オリジナリティーあふれる直角三角形のスピーカー、ピエガ「AP-1.2」:潮晴男の「旬感オーディオ」(2/2 ページ)
ワン・アンド・オンリーのリボン型ユニットを開発し、アルミのエンクロージャーを積極的に活用するピエガ。そのピエガが発売した三角形のコンパクトスピーカー「AP-1.2」は、実はレストランの“まかない飯”のようなスピーカーだった。
そんな訳で試聴にあたってはブラケットを跳ね上げた状態でスピーカーをセットした。使ったCDはRumer(ルーマー)の最新アルバム「B SIDES & RARITIES」(ビーサイズ・アンド・レアリティーズ)から1曲目の「ARTHUR’S THEME」(アーサーのテーマ)である。バート・バカラックも絶賛したという苦節10年の遅咲きシンガーだが、それだけに歌もうまいしレコーディング環境にも恵まれたようだ。
彼女の出自は少しばかり変わっていて、パキスタンで生まれたイギリス人ということもこうした優しい歌い方につながっているのだろうか。「アーサーのテーマ」はクリストファー・クロスの名曲をカバーしたものだが、彼女らしい落ち着きのあるサウンドに仕上げられている。
そしてAP-1.2は彼女の声の表情を豊かにそして丁寧な彩で描き出す。派手さはないが心にじんと染み入る、そんな音を聴くことができた。もっとも斜めに仰角が付けられているので、ニアフィールドではなくある程度距離を置く場合は正立させたほうがよいかもしれない。
ウーファーにはこのモデルのために開発した13cm口径の新型ユニットが採用され、ツイーターにはリボン型の「LDR 2642 MKII」が使われている。そしてここでもう1つ、付け加えておきたいのは、「リボン型のツイーターは耐入力と能率が低く、周波数レンジも狭い」という従来の概念をピエガのユニットはすべて覆してしまったことである。LDR 2642 MKIIは厚さ0.02mmの極薄アルミ箔の振動板を26×42mmのサイズで使っているが、その質量はドームツイーターの1/30以下。いかにストレスがなくスムーズに動くことができるのか、この数値だけ見てもお分かりいただけることだろう。さらに磁気回路にネオジウム磁石を用いて100dB以上の能率を実現していることも活躍の場を広げる要素になっている。
置き方で随分と音の印象が変わってくるので、その点は気を付けてほしいが、それさえ守れば質感と品位のあるサウンドをこのモデルは奏でてくれる。またスピーカーのユニットを保護するためにネット状のカバーが前面に取り付けられている。無理やり外すことはないが、エンクロージャーの周囲に彫られた溝に埋め込まれているだけなので、音の抜けをもう少し改善したいと感じたら、周辺を爪で起こして外してみてもいいだろう。耐入力もこのクラスのモデルとしては申し分のないスペックなので、ニアフィールドでもサラウンド用でも、いずれその期待に応えてくれるスピーカーである。
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