マルチプラットフォームのモバイル開発言語「ル・クローン」日本はソフトウェアで弱いと陰口を叩かれているが,実は業務用では世界をあっと言わせるようなソフトがある。
今回紹介するのはソア・システムズ(東京・渋谷区)が開発,販売を行っている「ル・クローン」という開発言語だ。同じコード(ソースファイル)でWindows 95/98/NT/2000,ザウルス,Windows CE用の実行アプリケーションが作れる。今回は,ソア・システムズの営業統括本部,松木康幸氏に開発コンセプトや導入例などをインタビューした。 ル・クローンの特徴についてル・クローンは,VisualBasicライクなRADツールで,過去に何らかの開発言語を使ったことがあれば,すぐにアプリが書けるレベルの開発言語である。 松木氏「この製品は,標準で高速な「VSAM」タイプの索引付きデータベースを搭載しています。基幹業務で,多くのユーザーに使われています」 DB向けのアプリを作る場合には,ほとんどコードを書く必要がないのが特徴だ。ちなみにVBには「データフォームウィザード」が搭載されているが,あれに匹敵する機能に近い。もう少し分かりやすく言えば,帳票処理,伝票処理といったDBを元にするアプリを作る場合に,VBなどのBASICやDelphi(Pascal)と同等の簡単なコード記述で,高度なDBを操作できる。 松木氏「IT時代にも対応できるように,ザウルスやCE機とサーバ上のDBの連携ができる豊富な機能を用意しています」 サーバにはLinuxなどのUNIX用のツールがある。PDA側では,標準でLAN接続,PHS/PDC(DoPa含む)接続,赤外線接続,シリアル接続などを簡単に制御することができる。最も簡単なコード例を挙げると,以下のようになる。 FTPでファイルをダウンロードする FTPGET(<URL:IPアドレス>, <ユーザID>, <パスワード>, <サーバ上のパス・ファイル名>, <保存するパス・ファイル名>) このようにDOSのコマンドラインとも思えるような簡単な記述でFTPが機能してしまう。元々DOS用の開発言語に源流があるということで,記述が簡単なのもうなずける。 つまり,ル・クローンはビジュアル言語(GUIを簡単に作れる言語)であり,BASICに似た(より簡単な)文法で,今までの開発言語が成し得なかった高い互換性を持つマルチプラットフォームの言語である。 松木氏「開発版(言語)が3500,導入アプリの数で4万5000人のユーザーが,すでにモバイルの世界だけで活用しています」(ル・クローンモバイルは開発350,実行環境7000)
モバイル向けアプリのトレンドとは松木氏「ル・クローンで作ったアプリの典型的な導入事例は,バーコードを読み取って製品名などの情報をDBとやり取りするようなPOSシステムです」 市販のザウルス(MI-E1)にシリアル接続のバーコードリーダーをつなげて,値札タグから情報を読み出して加算するデモなどを見せてもらったが,とにかく速い。2万件の情報からデータを検索するような仕事も,本の1ページをめくるくらいのスピードだ。 普通のPDAで2万件の住所録を検索することを考えてみて欲しい。そのような仕事もル・クローン製アプリなら超高速なのだ。下手なプログラマがC言語で書くより速いだろう。 松木氏「モバイルに求められるのはスピードと安定性です。また,ル・クローンはソース互換性が高いので,一度開発したアプリを時代の変化に応じて修正したりほかのプラットフォームに乗せ換えるのが簡単です。例えば外勤ではPDAで行っている作業を,オフィスではPCで同様に行えます。さらに,税率や金融利率が変わった時に生じるアプリの修正もソースが1つなので工数が少なく,言語が簡単なので自社で修正・カスタマイズすることもできます」 モバイル向けアプリ開発の難しさは,限られたメモリやバッテリ動作からくる速度限界などの制限のなかで,いかに高速なアプリを作るかということになる。その点ではル・クローン製アプリは,完成までも素早く,動作も素早いという2つのメリットを持っている。 なぜPalm向けがないのか?モバイル向けとして,ザウルスとWindows CEの2つがターゲットになっているわけだが,Palm用がなぜないのだろうか? 松木氏「Palm向けも検討しましたが,業務用アプリに求められるスペック,たとえばデータの保護のような機能の面で,今のところは見送っています」 世界市場に比べて,日本で(特に業務用PDAで)Palmが苦戦している背景には,ソア・システムズのような優秀な業務用アプリを作る企業へのPalm側のアプローチが足りないからかもしれない。 松木氏「実はシャープ製(ザウルス)以外にも,国産のPDAのいくつかにル・クローンのDBが搭載されたコンシューマーモデルが存在します」 業務端末では,すでに数多くの搭載実績を持つル・クローン。日本は世界でも最先端のPDA大国だと筆者は考えているが,ル・クローンが日本のPDAを陰で支えていたと言っても過言ではあるまい。 今後のPDAを考える場合,単なる住所録やスケジューラーは,携帯電話に組み込まれてしまうことが重要なキーになるはず。つまり,単に住所録が素早いとか,フリーのアプリがたくさんあるというレベルは日本の携帯電話でできてしまう。ということは,PDAに求められる機能やスペックは,このようなDB操作やプラットフォームを越えた操作性なのかもしれない。 しかも,ル・クローンはNTTドコモがモバイル用アプリの開発言語として認定している。今後,見逃せないツールだ。ただ,フリーウェアやシェアウェア向けのライセンスが整備されていないので,作成したソフトがVisualBasicのような扱いにはならないのが残念だ。 ・ル・クローンMobile4.1(Windows CE&ザウルス開発用)の仕様
・フリーウェア版:ル・クローンMobile2.0F ・期間限定版 [渡辺健一,ITmedia] Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved. モバイルショップ
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