ポタフェスは「音版コミケ」? そして気になる今後――「ポタフェス Limited」ロングインタビュー(後編)(4/4 ページ)
後編では「ポータブルオーディオフェスティバル(ポタフェス)2015 Limited」のイベント全体を振り返ってもらった。さらに来年以降の全国ツアー構想、そして年末に過去最大規模になることが見込まれている東京の「ポタフェス」についても聞いた。
岡田氏:正直言って、1日1万人増はかなりハードルが高いですよ。目標達成のために、例えば大阪で好評だった「サイレントライブ」を会場の入口側でやるとか、例えば毎度おなじみのヘッドフォンオブジェを、40機種くらい特性エミュレートしてボタン1つで切り替えができるようにするとか。
松田氏:Ultimate Earsの「IEMエミュレーター」のような感じですね。
岡田氏:たまたま通りかかった人や知らない人にご来場いただけるようにアピールします。音の違いを体験していただくことを大切にしたいです。
――音の違いって実際に体験してみないと分かりませんし、体験すると驚くほど面白いですからね。
岡田氏:気軽にご来場いただけるという点では、飲食分野も力を入れる予定です。昨年、松屋さんとULTRASONEさんがコラボレートした「ウルトラ丼」はとても好評で、初日は午前中に完売、2日目も午後には完売したんですよ。今年は更にパワーアップして、コラボ丼もラインアップを増やしますよ。
――僕はこの手のイベントの時、いつも昼食を忘れてブース巡りをするんですけれど、そこまで力を入れているのなら今年は丼を食べてみようかなという気にさせられますね。
岡田氏:もう1つ重点的に取り組む予定なのが、海外からのお客様への対応です。昨年は来場者の2〜3割が海外からのお客様だったんですよ。
松田氏:2階入り口で開催しているスタンプラリーの抽選にも、何人かお見えになっていましたね。
岡田氏:お店を見ていても感じますが、平日でも海外からの方は多いですね。そういった方たちにもご満足いただけるように、海外発信にも力を入れる予定です。
松田氏:昨年は「このためにわざわざジョージア州から来た。次に東京でやるときはメールくれ。それに合わせて来日するから」という米国からのお客さんもいらっしゃいましたよ。
――海外ビジターの方がそんなにいらっしゃったとは驚きです。彼等に何か共通の特徴はありますか?
岡田氏:海外の方にはオーディオテクニカやソニーなどの日本ブランドが人気のようです。
松田氏:確かにオーテクはよく聞かれるな。
岡田氏:加えて自国のブランドを買いたがる傾向も見られます。
松田氏:先の海外のお客さんは、わざわざ海を越えて日本まで来て、なんとUltimate Earsを買っていかれたんですよ。「日本で売っている」自国のものを買うことが人気らしいですね。
――日本の厳しい選定基準に対する信頼でもあるんでしょうかね。来場地域、国籍別の傾向はどうでしょう?
岡田氏:地域的にはやはりアジア系の方が多いですね。
松田氏:でもフランスやスペイン系の、ヨーロッパからの方もお見えになりますよ。これだけ多国籍なので今回で業界最大規模となれば、次は「日本から海外へ発信する」という点が見えてきます。
――そうなると、どうしても気になるのが中野で開催される「ヘッドフォン祭り」の存在ですよね。
岡田氏:あちらは新製品発表会の色合いが強い気がします。個人的には色々とやりたいと思っているんですけれど、ちょっとここの事情は複雑で……。
――例えばファッションの世界では「パリコレ」が世界のファッショントレンドを牽引していますよね。でもあのランウェイでは着て外に出るのがはばかられるような“尖ったもの”も多かったりします。対して日本には「東京ガールズコレクション」というランウェイがあって、こちらでは「リアルクローズ」と呼ばれる「街のおしゃれな普段着」が主体です。中野との差別化で言うと、カリカリのハイエンドだけではなくて、比較的お手軽で、でも音が良いとかいう「普段使い」の用途を押し出したりすると面白いなとか、今思いました。
岡田氏:そういう切り口も、確かにアリですね。
――あと、イベントの運営側から見た全国キャラバンの報告スペースがあるとおもしろいですね。「この地域ではこんなのが支持されました」といったことをズラリと並べ、それを実際に試聴できるようにしたり。
松田氏:Webも地方版にしたいな。
岡田氏:それは自分も見てみたい!
――こういった身近な視点はすごくeイヤホンらしいと思うんですよ。「音遊びをするならこんなのもアリだよね」っていうセレクトです。「最先端ゾーン」「ハイエンドゾーン」「普段使いゾーン」みたいに、音のテーマパークという色を出していくと分かりやすくて面白いですよ。いろんなメーカーの展示機がごちゃ混ぜになるから展示が大変だと思いますが……。
松田氏:でもそれは、普段からいろんなメーカーのいろんなモデルをズラリと並べているマルチベンダーの「ウチだからこそできる」ことですよね。そういうことにはチャレンジしていきたいです。
岡田氏:e☆イヤホンは「全部あります、好きなのを聞いて行ってください」っていうスタンスのお店で、そこを曲げずにずっとやってきました。今のポタフェスはe☆イヤホンと同じことを超拡大してやっているんですよ。「同じことをしていても意味ないよね」とは常に思っているんですけれど、どうすればポータブルオーディオを盛り上げられるのかという答えは未だに見つかっていませんからね。ライブもそうですけれど、どうなっていくのかは運営している自分でも正直分からないです。
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