凸版印刷,電子ペーパーのパーツ量産へ

凸版印刷は,米E Inkに2500万ドルの追加投資を行い提携を強化すると発表した。同社は電子ペーパーの主要構成部分である「前面板」の量産体制の確立と,日本および日系企業への販売体制の整備を行い,本格的な商用化に向けて動き出す。

【国内記事】 2002年2月4日更新

 凸版印刷は,電子ペーパーの本格的な商用化に向けて米E Inkに2500万ドルの追加投資を行ったことを発表した。同社では,2003年半ばに登場するとみられる電子ペーパーディスプレイを用いた携帯情報端末にあわせ,2002年後半に世界で初めて前面板の生産ラインを立ち上げる。最初の商用出荷は2003年春を予定,2005年には月産150万枚 (8インチ換算) を目指す。

 今回の発表では,電子ブックリーダの製品イメージとなるビューワデバイス2点も紹介された。実際に稼働するもので,紙のようなディスプレイの上に,モノクロの文字や挿し絵が現れ,数秒後に新しいデータに変わる様子を見ることができた。


提携強化にあたりがっちりと握手を交わす凸版印刷と米E Inkの首脳陣


携帯電話に付けて利用するビューワ


携帯端末型ビューワ


インクを利用しているため,紙で見ている感覚に近い


電子ペーパーを利用したICカードサンプル

電子ペーパーとは

 電子ペーパーは,「紙ともディスプレイとも棲み分ける紙の未来形」 (凸版印刷と米E Ink) 。もともとは「紙のように薄く,データの書き換えが可能なディスプレイを作りたかった」という発想のもと,5年前にMITで立ち上がったプロジェクトだ。「例えば,朝見ると朝刊の画面があり,昼頃に見ると情報が更新されている,ラジオペーパーのようなものだ」 (E Ink)

 電子ペーパーの特徴は,インクを利用しているため紙のような視認性を待っていることと,液晶ディスプレイと比較した場合の消費電力が100分の1ぐらいに抑えられること,落としても「歪まず割れない・曲げられる」などといった形状の自由度が高いことが挙げられる。

 視認性の良さは,E Inkが開発した表示原理によるもの。透明電極と背面電極の間にマイクロカプセルを配置,カプセル内部の帯電した白い酸化チタンの粒子と黒いカーボンブラックの粒子が電圧で上下に引き寄せられ,上から見たときに見える白黒のパターンを形成する「マイクロカプセル型電気泳動方式」を採用している。


E INKの表示原理

 凸版印刷が量産を開始するのは,プラスチックなどの基材にマイクロカプセルの電子インクをコーティングして作る「前面板」と呼ばれる部分。現在,0.3ミリまでの薄さを実現しているという。


第一世代,第二世代の電子ペーパーの前面板の構造

 同社の前面板を利用し,ガラスTFT基板の第一世代電子ペーパーは約0.9ミリ厚,プラスチックTFTのフレキシブル基板となる第二世代電子ペーパーでは0.5ミリ厚の薄さを目指している。

凸版印刷の描くロードマップ

 凸版印刷では電子ペーパーの特徴を活かし,見やすい表示とコンテンツ流通を組み合わせた電子ペーパー出版,電子ペーパーによるディスプレイを内蔵した高機能ICカード,野外でも視認性に優れるモバイル情報配信サービスなどを展開する予定だ。

 凸版印刷は,2002年に電子POPや電子広告の分野に,2003年にモノクロ電子ペーパーを携帯電話,PDA,電子ブックリーダなど,既存デバイスでの活用に,2004年以降はカラー化,フレキシブル化 (曲げられるなど形状に自由度を持たせる) ,動画対応などを予定しているという。

 また,電子ペーパーを使った電子出版サービス開始に向けて,「TFT背面板やドライバの開発についてはディスプレイメーカーと,筐体,ソフトの開発は電機メーカーと,配信のネットワーク作りやコンテンツについては出版社やISPと」(凸版印刷) 多数のパートナーと共同でビジネスを展開していく予定であることも明らかにした。


凸版印刷が示した電子出版のバリューチェーン例

 凸版印刷は2001年5月31日にE Inkに500万ドルを出資,資金提供と共同開発の見返りとして,電子ペーパー用カラーフィルタの独占製造権を一定期間得るという提携を行っていた (5月31日の記事参照) 。今回の発表は,この提携が商用化に向けて具体的に動き始めたことをアピールするもの。

 現段階で,名前は明かせないとしながらも,複数の電機メーカーや出版社と話を進めているという。電子ペーパーをディスプレイに使ったデバイスがどのぐらいの価格になるかは未定。

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[後藤祥子,ITmedia]

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