「これはね、道路においてあったコーン! 使わなくなったコーンを切ってね、ブスッとさして、こういうことになってるの」
――えー! すごい!
交通安全のために作り始めた人形は、地域の人たちにも愛され、周りから作ってほしいと希望されるようになった。こんなにも地域貢献しているDIYアーティストは珍しいのではないだろうかと思う。
「しかもね、この丸いのはソーラーでね、夜に勝手に光るようになっているの」
「これもね。ぴかぴかーっと全部光る。きれいだよぉ」
よく見ると、交通人形達には至るところにソーラーのライトが備え付けられている。あいにく拝見することはできなかったが、ここで繰り広げられるエレクトリカルパレードは、おそらく平戸の夜を美しく派手に彩るのであろう。
――本当に素晴らしい。今まで見たこともないような。不思議なものばかりで。
「まあ〜趣味で、趣味が高じてね。廃品のリサイクルだよ」
ガンガンガン!! 金山さんがけたたましい音を立ててたたくと、それは風を受けてくるくると表情を変えた。
不思議な庭を見回しながら、案内されるがまま金山さんの後ろに続く。
――失礼ですが、今おいくつですか?
「今? 70すぎてるよ」
――造園のお仕事とか、工作のお仕事をされているんですか?
「いえいえ、仕事じゃないで。仕事何もしとらんからね、趣味で作っとる」
――もともとは何の仕事をされていたんですか?
「私はね、釣りの餌とかを売る釣具店をしてたの。その合間にね、ちょちょっとつくってたの」
――いつから作り始めたんですか?
「こういう外に置いてるのはね、10年前から作ってるけどね」
「この金魚ももう10歳になるね。これ、渡ってくるための橋を作ったんだけど。10年くらいたって、古臭くなってしまったけどね」
金山さんの世界観の作品は、ダイナミックで突っ切っているものばかりだ。しかし、ただはちゃめちゃなものだけではなかったのだ。
「昔からね、何かしら作るのが好きだったからね」
「これも作ったんだけどね。釣りに行って、倒れてた松を切ってね。もう20何年になるね」
そう言って見せていただいたのは、立派な大黒様の彫刻像だった。
「木を掘って、なかに脂があるからさ。それが20年30年たつとね、こんな風にツヤがでるのさぁ」
「昔は“こけし”をば作りよったからね。このこけしっていうのはさぁ、日本に何処もないんだわ」
そう言って見せてくれたこけしは、首元に木の輪が引っ掛かっている。
「これ、一本の木を回転させながら作るんよ」
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