ハイレゾ・5chサラウンド“弦楽五重奏”のバッハ「The Art of Fugue ― フーガの技法」はこうして生まれた:9chサラウンドも視野に(1/2 ページ)
6月4日からダウンロード発売されるUNAMASレーベルのハイレゾ・サラウンド「The Art of Fugue」。その舞台裏と、こだわりのポイントについて制作者に聞いた。
四季に続くクラシック・シリーズ第2弾
6月4日、ミック沢口氏(沢口音楽工房代表)の「UNAMAS」レーベルから、「The Art of Fugue ― フーガの技法」(UNAHQ2007)が「e-onkyo music」と「HQM Store」でダウンロード販売される。2015年に生誕330年を迎えるバッハの有名曲で、2014年6月に同レーベルから発売されて人気を博した「The Four Seasons」(UNAHQ2005)に続く「クラシック・シリーズ」の第2弾となる。
前作の四季は、192kHz/24bitのステレオおよび5chのハイレゾ・サラウンドでの提供だけでなく、土屋洋一氏(正しくは、土に、)によるサラウンド・アレンジされた弦楽四重奏でアンサンブルパートを録音し、さらに春夏秋冬のソロパートをオーバーダビングでミックスするという、クラシックでは珍しい手法を取り入れて話題を集めた(参照記事:四季をアレンジしてオーバーダブ、ハイレゾ・サラウンド最新作「The Four Seasons」の舞台裏)。
今回も、ハイレゾ・サラウンドによる軽井沢大賀ホールでの収録、その根幹となるMADIシステムの構築にシンタックスジャパンが協力しているのは共通するが、何が新しくなり、何にこだわったのか。
ミック沢口氏とスコア・アレンジを担当した土屋洋一氏、そして演奏者「UNAMAS FUGUE QUINTET」のメンバーである田尻順氏と竹田詩織氏に話を聞いた。
前作で恐る恐る使ったデジタル・マイクをメインで採用
制作コンセプトは明快だ。
以前からミック沢口氏は、「全てサラウンドがいいというわけではないが、ステレオよりもサラウンドがふさわしい楽曲は間違いなくある。サラウンドの方が、作曲者やアーティストの意図をより正確に表現できると考えるからだ」と述べている。このフーガの技法も、各旋律の分離感とハーモニーの一体感が特徴であり、サラウンドでの表現が適していると判断。同時に、バッハの作風である低域を重視して弦楽四重奏にコントラバスを加え、それをフロント・センターに配置するというサラウンド・サウンドを目指した。
特筆すべきは、より没入感のあるサラウンドを獲得すべくAuro-3Dによる収録を実施したことだ。具体的にはステージ上に三つのレイヤーを設け、トップレイヤー(マイクの高さは約3.8メートル)に三研マイクロホン「CO-100K」を4本、それより低いミドルレイヤーにSCHOEPS「MK4」を4本、そしてメインレイヤー(各楽器)にノイマンのデジタル・マイク「KM 133D」(計5本)を使っている。
前作の四季では「恐る恐る部分的に使っていた」(ミック沢口氏)というデジタル・マイクをメインで採用し、マイクケーブルには高い品質で定評のあるアコースティックリバイブ製で統一。ミック沢口氏は、デジタルマイクの採用について「弦楽器の素早い立ち上がり、高い解像度もしっかりとキャッチできている。2014年の収録に使ったマイクと比べても弦の伸びやかさが違う」と自信を見せる。
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