コクヨは11月6日、座面を動かして“座りながら運動できる”椅子「ing」(イング)を発表した。バランスボールのような座り心地で、揺れながら仕事することで体と脳が活性化するという。価格は8万8000円(税別)からで、11月7日に発売する。
座面下に搭載した2層構造の「グライディング・メカ」で、座りながら自然に体を動かせるという。メカの上は前後に、下は左右に動く仕組みで、前傾・後傾、左右や斜めのひねりなどの微細な動きにも対応する。開発リーダーであるコクヨの木下洋二郎さん(ファニチャー事業本部)は「これまでの椅子は体を支えるためにあった。しかしingは違う。座る椅子から乗る椅子になった」と話し、馬や自転車、サーフィン、安定したバランスボールに乗っているような感覚が持てるとしている。体を揺らしながらデスクワークすることで、体と脳の活性化を目指す。
また、グライディングにより(1)正しい姿勢を維持し、背骨のS字形状を自然に保つ、(2)体圧を分散し、体への負担を軽減する、(3)あらゆる体格や体重にフィットさせる――などの効果が見込めるとしている。
「日本人の座りすぎ問題」解決へ
動く椅子開発の背景には、「座りすぎる」日本のオフィス環境への課題がある。「日本人成人の平日の総座位時間の中央値は1日7時間で、世界主要7カ国との比較で最も長い」「長時間の着座で健康リスクは高まる」――などの調査結果があり、同じ姿勢を取り続けることは、脳の不活性や心身への負担を招くとして問題視されているという。
海外のIT企業などでは、立ったまま作業や会議が行える環境作りが進められているが、コクヨは「座るという行為に真正面から向き合いたかった」とし、座りながら体を動かすことを提案した。
ingを使って20代の男女10人に実験したところ、ingに座ることで8割の人の肩の筋肉が、5割の人の腰の筋肉が活動したことを確認。また、40代の男性5人にingに座って揺れながらデスクワークをしてもらった結果、4時間で1.5キロのウオーキングに相当する運動効果(30分の測定を4時間に換算)が得られたという。
さらに、20人を対象に60分間揺れながら読書をしてもらったところ、7割の人のα波(リラックスした状態)が増加、6割の人のβ波(能動的・活発で集中した状態)が増加したとしている。京都大学大学院教育学研究科の教授から技術指導を受け50人に創造性テスト(AUT)を実施した際は、創造的で有用なアイデアの発想数が13%上がったという結果が出た。
コクヨは3年かけてingを開発。「人の体は動くためにできている。体を動かすことで脳を活性化できれば」(黒田英邦社長)と話す。
(太田智美)
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