース共通の、いわば規定曲。「80万円コース」と「700万円コース」で聴き比べると、本当に驚くほどの違いがありました。CDにここまでの低音が入っていたのか、そして倍音の肉付きなどが大きく違い、来場した皆さんも驚いた様子でした。
もちろん700万円コースの製品は、誰もが入手できるものではありません。しかし、CDでも、まだまだ音を引き出す余地があることが分かったことは大きな収穫です。あの音に、いかに手持ちのシステムを近づけるかと試行錯誤するのもオーディオの楽しみの1つ。日曜日の最後の講演でしたが、音楽のある人生の喜びを感じることのできた時間でした。
――最後に展示会場で気になった製品を紹介してください
麻倉氏: 2つあります。1つめはヒビノブースに展示されていたクロックジェネレーター「MC-3+」です。ドイツのプロオーディオブランド「MUTEC」の製品で、各国の放送局などで使われています。
高精度のクロックジェネレーターというとルビジウムが有名ですが、どの製品も非常に高価です。MC-3+はルビジウムではありませんが、販売価格が12万円と手頃で、クロック精度は0.1ppm以下。その性能にはプロオーディオの分野で定評があります。個人的に使ってみたいと思いました。
もう1つは、パナソニックのハイレゾ対応ミニコンポの限定版「SC-PMX9LTD」です。これは以前も紹介しましたが、ベースモデルの「SC-PMX9」が登場したとき、パナソニックに頼まれて試聴したのです。そのとき、試しに視聴室にあった高級ケーブルに交換してみたところ、途端に音が良くなりました。
SC-PMX9は、Technics時代からのエンジニアが独自の技術とノウハウを投入して作ったものです。潜在能力は高いのに、おそらくコストのかけにくい外装やケーブル類が不十分で実力を発揮できていなかったのでしょう。ケーブルを変えた途端、まるで閉じ込められていた生命力が堰(せき)を切って飛び出したかのように、音がイキイキとあふれ出しました。
そこでパナソニックの担当者に、「ケーブルを変えたら良くなるよ」とアドバイスしたのですが、それでピピッときたんでしょうね。さっそく限定版が登場しました。
今回はパナソニック純正アクセサリーの4種類がセットになる限定版ですが(+本体色を黒に変更している)、例えばオヤイデやクリプトンのようなアクセサリーメーカーが、SC-PMX9用のアップグレードキットを出すといった提案もあると面白いですね。ベースモデルが低価格なので、いろいろと楽しめると思います。
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