Mobile:NEWS 2003年2月6日 10:20 PM 更新

「ケータイ先進国日本」は復活するのか?
インセンティブモデルの功罪

最新モデルを安価に買える「インセンティブ」モデル。通信キャリアを中心とした「バリューチェーン」──。いずれも日本が世界に誇ってきたモデルだ。しかし、それら仕組みにもそろそろ綻びが見え始めている

 2002年9月、国際電気通信連合(ITU)は、同機関初の「モバイル/インターネット指標」を発表した。ところが『ケータイ先進国』と信じられている日本は、なんと20位という結果であった。

 果たして、「ケータイ先進国日本」は復活するのか? また、その道程はどのようになるのだろうか。

 2002年12月末には、7350万という契約者数を持つまでに膨らんだ日本の携帯電話市場では、ユーザーは先端のサービスを利用し、事業者は世界で最もユニークなビジネスモデルを形成したと言われてきた。

 しかし、状況を冷静に見てみると、多くの疑問がわいてくる。その疑問を解き明かし、諸外国の事情を併せて考える中で、日本の『ケータイ』の今後を考えて行きたい。

どうして、携帯電話を1円で買えるの?

 あまりに安価で携帯電話が購入できることを、皆さんも不思議に思ったことはないだろうか? カラー液晶が入って、CPUが入っていてこの値段。ほかの精密機器(例えばPDA)と比べると割安感が大きい。

 これにはもちろん“からくり”がある。「インセンティブ」という販売形式だ。インセンティブ(Incentive)とは、奨励や刺激、報奨といった意味を持っているが、販売奨励金制度、もしくは代理店手数料という言葉でこの制度を示す場合もある。携帯電話におけるインセンティブ契約は、携帯電話会社と販売会社の間で締結され、利用者には直接の関係はない。しかしこの制度により、商品によっては1円という破格値で携帯電話を購入できるのだ。

 一般的に、携帯電話が1台(1回線)売れるたびに、一定の手数料が携帯電話会社から販売会社に支払われる。本来この金額は販売会社の利益になるのだが、販売会社はより多くの台数を販売するためにこの手数料を最初から値引きに含ませて、本体価格を仕入価格以下に設定している。見かけ上、販売会社は売れば売るほど赤字になるが、この手数料により収益があがる構造となっている。

インセンティブに使われている金額はいったいどのくらい?

 では、このインセンティブとはどの程度の金額なのだろう? インセンティブに関する詳細な情報は携帯電話会社および販売会社から公開されていない。NTTドコモを例にとると、この代理店手数料は、およそ年間1兆円程度といわれている。これをドコモの 2003年3期の携帯販売台数(計画)が 2400万台であるという数字から計算すると、1台あたり約4万円となる。つまり、あなたが 5000円で購入した携帯電話は、本当は4万5000円する代物なのだ。

インセンティブモデルの功罪は?

 このような多額な金額を払ってでも、今まで携帯事業者がインセンティブモデルを実施してきたのは、その“功”の部分が大きいからだ。

 携帯事業者が手数料を負担するということで、消費者には安価に携帯端末が提供される。つまり市場形成が迅速に行えた。また携帯端末メーカーは、販売台数を予測しやすいといったメリットがある。そうした循環の最後に、携帯事業者は、契約者数の増加もしくは使用時間の向上といった収益が入ってくる構造になっていた。

 このインセンティブモデルは、携帯事業者にいったん富を集め、それを関連メンバーに分配する『エンジン』の働きをになってきたのだ。

 実際、新規市場を形成するのに、このモデルは効果を現している。しかし成熟しつつある業界においてもこのモデルが有効かどうかは判断が難しい。例えば、ドコモのARPU (Average Revenue Per User: 月間電気通信事業収入) は 8000円程度。つまり4万円のインセンティブを出した場合、最低5カ月は利用してもらわないと、元手を回収できないのだ。

 しかも ARPUは減少傾向にあり、現在の携帯電話の普及率から考えると急激な契約者数の増大も見込みにくい。携帯事業者が『エンジン』の役割を再考したとしても不思議はない。


ドコモ、2002年3月期の決算説明会資料より

今後はどのように……

 では、今後日本の携帯業界はどのような方向に進むのだろうか? 我々としては、この端末手数料という莫大な金額の行方が業界の構造を変えるトリガーになると考えている。ドコモは先日、総額400億円ものFOMA開発費負担を決めた。この流れも端末手数料への再考に関する1つのシグナルと捉えることもできる。

 また海外では、スウェーデンがインセンティブモデルを採用し、また、隣国の韓国でも1998年までインセンティブモデルが実施されていた。韓国の例は、インセンティブモデルがなくなった場合を想定する上で、参考になると考える。

 次回から、日本でこのインセンティブモデルが崩壊した場合どのようなことが起きるのか、またそれを補う新しいビジネスモデルはどのような形になるのか検討していきたい。

著者紹介
福本靖:株式会社ザイオン取締役コンサルティング事業部長。日本ヒューレット・パッカード時代から多くのネットワークおよびモバイル・ビジネスに従事。「LANネットワーク管理技法」「Kornel Terplan」の著作もある。

[ザイオン 福本靖, ITmedia]

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