Mobile:NEWS 2002年7月5日 00:05 AM 更新

ユビキタス時代、個の力が構造改革の原動力に〜NTTドコモの大星公二会長

N+Iの基調講演でトリを務めたNTTドコモの大星公二会長。ユビキタス社会では個人の資質が問われるようになり、それが行き詰まっている日本の不況を打破するきっかけになると語った

 7月5日、N+Iの基調講演にNTTドコモの大星公二代表取締役会長が登壇、「モバイル・ブロードバンド・ユビキタスと情報ルネッサンス」と題した講演を行った。

 大星氏は、「ユビキタス時代の到来が日本の構造改革につながる」という考えを示し、その根拠を自身の経験談を交えながら解説した。


NTTドコモの大星公二代表取締役会長

需要は作り出すもの

 大星氏は「失われた10年」といわれる日本の経済の行き詰まりは、ITによって打開できるという。e-Japan計画が本格化し、国や自治体が本腰を入れて動き出しているため、今がチャンスだという考えだ。「具体的に行政が動き出しており、そこには必ず金が出てくる。これが停滞していた日本の企業のIT導入を引っ張り、生産性の向上、新たなマーケットの創出につながる」(大星氏)。

 また「ITバブル崩壊」は、ブームに乗って闇雲に行われた投資が破綻しただけの話であり、その言葉尻に惑わされてはいけないと話す。「日本のITはまだまだこれから。米国の90年代におけるコンスタントな右肩上がりの成長の3〜4割はITが牽引したという公的機関の調査結果もある。BtoBの市場は大きく、われわれはもっと本気でがんばらなければいけない」(同氏)。

 大星氏は日本経済が新たな需要を創出できないでいることへのいらだちも隠さない。「需要は創出できる。現に私は携帯電話のマーケットを作った」。自身が10年前には需要のなかった自動車携帯電話の時代から現在の携帯電話マーケットを作り出したことに触れ、発想の転換が打開の鍵になったと語った。

 「自動車携帯電話が全く売れなかった最初の1年を経て、どうしてモバイルが売れないのかを考えたとき、黒川紀章氏(建築家)の著作である『ホモ・モーベンス』がキーワードになった」(同氏)。人の行動半径が広がって動きが大きくなってくると、時間の隙間が出てくる。そこに必要となってくるのはインフォメーションやコミュニケーションであるという論理で「それならモバイルできる電話は絶対に売れるはずだ」と確信したという。

 その後「売れるはずのものが売れない理由」をリサーチし、原因となる点を上からつぶしていったところ、「1年後に契約数が3倍に増えた。ニーズの多いものから3〜4番目までをクリアすれば、全体の8割が解決するというマーケティング理論通りだった」。

 「たとえ技術の専門家であっても、映画を見たり旅行をしたり本を読んだりといったことは大事。私も、よもや建築家の発想がビジネスに役立つとは思わなかった。知的創造性が、停滞している社会を刺激するということを心にとめてほしい」(同氏)。

ユビキタス時代には、個の資質が最大限に発揮される

 大星氏は、ブロードバンドやユビキタスネットワークの普及がネクストソサエティのキーワードになると予測する。

 モバイル機器がブロードバンドに対応することで、ムービーなどのリッチな情報もストレスなく送受信できるようになり、IPv6の普及が進めば異なるLANの間でもいちいち設定を切り替えることなくネットワークにアクセス可能になる。そして、リッチコンテンツがモバイル上で利用できるようになれば「エモーショナルなものまで伝わるようになり、情報がより豊かなものになる。よりリアルなフェース トゥ フェースに近づく」(大星氏)。

 ドコモもブロードバンド移動通信について「2010年なんてのんびりしているわけにはいかない。2007年には前倒しで6Mbpsまでやらなきゃいかんという意識で4Gの開発に取り組んでいる」(同氏)といい、早期の高速化を目指して動いているという。

 また大星氏は、情報がリアルに伝わることによって、より正しい情報が大量に送られてくるようになり、情報の非対称性がなくなっていく」と話す。ユビキタス社会では、情報の発信者と受信者が対等になり、片方が一方的に情報を送るのではなく双方向での情報のやりとりが進むという意見だ。「個人の持つ知識や情報がフラットになり、情報の共有も進むだろう」(同氏)。

 それは一部の権力者だけが情報を握っていた中世に、印刷機が発明され、情報が一般にまで行き届くようになったことで、ルネッサンスが起こった状況にも似ているという。

 「今、日本が長期構造的な不況に陥っているのは、1人ひとりが情報を積極的に出していくという世の中になってないことが原因。ユビキタス社会では、コンシューマーがプロシューマーになれる。情報の交換によるシナジー効果で新しいモノを作り上げていくなど、個々人が持っている資質が最大限に発揮される時代になる」(大星氏)。

 ユビキタス時代には、情報のピラミッドが崩れ、個の時代になるという大星氏。「個が中心になって高付加価値なイノベーションを起こすことが、日本の経済を活性化させる。食うためではなく、自ら新しいものにチャレンジして何かを作り出すことに生き甲斐を見いだすという、新しいモチベーションが出てくるのではないか。そのためのブロードバンドでありユビキタスネットワークだ」(同氏)。

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[後藤祥子, ITmedia]

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