![]() 「今年は電子ブック元年に」――ドコモとの連携でデファクトを目指すシャープNTTドコモと電子ブック分野で協力することを表明したシャープ。「今年に入って電子ブック市場に手応えが感じられるようになってきた」と語り,仕様のオープン化でデファクトスタンダードを目指す。
3月22日,都内ホテルで開催された「国際電子書籍フォーラム」に,シャープのSST事業部谷口実所長が登壇,「e-Book」の現状と将来の展望について講演を行った。
両社でブックリーダを共同開発,出版社へのアプローチもシャープは現在,同社のザウルス用電子ブックビューワ「e-Book」をPocket PCやPalmなどのPDAに対応させる作業を進めている。NTTドコモが3月15日に発表したPDA向け電子書籍配信サービス(3月15日の記事参照)にも採用が決まっており,両社協力の上でビューワ開発を行っていく方針だ。 また,同社は電子ブックのセキュリティ技術「フットプリント」のサーバ用モジュールをドコモにライセンスする。これは,電子ブックにIDを振り,複製されて出回った場合でも履歴を追跡できるという技術で,ザウルス向けの電子ブック販売で利用されている。 さらに出版社へのアプローチなども,コンテンツの契約は別途ながら,NTTドコモと共同で行っていくという。「NTTドコモのようなビックネームが電子出版に乗り出すことで,業界全体に注目が集まる。昨年末ごろから参画する出版社も毎月2〜3社づつぐらいのペースで増え始め,手応えが感じられるようになってきた。インフラ面,デバイスのパフォーマンス面も整い始め,今年はe-Book元年になると考えている」(谷口氏)
書籍フォーマットのオープン化で出版社の参入を促進電子出版の普及が遅れている理由の1つとして,電子ブックのフォーマットがビューワやデバイス,OSごとに異なる点が挙げられる(3月14日の記事参照)。シャープもこの点を考慮し,e-Bookの電子ブックフォーマット「XMDF」をオープン化する方針だ。Windows CE,Palm OS,Pocket PC,Windowsに対応したビューワを提供するほか,プレーンテキストやHTML,PDF,QuarkXPress,BMP,T-TimeなどのデータをXMDF形式に変換するためのコンバータを用意するという。 ビューワは,それぞれの端末やOSに最適化された形での表示が可能なため,出版社は各デバイス向けに,1つのXMDFデータを用意するだけで済む。また,T-TimeのソースデータであるTTXもサポートするため,T-Time用に作成したデータの流用も可能となる。
コンバータは4月に正式リリース予定。XMDF化の作業は,出版社がコンバータを購入してデータを作成する方法と,デジブックにオーサリングを外注する方法が選べる。 ザウルス以外のPDA用ビューワは現在開発中で,NTTドコモの試験サービス開始前にはシャープスペースタウンで公開される予定だという。「現在のザウルス用ビューワの機能に加え,テロップ機能やクリッカブルマップ,パラパラ動画,サウンド再生機能などマルチメディア機能を付加したビューワを公開する。電子ブックならではのコンテンツを出版社と話しながら進めている」(谷口氏)
電子ブックマーケットの現状谷口氏によれば,ザウルスの電子ブックのダウンロード数は「シャープ調べで,1カ月あたり6000ダウンロード,毎月1000人から1200人が新規ユーザー」(谷口氏)。 この数字だけを見ると少ないように思われるが,「1999年6月の開始時には月1000ダウンロード,2000年には2500から3000,2001年以降は5000から6000」(谷口氏)というように,倍増ペースにある。 ここ1〜2年の増加は,ビューワが挿絵などの画像に対応したことや,出版社の進出によりザウルスユーザーが好むコンテンツが増えたこと,通信インフラの進化などが理由として挙げられるという。
「出版者側が企画面で競い合うという状況も出始めており,ここ1年で電子出版に本気で取り組む出版社が増えてきているように感じる」(谷口氏)
電子ブックで競合となるボイジャーも仕様のオープン化に向けて動き出すなど,電子ブック業界は市場の広がりと共にデファクトスタンダードを競う時代に入ってきたようだ。
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