Mobile:NEWS 2002年6月14日 08:01 PM 更新

パーム、XScaleテストボード上でPalm OS 5をデモ

パーム コンピューティングは6月14日、インテルのXScale/200MHzのテストボード上でPalm OS 5を走らせるデモを行った。68Kのアプリが10倍近く速くなることもあるが、OSをコールしないアプリの場合、パフォーマンスが落ちることもある

 パーム コンピューティングは、プレス向けにPalm OS 5の説明会を開催した。会場ではインテルのXScale/200MHzのテストボード上でPalm OS 5を走らせるデモを実施、パフォーマンスの向上をアピールした。

 Palm OS として初めてARMに対応するOS 5は予定より早くPDAメーカーに出荷開始され(6月10日の記事参照)、年内にはPalm OS 5ベースの製品が登場する見通しとなっている(6月12日の記事参照)。

 Palm OS 5では従来機種とのソフトウェアの互換性を重視、DragonBall 68000ベースのアプリケーションをエミュレートするPalm Application Compatibility Environment(PACE)の採用により(5月22日の記事参照)、PalmのSDKを使ったAPIのソフトであれば、「ほぼPalm OS 5上で動く」(パーム コンピューティング 矢内健治氏)という。パームは、「現在のソフトウェアの8割はPalm OS 5上で動く」としているが、Palm OSをハックして動作する「HackMaster」などのHackソフトや、プログラムのストラクチャーを直接叩くソフトは動作しないことがあるという検証結果を明らかにした。また、Palm OS 5はARMサポートとなるため、従来機種でのアップグレードなどは行えず、ARMチップ搭載の新端末のみで体験できることになる。

全体の1%のコード書き換えで40倍高速なパフォーマンスも


インテルのXScale 200MHzのテストボード。メモリは16MバイトでSDカードスロットを備える


デモの解説を行ったアルバート・チュー氏

 テストボード上で走らせたソフトウェアは、Cutting Edge Softwareの表計算ソフト「QuickSheet」とClass Actionの地球時計「Time Place」。速度の比較はパームのDragonball VZ/33MHz、Palm OS 4.0を搭載したPalmデバイス「m505」とテストボードとの間で行われた。

 QuickSheetでは、ワークシート上のデータを円グラフに変換する際の速度を比較。デモで使用されたアプリケーションは、ARMネイティブに書き換えられたものではなく68Kのコードで書かれたものだ。m505では10秒以上かかる処理がテストボード上では瞬時に行われ、ソフトウェアによっては10倍から20倍の速度で動くものもあることが紹介された。


Palm OS 5では、ワークシートを円グラフに変換するのも一瞬(画面をクリックするとムービーへ)。右はSDカードの互換性のデモと音楽再生のデモに使われたデータのアイコン

 Time Placeでは、グラフィックの再描画の速さを比較するデモが行われた。テストボード上で走らせるソフトはヘビーなグラフィックをスムーズに再描画させるため、プログラム全体の1%にあたる5行だけソースコードを変更したものを使用している。m505では3Dで表現される地球をスタイラスで動かす際にもたつきが見られるが、テストボード上ではリアルタイムな動きを見せた。プログラムに若干の変更を加えるだけでも「このソフトの場合は40倍ぐらい速くなっている」(アルバート氏)とパフォーマンスの向上をアピールした。

 また、従来デバイスとのデータ互換性も完全だといい、m505とテストボード上のPalm OS 5との赤外線によるデータの送受信や、m505に差してあるSDカードのデータをテストボードに差して、カード内のアプリを起動させる様子をデモした。「Palm OS 5搭載デバイスがリリースされた後でも互いのOSのバージョンを気にすることなくデータのやりとりを行える」(アルバート氏)。

 Palm OS 5ではサウンド機能が拡張され、WAVE形式がネイティブでサポートされる。今回新しいサウンドマネジャーから16ビットサンプリング、16チャンネルの音楽データを再生する様子も紹介された。「今後、MP3プレイヤーのような新しいタイプのアプリケーションが出てくるだろう」(アルバート氏)

 ほかにも、320×320ピクセルの解像度、ハイレゾフォントのサポートにより立体的になったアイコンや見やすくなったフォント、パーソナルなカスタマイズを可能にするスキンなどの新しいPalm OS 5の新しいインタフェースが紹介された。


Palm OS 5のインタフェース


スキンによってカスタマイズが可能に。「Nostalgia」(右)は、モノクロデバイス風だ

すべてのソフトが高速になるわけではない

 Palm OS 5でARMのパワーの恩恵を受ける68KソフトウェアはOSのルーチンをコールするタイプのアプリケーションだと矢内氏。Palm OS 5に搭載されるエミュレータPACEがコールをARMネイティブのコールに置き換えるため、高速化するという。

 しかし、「あまりOSをコールしないような、自分でCPUをがんがん使ってアルゴリズムを走らせるようなアプリケーションは、ものによってはパフォーマンスが落ちることもある」(矢内氏)。この場合には、ボトルネックになる部分をARMネイティブ化することを勧めており、パームではARMネイティブのコードを開発できるような環境を提供している。なおARMネイティブのコードは、単独のアプリとしては存在できず、68Kのアプリケーションからコールされる関数としてのみ実装可能となっている。

 パーム コンピューティングでは、Palm OS 5上でのソフトウェアのパフォーマンスをテストするツールを用意、プログラムの移植やコードの書き換えの必要性などはこのツールを使うことで分かるとしている。


Palm OS 5ブロックダイアグラム

 リリースされるPalm OS 5はARMベースのCPUへの移行に向けた第1歩であり、基本的には68K向けのアプリケーションが中心になると矢内氏は言う。ARMネイティブの開発環境は現段階では高価な上、「ARMベースのチップが得意とするゲームやマルチメディア系のアプリ以外では、68Kをエミュレートする場合とパフォーマンスの点で大きな差が出ないこともある」(矢内氏)からだ。またARMネイティブのソフトは68Kデバイスでは動かないため互換性が保たれないということもある。

 PalmデバイスのソフトウェアがARMネイティブ標準になるのはまだ先になりそうだ。

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[後藤祥子, ITmedia]

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