Mobile:NEWS 2002年8月8日 03:03 PM 更新

中国への携帯ビジネス参入を阻む厚い壁

人口12億7000万という大きな中国市場への参入を目指すコンテンツプロバイダは多い。しかし、参入を果たすには、いくつかの壁を乗り越えなければならないのが現状だ

 今年後半にも2.5世代サービスが本格化するといわれる中国の携帯電話市場(8月2日の記事参照)。コンテンツビジネスの拡大が予想され、既に豊富なコンテンツやノウハウを持つ日本のコンテンツプロバイダにとってはこの上なく魅力的な市場だ。

 しかし中国市場への参入にあたっては、さまざまなハードルを乗り越えなければならないと、スリーレインボーの取締役で工学博士の鄭玉龍氏は話す。

 スリーレインボーは、日本のコンテンツプロバイダと契約することで、中国でのコンテンツ営業や監修、代金回収を代行する代理店。既に日本のコンテンツプロバイダ数社と中国展開に関する話が進んでいるという。


スリーレインボーの取締役で工学博士の鄭玉龍氏

中国のコンテンツ配信に必要な条件

 中国で携帯電話のコンテンツ配信を行うには、最低限3つの条件をクリアしなければならないと鄭氏。「中国政府からインターネットコンテンツプロバイダの免許を取得すること」「中国の企業であること」「中国の通信キャリアと契約すること」だ。

 1つめの条件であるプロバイダの免許は、中国の情報産業省に申請して取得するもの。「免許の申請に必要な条件は、配信内容及び会社体制(社員数、設備)が規定を満たしていること」(鄭氏)。申請して最終回答を得るまでにはだいたい2カ月ぐらいかかるそうだ。

 2つめの「中国の企業であること」については、中国外の企業でも、中国の企業と合弁会社を立ち上げ、外資の出資比率を25%以内に抑えれば、「内資」扱いになるので配信は行えると鄭氏は説明する。しかし、日本の企業が内資の会社を立ち上げたとしてもさらに壁が立ちはだかる。

 中国には「内資の会社は外貨を自由に扱う権利がない」という外貨管理に関する法律があるため「外資でないと海外送金ができない」のだ。つまり「日本の企業が内資企業を立ち上げてコンテンツ配信を行ったとしても、収益を日本に送金することができない」(鄭氏)ことになる。「収益を中国で再投資するなら問題はないが、そうでない場合は料金回収のルートを別に作らなければならない」(同氏)。

 コンテンツの代理店業務を行うスリーレインボーでは、中国の「留学生に対する優遇政策」でこの問題をクリアしていると鄭氏。スリーレインボーは、同社が100%出資する持ち株会社を中国に作っているが、この会社が優遇政策で「内資」として設立されているという。この持ち株会社の出資でコンテンツ開発関連の外資企業を中国に設立、コンテンツ配信は内資企業が、代金の回収は外資企業が行うという仕組みだ。

 3つめの通信キャリアとの契約は、日本と異なり勝手サイトを立ち上げる場合にも許可が必要になるという。これはコンテンツの内容を通信キャリアが把握するためだと鄭氏は説明する。「中国では言論や出版、情報配信は国が一括して管理する。日本のようにどんな情報でも配信できるというわけではない」(同氏)。

 中国には「中国移動」「連合通信」という2つの通信キャリアがあるが、いずれも公式サイトのみ課金代行を行う。日本と同じく情報料と通話料を一緒に回収する仕組みで、手数料は「代金回収不能分をプロバイダが負担しない」場合は情報料の15%、「代金回収不能分をプロバイダが負担する場合」は情報量の10%。情報料の85−90%がコンテンツプロバイダの収益になるという。

さらに待ち受けるハードル

 これらの条件をクリアしても、まだ問題は残る。それは中国の通信キャリアとコンテンツプロバイダ、端末メーカーとの関係によるものだ。

 日本ではコンテンツ配信にあたって通信キャリアが仕様を決め、端末メーカーやコンテンツプロバイダがその仕様に沿って端末やコンテンツを開発するという仕組みをとっているが、中国はその3者が「それぞれの思惑で独自に開発を進めている」(鄭氏)状況だという。今はショートメッセージ中心のコンテンツが中心のため、それほど大きな問題ではないが、今後Javaやカメラ機能などのマルチメディア機能が普及した時には混乱が起きると鄭氏は予測する。「仕様がある程度統一されていないと、コンテンツプロバイダはどの端末でどのコンテンツが正常に動作するかをすべて確認しなければならない。膨大な手間とコストがかかる」(同氏)。

 中国の通信キャリアも状況は把握しているというが、各社の利害もあり、「簡単に話し合いで決まるというものでもないのが現状」だという。

 さらに鄭氏は、中国の次世代への移行がロードマップ通りに進むかどうか未知数であることを指摘。中国移動のGPRSは昨年7月に試験が開始され、比較的早い時期に本サービスに移行する予定だったが、実際にサービスインしたのは今年の7月。「ロードマップ通りの移行を想定して投資した場合、ずれが生じる可能性もある」(鄭氏)。

 ほかにも、中国移動の場合は課金代行の契約を各省ごとに行う必要があるなど、大きな市場を制するにはそれだけの難関も多いというのが現状のようだ。

 鄭氏はそれらの難関に挑み、中国展開を進めている日本企業としてインデックスの名を挙げた。「多大な投資をして本格参入するというアプローチもあるが、試しに中国でコンテンツを配信したいという場合には、まず代理店経由で配信を行い、めどがついたところで本格参入するという手もある」(鄭氏)。

とはいえ、やはり市場の大きさは魅力

 中国の携帯電話人口は1億8000万人。2001年末時点で1億4000万人だった契約者数が年内には2億人に達すると予測されている。「月間550万人というペースで増加している」(鄭氏)。固定電話契約者が2001年で1億7000人、2002年に1億8000万人と伸びが鈍っているといい、今は固定と携帯の両方を契約しているユーザーが多いが、今後は携帯電話だけという層が増えるだろうと鄭氏は予測する。

 利用者の中心となっているのは18歳から35歳までの層で、全体の65%を占めるという。中国では端末価格が平均で3000元(約4万5000円)と高価だが、「例えば大学生は、『携帯電話がないと、卒業や就職などの情報を得られず損をする』という声もある」(同氏)といい、端末の価格が高くても必需品として購入するケースが増えているという。


中国携帯ユーザーの年齢分布。男女比は男性55%、女性45%とほぼ同等。ARPUは「中国移動の場合は125元ぐらい」(鄭氏)

 また、現在は都市部を中心に普及しているものの、既に中国全土にインフラが整備されているため、経済格差さえなくなれば地方にも普及すると鄭氏。

 12億7000万という市場は、一筋縄では参入できないものの、難関を制した者のみが大きな利益を手に入れられるという挑戦しがいのある市場であることはまちがいないだろう。

  • 中国の携帯人口

地域名携帯人口総人口
北京500万人1400万人
天津350万人960万人
上海500万人1600万人
江蘇省1000万人8600万人
広東省3000万人9100万人

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[後藤祥子, ITmedia]

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