「普及のポイントは携帯電話への搭載だ」Bluetoothはこうなる−−専門家5人が徹底討論 !!(3/4)

【国内記事】 2001年2月26日更新

Bluetoothはドコモ次第

山科 Bluetoothが家電まで搭載されるまでに,どれくらい時間がかかるのか? 値段の問題やアプリケーションの問題,要は使い安さの問題もあります。PCだけであればSCSIでは,なぜいけないのかという問題が必ず出てきますね。

 ケーブリングは大変だという理由だけでBluetoothに置き換わるのか,それともSCSIの枯れた技術の安さと安定性をとるのか,微妙な問題と前から考えていました。


「Bluetoothになればバラ色の世界が待っているのか」イー・リサーチの小野氏
小野 普及するから量産効果が出て安くなる場合と,安くなるから普及する場合と,駆け引きになることが多いですよね。

中川 要はブレイクポイントがどこにあるのかということが,みなさんが見極めたがっているところですよね。そういう意味では,先ほどいいましたNTTドコモさんが搭載してくれればというところが,数が出るだけにデバイスメーカーも安心して量産できるというところではないでしょうか。

山科 NTTドコモが搭載したとして,時に何に使うのでしょう。一方で,受信する機器は誰がつくるのか,小銭代わりに使うのはいいけども,かつて渋谷で電子マネーを実験した時,参加する店舗側は費用負担する必要から参加を嫌がっていました。

 そういうことがありますので,NTTドコモがBluetoothを携帯電話電話に搭載して,うまくいくのかなという疑問があります。

中川 僕自身は携帯電話電話よりも,AV機器の方がBluetooth搭載のメリットがあると思います。実際にAV機器の方では,Bluetooth搭載の開発を進めていますし,コネクティビティも近くなっています。

 もう1つは,車にはカーナビなどの車載機器がありますが,クルマの中でケーブルをつなぐということは難しいですので,携帯電話電話の通信機能とつなげるといったところで需要があると思います。僕としては,こういうところに市場があると考えています。

山科 そのための機器を誰がつくるのか,出来たとしても価格は高くなるでしょう。

中川 価格はシビアな問題ですね。機器自体の価格が20ドルだと,どう低く見ても最終製品の価格を単純に1万円は上乗せしなければなりません。そうすると,最終製品が1万円高くなって売れるものというと,携帯電話ではないですよね。携帯電話であれば,せいぜい2000円から3000円の範囲内に最終製品の価格が収まらないといけません。

 どう考えてもユーザーにとっては便利にならないでしょう。少なくとも,数ドルまでBluetoothの価格が下がらないと,携帯電話には搭載されないでしょう。

斎藤 キャリアの場合,価格が高くても,それに見合うキャリアの利益が得られるならば,その分キャリアが負担することは可能だといっています。NTTドコモ側も「eWallet」計画を考えているのは確かですし,Bluetoothを搭載した携帯電話でコンビニ店頭で決済するということは,技術的には可能な話です。

山科 ただ,コンビニにそういう設備を導入してペイするかということ,別問題です。

中川 ですから,NTTドコモ側が強力にプッシュしない限りは導入しないと思います。逆にいうと,NTTドコモが本格的にBluetoothを携帯電話に搭載するということがはっきりすれば,コンビニ側のオーナーは乗り遅れるリスクを考え始めます。「Bluetooth」という名前も知らない,価格も高いという現状では,コンビニのオーナーとしても二の足を踏むでしょう。

斎藤 KDDIはBluetoothを必ず入れるといっています。

中川 明確にBluetoothを入れないといっているところはないですし,あそこは失うものはないですからね。

斎藤 NTTドコモの動きで分からないのは,Bluetoothにいくのか,ICカードにいくのかはっきりしないことです。IrDA搭載の携帯電話は確実に増えています。

中川 NTTドコモは今年のIMT-2000の携帯電話にはIrDAが搭載されることになると思います。実際に,NTTドコモさんから話を聞くと,今年はIrDAという気がします。

 1つは,IMT-2000の携帯電話が非常に高いものになりますので,Bluetoothを搭載するとますます高くなります。携帯電話の価格を抑えるためにも,安いものを入れるということです。

 また,IMT-2000自体がこれからどうなるか分かりません。そこに新しいものを搭載すると,リスクが倍になるわけです。たとえ,Bluetoothがトラブルを起こしても,ユーザーにとっては,IMT-2000がトラブっていることになります。

 NTTドコモの技術者としては,そういうトラブルは避けなければいけませんし,マーケティング面でもそういうことは避けたいところでしょう。ですから,IMT-2000の最初携帯電話には,枯れた技術しか入れたくないわけです。

 そういう意味で,何もないのはつらいので,彼らが考えているのはIrDAになります。IrDAについては,ノキアが搭載するなどの実績があります。

 それにIrDAをやっていれば,後でソフトの面でBluetoothに動きやすいというメリットもあります。ですから,いままではIrDAは死んでいましたが,今年後半あたりは何らかの形でIrDAが話題になるかもしれません。それでも,必ずしもIrDAが全面的に普及するというわけではありませんが…。

IrDAの弱点,Bluetoothの強み

小野 IrDAで関連のデバイスをつくっている企業とかはあるんですか?

中川 枯れた技術ですから,やっているところはやっていますが,それが業績にプラスになるようなところはないでしょうね。

山科 強いてあげるならば,無線で高速LANをやっているところになるでしょう。赤外線で飛ばすかどうかは,分かりませんが,ローカルのところでワイヤレスローカルループをやる会社があります。コーラス,WISなどにはチャンスがあるかもしれません。

木原 Bluetoothの普及のシナリオとして,これまで有線だったものが無線に替わる。その第1世代がIrDAで,その次の第2世代がBluetoothということになるんでしょうか?

山科 それでいくと,直進性が強いので家電は絶対無理です。

斎藤 携帯電話にIrDAがあってもユーザーは,ほとんど使っていませんよね。メーカーやソフト開発者の実験的要素が強いのではないでしょうか?

中川 価格的にもIrDAを入れて損はないということで搭載している程度でしょうね。

木原 PC周辺では,先にIrDAが普及するということになるのでしょうか?

斎藤 逆に最近では,IrDAがなくなっているPCもあります。

山科  結局,IrDAというのは,1対1の通信しかできませんが,Bluetoothは7チャンネルになりますので使いやすくはなります。

 それでも普通のデスクトップPCを考えると,すぐ6チャンネルくらいは使ってしまいます。IrDAならば,インタフェースを合わせるために機器を運ぶ必要がありますが,スキャナやデジカメ,プリンタ,携帯電話を運びたくないという人がどれくらいいるのかは疑問です。

中川 今年はIrDAが流行るということはないと思います。ただ,NTTドコモとしては,これまで携帯電話にワイヤレスLANの機能はありませんでしたが,IMT-2000の出現で今年あたりからワイヤレスLANがはじまるだろうと,そして,使いたい人がいれば選択肢を用意してあげないといけないということでしょう。

 決して,今年IrDAがワイヤレスのインフラになるということではありません。

山科 ある意味でテストですよね。どういう使い方をする人が出てくるかという。

中川 そうです。やってみないと分からないけど,IrDAならばやっても損はないし,価格も安い。Bluetoothを搭載して失敗するとなると,あまりにもダメージが大きくなってしまいます。

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