最小出費で楽しむ最大のボケ表現――ソニー「FE 50mm F1.8」:交換レンズ百景
明るい単焦点レンズが欲しい! キット付属の標準ズームを購入したビギナーでも、しばらくすると単焦点熱が湧きあがってくる。そんな人に最適な1本、ソニーEマウントの単焦点エントリーレンズを試してみよう。
暗所での手持ちにも有利な開放値F1.8
このところ魅力的な製品を次々とリリースしているソニーのフルサイズ用Eマウントレンズ。ただその多くは10万円を超え、趣味レンズとしては手ごろとはいえない。高根の花である。そんなふうに感じていた人に、心強い味方ともいうべきモデルが登場。ソニーストアの実売価格で3万500円(税別)の標準レンズ「FE 50mm F1.8(SEL50F18F)」である。
フルサイズ用Eマウントの標準単焦点といえば、2013年に発売された「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」(実売価格9万円前後)がすでにある。それに比べると、FE 50mm F1.8は外装の高級感で少々見劣りするが、より求めやすい価格と、より小型軽量であることが大きなメリットになっている。
1枚目の写真は、夕方のブルーアワーを狙って、金属製のベルを手持ちで撮影したもの。絞りは開放値のF1.8を選択。鮮やかな青の中に外灯がスムーズなボケとして表現され、日没直後のしっとりとした雰囲気が感じられる写真となった。口径食の影響は、フルサイズ用の50ミリレンズとして標準的なレベルだ。
次も同じく、絞り開放値で撮影。背面モニターのチルト機構を利用してローポジションを選択することで、手前の地面を前ボケとして写し込み、画面に奥行きを与えた。さらに、ここではカメラ内の周辺減光補正機能をあえてオフにして四隅を暗く落とし、被写体の存在感をいっそう高めている。画質的には色収差が多少見られるが、開放値ながら合焦部分の解像は十分といえる。
F1.8という開放値のほどよい明るさは、ボケ表現だけでなく、暗所撮影にも有利になる。次のカットは、水族館のエイをISO400で撮影。笑顔のように見える口や鼻、エラまでをくっきりと再現できた。
肉眼に近い自然な画角で風景を切り取る
レンズの外装は主に樹脂素材で、マウント部分には金属を採用。デザイン的には非常にシンプルで、凝った意匠やスイッチ類は特にない。外形寸法は、最大径68.6×長さ59.5mm。フィルター径は49mm。質量は186g。同社製フルサイズのEマントレンズでは、「Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZA」に次いで二番目に軽く、持ち運びの負担はほとんど感じない。
鏡胴部には、幅の広いフォーカスリングを装備。張られたラバーの手触りはよく、マニュアルフォーカスの操作感は悪くない。AFについては超高速とはいえないが、風景やスナップ撮影では問題のない程度の速度で作動する。AF作動中は、ジージーというDCモーターの駆動音が小さく鳴る。このあたりは、リニアモーターを採用した上位製品とは異なり、割り切りが必要だろう。
個人的には、こうしたAFの速度や作動音に大きな不満はないものの、ほかに惜しいと思える点が1つある。あまり寄れないことだ。最短の撮影距離は45センチで、最大撮影倍率は0.14倍。フルサイズ対応の50ミリレンズでは標準的なスペックではあるが、最新レンズの撮影倍率としては物足りない。植物などに接近して撮る際、本当はもっと近寄りたい……、と感じるシーンが何回かあった。
用途としては、ボケを生かしたスナップやポートレート、誇張の少ない自然な画角で切り取る風景撮影などに適している。標準ズームレンズと一緒に持ち歩くことで、本レンズの接写性能を補いつつ明るさの表現力を生かす、といった使い方も可能だ。
α7シリーズ用のフルサイズEマウントレンズには、サードパーティ製品も含め高価なレンズがずらりとラインアップされている。そのため、高画質を引き出すにはそれらの高級品が必須だと考えがちだが、実は低価格レンズでもフルサイズで撮る楽しさは十分に味わえる。FE 50mm F1.8は、そんなことを教えてくれるレンズである。
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