Mobile:NEWS 2002年6月28日 01:32 AM 更新

麻薬取引の“名所”もホットスポットに―ワイアレス化が進むニューヨーク

米国では今、都市部でのホットスポット導入が急速に進んでいる。特徴的なのは、それが市民運動の形で行われていることだ。かつては麻薬取引の“名所”として名をはせたニューヨーク・ブライアントパークにあるホットスポットを訪れてみた

 かつてニューヨークの街が荒れていた頃、ニューヨークシティ六番街沿いにある公園ブライアントパークは、市民の憩いの場としての役割よりも、日が沈んでから行われる麻薬取引場として知られていたという。鬱蒼と生い茂る樹木の陰に隠れ、道からは内部がほとんど見えず、夕方以降は顔の確認もままならない。暗くなると観光客はもちろん、地元の人たちも近づけない。そんな公園だった。

 しかし前市長のRudy Giuliani氏が推し進めた改革の中で、ブライアントパークも公園本来の機能を取り戻した。生い茂った木も適度に伐採され、明るく開放的な公園へと生まれ変わったのだ。定期的にイベントも行われ、公園に置かれたパンフレットには催事予定が数多く書き込まれている。加えてチェスやバックギャモンを楽しめるエリアも設置され、誰もが集まってゲームやその観戦で盛り上がっている。

公園の椅子をオフィスチェアに

 そんなブライアントパークが、今度は無料で無線LANによるインターネットアクセスを行える場としても利用可能になったという。次世代モバイルプロセッサのBaniasで、ワイヤレスネットワークを軸にしたマーケティング展開を広げようと考えているIntelが、ニューヨークシティの市民コミュニティが展開する無料ホットスポットサービスを支援する形でブライアントパークでの無線LANによるインターネットアクセスが実現した。

 TechXNY最終日となる27日、ブライアントパークを訪れてみると、晴天の空の下で多くの市民や観光客が公園内で行われていたFM局主催コンサートに耳を傾け、くつろぎ、昼食を取っていた。木陰に大量に用意された椅子に腰掛け、音楽の生演奏を聴きながらホットスポットからインターネットを利用するのも、なかなか良いものだ。市民の憩いの場、そしてコミュニケーションの場である公園が、新たにインターネットを通じたコミュニケーションのインフラを提供している。



明るくなったブライアントパーク――コンサートに聴き入る人たち(上)公園周辺に掲げられたホットスポットを示す垂れ幕

 ホットスポットの管理を行っているのは、New York City Wireless(http://www.nycwireless.com/)という市民団体。New York City Wirelessはマンハッタン島の人々が集まるポイントを中心に、周辺の住宅地などにも広がる草の根ホットスポットのための組織だ。

 前述したようにIntelは、この公園での無線LANインターネットアクセスを支援している。市民の間でホットスポットの概念や利便性が広がることにより、無料ホットスポットの活動を広げていくことが狙いだ。無線LANにフォーカスを当てたモバイルプロセッサとそのプラットフォームを、より付加価値の高いものにするためニューヨークシティを中心に全米へとこの動きを広げようというわけだ。

 New York City Wirelessはブライアントパーク以外にも、様々な場所でホットスポットを展開している。その多くは個人宅や店先などに置かれたアクセスポイントでまかなわれている。つまり、自宅や店で使っている無線LANとインターネットアクセスを、どうせならみんなでシェアしようというわけだ。賛同者が多くなれば、様々な場所で広範囲に無線LANの利用が可能になり、あたかもWANのように利用できる可能性もある。



ニューヨーク周辺の無料ホットスポット(上)ブライアントパークの無料アクセス入り口

 市民運動としてこうしたムーブメントを起こしていくのは容易ではない。しかし、不可能な話でもない。町中の椅子に腰掛け、おもむろにPCを開くとインターネットがいつでも利用できる。そして、そこで様々な用途や技術が開発され、いずれ商用になっていくシナリオがあってもいい。

 同じような動きはサンフランシスコやシアトル、トロント、バンクーバなど、米国とカナダの都市で始まっている。筆者はここ数カ月、サンフランシスコに訪れていないが、伝え聞いたところでは「ダウンタウンで1ブロックも歩いてみればアクセスポイントがどこかに見えるぐらい」だとか。

 次にサンフランシスコに行くときには、自動的にアクセスポイントの情報を収集するツールNetwork Stumbler(http://www.netstumbler.com)を動かしたまま歩いてみることにしよう。

市民運動主体の米国とキャリア主導の日本

 もっとも、米国でのホットスポットはほろ苦いスタートから始まっている。大々的に始まったホットスポットサービスのMobileStarなど数社が、事業の採算性を確かめる間もなく倒産してしまったのだ。

 米国での失敗事例を分析できるほど、米国の経営環境に詳しいわけではないが、急激にカバーエリアを広げすぎたこと、まだ十分にコストが下がる前に大きな投資が行われたこと、無線LANの装着率がまだ低かったこと、ITサービスに対する不信感から事業内容が評価される前に資金調達環境が悪化したことなどが挙げられるだろう。

 802.11無線LANのハードウェアは急激に価格が下がっており、PCへの装着率も「CTOで発注されるノートPCの8割近く(米富士通PC関係者)」に上るほどになってきた。スタートの時期がほんの少し違っていれば、そしてもう少し事業評価の確定までに時間を稼げれば、米国での商用ホットスポットサービスも離陸できたかもしれない。

 しかし日本では、事業としてのホットスポットが既存ISPや通信キャリアの追加サービスとして広がりつつある。米国よりも事業の開始が遅く、無線LAN設備やインターネットアクセスラインのコストが下がってから始まっており、エンドユーザーへの無線LANの普及もある程度進んだ状態で始まった日本のサービスは、実証実験から本格的な商用サービスへと移行が進行している。

 まだ未知数の部分もあるが、米国とは異なる形でホットスポットサービスが広がろうとしている点が興味深い。単に事業のタイミングの問題なのか、それとも国民性の問題なのかはわからない。しかし、どちらが正しいかではなく、それぞれに発展するものだとは思う。

 「ちょっと電源貸してもらえますか?」と声をかける感覚で、インターネットのインフラをちょこっと借用させてもらう使い方は、商用ホットスポットサービスでは得られない。一方でいつもは動いているアクセスポイントが動いていなくとも、誰にも文句は言えない。きちんとサービスの品質を保証してもらうためには、そのためのコストを自分で支払わなければならないのは当然だ。

 性格の異なる2つのホットスポットは、今後、どちらも発展していくだろう。日本ではまだ市民運動としてのホットスポットサービスはほとんど耳にしない(構想を抱いている人は数多くいるようだが)が、商店街で店先にアクセスポイントを置いてみました、なんてチラシが新聞に折り込まれるようになるかもしれない。ガソリンスタンドや高速道路のサービスエリア、公園裏に住んでいるふつうの人などがアクセスポイントを公開するようになれば楽しそうだ。これらのスポットを商用サービスがカバーするのはまだ難しい。

 また商用サービスと提携するコーヒーチェーン店に対して、無料ホットスポットを提供してくれる個人経営の喫茶店。こちらも相容れないものだと思う。

 コミュニケーションを求めて集まる場所は、日米の文化や生活環境の違いにより異なるだろうが、無線LANさえあれば人の集まるところ、どこでもインターネットが利用できるようになるはずだ。

[本田雅一, ITmedia]

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