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2003年7月30日　08:57 PM 更新

カメラ付き携帯の弊害――“ケータイ先進国”韓国の悩み

カメラ付き携帯の普及が進む韓国で、産業スパイ、盗撮といったカメラ機能の悪用が社会問題化している。議会がカメラ機能に規制を加えようとする一方で、韓国人の最新機能への依存度は高まるばかりだ。（ロイター）

　「成功がもたらした犠牲」とでも言うべきか。

　容易に隠せるカメラ付き携帯電話は、韓国のハイテク企業にとって、もはや歓迎できないものとなっている。産業スパイに悩まされることになったからだ。

　韓国最大の自動車メーカーで世界上位10社にも数えられるHyundai Motorは、開発中の新車情報が競合企業に漏れているのではないかと懸念している。

　同社の広報担当ジェイク・チャン氏は、ソウル近郊にある複合研究施設について、「カメラ付き携帯を持ち込まれないように、ナムヤン研究開発センターの入口にX線検出器を設置しているところだ。また、訪問者を追跡するシステムも構築した」と語った。

　同氏はジェームズ・ボンドが登場するスパイ映画に触れながら、「当社のような企業にとって、“007”が使う秘密道具のような携帯電話は、スパイ活動に利用されるため重大な問題となる」と説明している。

　同社の関係者によると、同社は主要な戦略や新しい設計・色彩に関する会議を開く本社でも同様に、マルチ機能を備えた携帯電話の使用や持ち込みを禁じている。

　世界第3位の携帯電話メーカーSamsung Electronicsは、まさに小さな携帯電話に小型レンズを組み込む技術のパイオニアだ。同社もまた会社の廊下や工場のフロア内でカメラ付き携帯を禁じている。

　「セキュリティの観点からやむを得ないこと」とあるSamsung社員は匿名を条件に語る。「カメラ付き携帯電話は便利で画質も優れ、簡単に産業スパイ活動に使える」

　世界携帯電話市場で10％のシェアを誇るSamsungは、携帯電話メーカーでありながらカメラ付き携帯電話を避けている。それは同社ばかりのことではない。

　ライバルのLG Electronicsも、同じジレンマに陥っている。同社が本拠を構える韓国では、人口4800万人のうち約4分の3が少なくとも1台の携帯電話を所持しているという。

プライバシー侵害も

　昨年を通して、韓国だけで400万台以上のカメラ付き携帯電話が販売され、友達や自分自身、そのほか視界に入るあらゆるものを写真に撮ろうとする光景が一般的になっている。

　そこではプライバシー問題も起きている。ある女性は韓国で人気の大衆サウナで裸の女性をカメラ付き携帯電話で撮影し、Webサイトの管理人に売りつけていた。

　そういったカメラ付き携帯電話の悪用が社会的に大きな問題となり、当局は一部の場所について、カメラ付き携帯電話により広範な利用制限を課そうとしている。韓国議会はそうした規制を課す動きに出るかもしれない。

　韓国国会電気通信委員会のリー・ウキ氏はReutersの取材に対し、「委員会メンバーの何人かは、カメラ付き携帯電話の使用を制限する法律を制定しようとしている」と語る。

　「携帯電話は現代では欠かせないものだが、私はすべての物事には良い面も悪い面もあると考えている」（同氏）

　カメラ付き携帯電話は、韓国で336〜509ドル相当の価格で売られている。これは同国の1カ月当たりの平均世帯収入の約3分の1に当たる。それでも、カメラ付き携帯電話の人気は、特に若者の間でうなぎ上りだ。

　韓国最大の携帯キャリアSK Telecomの広報担当クォン・チョルキム氏によると、カメラ付き携帯電話の利用は、2001年8月の発売以来、“爆発的な”勢いで広まっているという。ただし、同氏は詳細なデータは明らかにしていない。

最新機能への依存進む

　韓国では、平均して2年に一度のペースで携帯電話を買い換えている。業界筋によると、同国で使われている携帯電話の5分の1は、すでにカメラ付きだという。

　同国の携帯電話市場の50％以上を占めるSK Telecomは、過去12カ月で、同社顧客のうちカメラ付き携帯電話を利用する人の割合が急上昇していることを明らかにした。

　技術革新により、以前は架空のものだった“007”の任務の多くが、今では現実のものとなっている。韓国では現在、カメラ付きモデルにも力を入れつつ、ムービー対応モデルへの取り組みを進めている。

　最新の携帯電話は通話機能だけでなく、決済処理、ビデオカメラ、MP3再生、インターネット接続、TV視聴といった機能も備えている。

　「携帯電話は、例えば最寄りのガソリンスタンドなど、目的地への行き方も示してくれる」と37歳のサラリーマン、リー・サンチュルさん。彼が払っている毎月の携帯電話料金は平均で200ドルになるという。「すごい機能がいっぱいだ。人生の一部だよ」

　50歳の主婦、ムーン・アエランさんはソウルの南にある高所得者向けの団地に住んでいる。彼女もまたハイテク携帯電話の便利さに喜んでいる。携帯電話を使えば、買い物中でも洗濯機などの家電のスイッチを入れることができる。

　「携帯電話なしでどうやって生きろというの？」――ムーンさんはそう語っている。

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[ロイター]

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