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2002年8月9日　09:41 PM 更新

総務省、苦渋の選択

注目を集めていたMISの協議認可申請だが、総務省の最終判断は「不認可」だった。積極的なIT政策を進める同省にとって、決断は決して本意とはいえないもの。難しい判断を求められたようだ

　JR東日本の6駅に無線設備を設置するため、モバイルインターネットサービス（MIS）が協議認可を求めていた一件で、総務省は認可しないことを正式に決定した。この件では、諮問した総務省側と、諮問を受けた電気通信事業紛争処理委員会の意見が割れており、（2日の記事を参照）同省の最終判断に注目が集まっていた。

　総務省側は、認可しない理由を以下のように説明している。

1.　電気通信事業法第73条は、第1種通信事業者が、土地所有者などの意思に関わらず「強制的」に使用することを可能にする法律である

2.　このような「私権制限的な性格」を持つ法律が適用されるのは、規定の「線路」および「空中線」であることのみならず、立法の趣旨に合致している必要がある

3.　立法の趣旨は、複数の土地を横断して設置することが不可欠であった場合に、設置作業を円滑化すること。特定の土地内部にいる利用者に対してサービスを提供するケースは想定外である

　つまり、今回のケースがJR駅の構内にいるユーザーだけを対象としているため、不認可とされたわけだ。逆にいえば、「JR駅の外にいるユーザーまで電波が届けば良い？」と受け取られかねない「解釈が難しい内容」（MIS）となっている。一方で、答申の焦点とされた、「MISの無線設備は線路か否か」に関する明確な判断を避けたようにもみえる。

線路は線路

　総務省事業政策課では、「無線LANのような末端であっても、線路は線路だ。これは、一般的な線路の解釈として定着している」と話す。一般的な認識に照らし合わせれば、答申の判断には異論をはさむ余地があり、また、法解釈の上でも、いまさら「線路ではない」と規定されては、さまざまな場所で不整合が生じてしまう。

　他方で、問題はやはり電気通信事業法第73条第1項が、土地収用法の流れを汲む「強権的なもの」（総務省）であったことだという。「答申は、慎重に対応すべきという発想のもので、この点は理解できる」。

　しかし、線路の解釈など、答申が直接的な理由として挙げた部分を肯定することは難しい。そこで、「細かい部分の判断は留保する」（総務省）というスタンスに落ちついたもようだ。

　不認可の理由として挙げた「規定の線路および空中線であることのみならず、立法の趣旨に合致している必要がある」という部分は、線路の解釈は「普遍的なもの」として委員会にクギをさしながら、慎重論に対して一定の理解を示したものだった。

　「まさに孵化している無線LANサービス」を拡大し、競争を促したい総務省。これに対して、通信事業者の使用権拡大に慎重論を唱えた委員会。総務省は、報道資料の中で「答申の趣旨を尊重し、認可しないこととした」と“下線付き”で説明した。このあたり、総務省の苦しい胸の内がうかがえる。

議論は始まったばかり

　MISの認可申請は不発に終わったようにみえるが、公衆無線LANサービスをめぐる議論はこれから本番を迎える。総務省は、「今後、無線LANサービスを不特定多数の利用者が往来する公共的な空間において行うことについても、電気通信事業法第73条以下の協議認可・裁定制度の対象となり得るよう、制度整備の必要性などを検討する」とした。

　具体的な方策は示されていないものの、総務省側は法改正を視野に入れている模様。しかしながら、法改正に至るには多くの準備と議論が必要になり、時間の遅れが無線LANの拡大に水をさす結果にもなりかねない。

　総務省は「第73条の適用範囲や政策の決定など、やるべき作業は多い」として、明確なスケジュールや見通しを語ることは避けた。

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関連リンク
総務省の報道資料
モバイルインターネットサービス

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[芹澤隆徳, ITmedia]

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