群を抜いた高画質、ソニー「Z9D」の“魅せるHDR”:山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(1/3 ページ)
液晶テレビがここまでの性能を獲得する日が来るとは。自発光タイプ派の筆者は信じられない思いがする。それがソニー「Z9D」シリーズだ。
Ultra HD Blu-rayの発売や「NETFLIX」の4K配信の開始などによって、4K&HDR(ハイダイナミックレンジ)が身近になった2016年春。各社からHDR対応の4K大画面テレビが登場して話題を集めたが、とりわけ液晶タイプのパナソニック「DX950」シリーズと有機ELのLGエレクトロニクス「E6P」シリーズの画質のよさに筆者は大きな感銘を受けた。
HDRコンテンツでもっとも重要なコントラスト表現においては、リビングルーム照明下ではDX950シリーズ、完全暗室ではE6Pシリーズが群を抜いてすばらしかったが、この秋、この両シリーズの画質をはるかにしのぐと思える超高級4Kテレビが登場する。
それがソニー「Z9D」シリーズだ。試作機を何度かチェックする機会を得たが、観るたびにそのハイパフォーマンスぶりに感激させられている。Z9Dシリーズこそ、この秋もっとも注目すべき4K大画面液晶テレビであると断言できる。
基本画質性能がきわめて高く、さまざまなテスト信号を入力して他社製品と比較してみたが、ユニフォミティー(画面の均一性)やホワイトバランス、階調表現、SN比(ノイズの少なさ)など群を抜いてすばらしいのである。
APL(平均輝度レベル)を大きく変動させても、ホワイトバランスが常に安定していて、美しいフェストーンが維持されることにとりわけ驚かされる。階調表現のなめらかさこそ後塵を拝するが、「マスターモニター並みの基本性能を持った大型テレビ」といってもあながち間違いではないだろう。
液晶テレビがここまでの性能を獲得する日が来るとは、自発光タイプ派の筆者は信じられない思いがする。他社の液晶大型テレビに比べて良好とはいえ、視野角の狭さは依然課題として残るが、もはや高画質テレビを選ぶ際に自発光かどうかを気にする必要もないと実感させられる完成度なのである。
Z9Dシリーズは65V型、75V型、100V型という3サイズの大型展開。受注生産の100V型は値段も700万円と破格だが、65V型は約70万円、75V型は約100万円と、同サイズの他社製品とじゅうぶん戦える値段設定になっている。
Z9Dの高画質を実現した主な技術要素は大きく2つある。「Backlight Master Drive」(バックライト・マスタードライブ)と画像処理エンジン「X1 Extreme」だ。
バックライト・マスタードライブとは、表示パネル背面に高密度実装されたLEDを1つ1つ個別に制御する画期的な技術。従来の直下型バックライトのローカルディミング(部分減光)は、いくつかのLED をグループ分けしてエリア駆動していたわけだが、本シリーズではLED1つ1つの明るさを個別にコントロールしているわけである。
ソニー製テレビのローカルディミングの効かせ方の巧さは以前から定評があるが、バックライト・マスタードライブという新手法を得て、そのコントラスト制御の完成度は、他社が太刀打ちできないところまで到達したように思える。漆黒の見せ方、精妙な階調表現、ローカルディミングの余剰電流を生かした白の“突き上げ”など、まさに脱帽するほかない見事さだ。
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